「絹の変容」 篠田節子 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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You Can Fly-kinu


かつて絹織物で栄えた八王子。家業の反物から転進して包帯製造を発展させた父の元で、二代目として中途半端な立場に居る長谷康貴。


ある日土蔵の中で見つけた虹色に光る絹布。


篠田節子が第3回すばる新人賞を取った時の作品。
野生の蚕を見つけ出し、それを使って絹織物で成功したいという思いが複雑に絡み合って、破滅へと雪崩れを打っていく。


飼育の協力者として雇った芳乃は蚕の幼虫の味覚中枢を除去し、それが生んだ卵にも手を加えてふ化させ、更に交配を繰り返す事で桑の葉以外の良質なたんぱく質を摂れる様に改造。
世代を繰り返すうちに蚕は体長15cmにもなり、蚕から絹織物が作られる。
だがその織物はすばらしい外観とは裏腹に強烈なアレルギーを引き起こすものだった。


蚕が飼育舎から逃げ出し、野生の環境で繁殖。
集団で鶏まで襲うモンスターに変身して行く。


蚕の改造プロセス自体にはかなりムリがあり、強引な印象はあるが、テーマとしては新しいジャンルで一気に読めた。


家が農家だったこともあって小さい頃から養蚕については知っており、あの白い虫が連なって鶏の腹に食らい付いている、なんて描写を読むとリアリティがありすぎで、その晩は良く眠れなかった。


女性が身にまとい、その製造プロセスたるや残酷このうえないシルクというものの、怨念の様なものがぎっしり詰まって、なーんか息苦しくなって来た。


ワタシは綿製品でいいかも・・・・