監督:北野 武
出演:ビートたけし、京野ことみ、大杉蓮、岸本加世子
タケシの映画は、実は一度も通しで観たことがない。「HANA-BI」や「座頭市」など、ビデオでもいいから1本ぐらい観ていればいいものを。
結局お笑い役者がテキトーに作ったモンだという意識がずっとあったのかも知れない。
過剰に高く評価されて「天狗」になっているという雰囲気もあった。
そんな事を意識してかどうか、まさにその点に肉薄した映画だった。
俳優、監督として成功したタケシが、劇中でもそのままの役柄を演じている。そこに現れる、彼とそっくりの冴えないコンビニ店員の「北野」。基本的にはこの北野の地味で報われない生活が淡々と綴られる。
だがある日、どこからか手に入れて来た武器で、女と一緒にサラ金を襲い金を強奪。だがその話に行くまでも、その後も話は途中で中断し、北野はその度に目覚める。
容赦ない撃ち合い、暴力。死んだはずの者たちは、次のシーンで血だらけのまま復活し、ストーリーの整合性も何もない。
ただ、後半のカメラワークで「2001年宇宙の旅」を思い出した。石板の中に導かれた後、ルイ王朝風の家に幽閉され、年老いて行くボーマンの視線が移るたびに、眼前の世界が切り替わっていく、あの感じ。
こうして、一体物語があるのかないのかも判らない中で、北野は妄想の世界から戻り、タケシを刺しに行く。そして顔を歪ませながら刺されるタケシ。だがそれ自身も妄想の中の話なのか…・・
冒頭とラストにあった戦争のシーン。あれは何か?
戦争体験もない者が、あんな形で何を言いたかったのか。結局銃を付き付けられるというシチュエーションの一つとして挿入しただけなのか。
成功した自分自身を刺し殺すという話に落とし込むことで、何かを言いたかったんだろう。でもその「何か」をイロイロ判ろうとすればするほど「ヤツ」の術中にハマるのかも。
結局、映画なんて判ろうが判るまいがあまり関係ないのかも知れない。
そういう意味では黒澤明の様式美なんかも、似たようなもんか。
京野ことみは、まあ微乳だったけど許そう。
しかし、土曜の11:40開演で観客は7名。こらー、どう考えても興行的には失敗だわな。