「うつくしい子ども」石田衣良 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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顔中盛大なニキビのために「ジャガ」と呼ばれている14歳の少年 三村幹生(ミキオ)。13歳の弟 和枝(カズシ)が妹の友達だった9歳の少女を殺害してから幹生の生活は激変する。
報道、罵声、いやがらせ、ありとあらゆる苦難が家族に襲いかかる中、幹生はその苦痛に耐え、転校もせずにカズシの犯した罪の深部を探ろうとする…・・

 

数年前に起きた「酒鬼薔薇事件」を参考にし、犯人の家族の側から作られたドラマという紹介ばかりが強調されているが、本質は14歳という不安を抱える年代の少年が、大きな事件を乗り越えて成長していく姿を追ったもの。

カズシの情報集めに孤軍奮闘を覚悟していた幹生に思わぬ協力者が現れ(長沢とはるき)、彼の心の支えとなる。基本的には彼らの友情のドラマと言っていい。

次第に明らかになって行くエリート校の暗部。何故弟が殺人者になったかの糸口をつかむ幹生。まあその過程ではやや甘い部分もあり、最後のどんでん返しも概ね「予測の範囲内」ではあったが、最後の場面でちょっと違った。
クライマックスで、幹生は重大な決心を行う場面に遭遇する。
「ほんとうに大事な質問のこたえを出すのは頭じゃない、心なんだ」
そしてある決心をする。弟の事を考えたらそんなバカな、というのが大方の予想だが、作者はとにかくそう決心させた。
最終章で幹生はカズシの居る矯正施設へ面会に行く。弟の眼に「深淵」を見て恐ろしさを覚える幹生。だが幹生はこれからも弟を支えて行こうと決心する。

 

逆境を介して目をみはる心の成長を遂げた少年。これが作者のテーマなんだろう。他の不備はほとんど気にならない。

 

*最近の作者のものはまず買わないが、息子が私の本を読ませてもらったからと、バーターで持って来た本の中の一冊(でも26冊も読めんで)。今日は東京出張だったのでまず手始めに…・