「歴史と視点」司馬遼太郎 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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rekisi

副題に-私の雑記帖-とある。彼の基本的な考え方がそこそこ感じられて、機会がある毎に時々読み返している。
今回「硫黄島」関連の映画を続けて観た関係からふと思い出し、再読。


大正生まれの「古老」
グアム島で28年間暮らした後、帰還した「旧日本兵」横井庄一氏の話をトリガにして大正世代の特殊性、太平洋戦争時の軍部における「集団的政治発狂」性をコキおろすと共に、当時話題となった「浅間山荘事件」の学生達に同様の臭いを感じて危惧する様子が描かれている。


戦車・この陰鬱な乗り物
戦車の壁の中で
石鳥居の垢
これらは、彼が第二次大戦中に召集された戦車部隊での経験を振り返ったもの。本来鋼板で作られるはずの戦車の装甲が、ただの鉄板であったという信じられない現実。第二次大戦に突入した当時の軍部が、それまでの日本の戦史から見て、いかに異常と思えるほどの「錯誤集団」であったかが淡々と書き進められる。
日本という国が第二次大戦で経験したことの意味を改めて再認識するという点で、読み継がれるべきもの。「坂の上の雲」は長大すぎてハードルが高いが、これなら短時間で彼の考えに触れることが出来る。


豊後の尼御前
見廻組のこと
黒鍬者
長州人の山の神
権力の神聖装飾
人間が神になる話
これらは、再度膨らませればそれぞれ一個の小説となり得る題材であり、備忘録というべきもの。後半2点は権威、権力の「ウソくささ」というものについて独自の視点で書かれており、彼の信義とするところが非常に判り易い形で表現されている。

何度でも読み返して味わうのが良い読み方だと思います。