あるマンションの１室で男女が目覚める。２人は記憶をなくしていた。
一家殺人事件を核に、薬物による不法医療や権力争いをからめて展開する長編。これだけで話すと、まあそこそこの雰囲気がするが、ちょっとイマイチ。
宮部みゆきは、短編の構築力ではそこそこ「いける」と思っているが、長編になると枝葉のエピソード作りに追われてポイントが大甘になってしまうキライがある。
今回も「レベル７」という言葉の謎解きが遅すぎるし、その中味もいささか地味で「大きくイマイチ」と言われても仕方がないだろう。
ただ、最近の作家としてそれほど劣っているわけではない。清張の初期作品「影の地帯」も殺人手法のプロットはそこそこだが、男女の描き方はさほど褒められた出来ではなかった。
今後もう少し枯れて来てからの彼女の作品を読んでみたい。