「武蔵野夫人」 大岡昇平 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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終戦間もない武蔵野地域(国分寺周辺)を舞台とする物語。

「はけ」と呼ばれる地形。
講師の傍ら、翻訳の仕事もしている秋山とその妻道子。道子の従兄弟である大野の妻富子。この2組の夫婦の元に、戦線から道子の従兄弟である若者 勉が復員して来た事から、波紋が広がり始める。

何事にも控え目な道子と、奔放な富子。対照的な2人の間で次第に道子に惹かれていく勉。描いてしまうとかなり通俗的だが、道子と勉のプラトニックな感情の流れを軸に、ていねいに話が綴られていく。
結局は悲しい結末を迎えるが、文体のせいか内容の割りには落ち着いた印象が最後に残った。

 

大岡昇平は「野火」があまりにも有名だが、テーマがテーマだけにちょっと取り上げ難い。それに「世に問う」みたいな彼の気負いも感じられて、あまり好きではない。