pickles探偵デカゲロくん 外伝~pickles探偵おおゲロくん~ | 怜菜のブログ

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pickles探偵デカゲロくん見てね!

1 デカゲロの存在


おおゲロは、デカゲロをライバル視している。

デカゲロはおおゲロにライバル意識は持っていない。

つまり、おおゲロが一方的にライバルと思い込んでいる。

おおゲロにとって、デカゲロの存在はまさに、「邪魔者」――、自分の動きを阻む存在だった。

もちろん、デカゲロにそのつもりはない。

それもおおゲロが一方的に思い込んでいるだけで、デカゲロはそれに巻き込まれてしまっただけである。

おおゲロがそう思い込む理由。

デカゲロが、世間で活躍しているからである。

銀行強盗事件から、古の呪い屋敷の謎まで。

全部さっと解決してしまう。

世間の人達はデカゲロが「すごい」と思い、憧れたりしている。

しかし、おおゲロにはそれが気に入らなかった。

――自分も探偵――同じpickles探偵だというのに。

デカゲロの話が出るたびに、そのようなことを思う。

そして、みじめな気持ちになる。

――どうしてデカゲロは事件をちょっと解決しただけで、世間から歓声が上がるのだろう。どうして自分は事件を解決しても、そのようになれないのだろう――

――どうして自分は、世間に必要とされていないのだろう。

そのように。


2 探偵への道


おおゲロは、自分も世に出ている名探偵たちのようになりたいと思い、探偵になろうと決意した。

暇があれば推理小説を読んだ。IQが高くなる問題をひたすら解いた。

周りに、どう思われようとも――

そうしておおゲロは努力を重ねてきた。

推理小説を読んだおかげで国語の成績が上がった。IQが高くなる問題を解いたおかげで、発想力と想像力が身についた。

探偵になるための準備はバッチリだ。

ところで、探偵になるためには、かえる県主催の試験を受け、合格しなければならない。

倍率はとても高い。まるで難関校の試験のように、自分の力を出し切る。

おおゲロは、その受験者の100分の1に入れるように、試験の日まで、ひたすら祈るばかり。

受かれば、県立の「探偵大学」へ進学できる。

そうならなければ……探偵への道は長くなる。

受からなければ、また来年気を取り直して受ければいい。

おおゲロの脳裏には、そのような考えが浮かぶのだが、どうしてもそうなった自分を想像すると、胸が苦しくなった。

――かっこ良くない。

しかし、探偵への道はそう簡単には拓けない。

必要なのは、元からの知力、そして努力の積み重ね――

そして大人数の試験でも実力を発揮できる心。

心を決め、明日の試験へ。

敵を打ち破り、自分が勝者となる!

不安がつのるなか、目をつぶれば、心が落ち着き、勝つ自信が湧いてくるのだった。


3 近づくか、離れるか


遂に来た。探偵になるための試験の日。

その試験というのは、面接とペーパーテスト。

面接は事件の解決の仕方など、ペーパーテストは問題文が事件の内容で、犯人などの記述。

試験で、探偵への道の自分の位置が、探偵から近づくか離れるか決まる。

その難関試験日が、今日なのだ。

静かに耳を澄ませれば、自分の心臓の鼓動が聞こえてきた。

――かなり速い。

毎年、2,000人近く受験して20人しか合格者が出ない。

確率が低いため、おおゲロの心はかなりドキドキしてきた。

会場につくと、大勢の人がいた。

メガネを掛けてギリギリまで勉強している人もいるし、お菓子を食べてくつろいでいる人もいた。

この中の20人が、探偵になれる。

自分が、その中に入っていますように――

おおゲロは手を合わせて祈った。


まずは面接。

「どこ高校出身ですか?」

「……かえる第四高校です。」

「なぜ探偵になりたいと思ったのですか?」

「…………世で活躍する探偵達に、憧れた……からです。」

最後の「からです。」を忘れそうになった。

こんな感じで面接は終わった。

そしてペーパーテスト。


ある豪邸の主人が倒れていました。

見た目に外傷はありません。

現場には、フルーツの香りがする宝石が入った、袋があさられていました。

そして、豪邸に関係のある人達に話を聞きました。

第一発見者は使用人のAさん。

「主人に呼びかけても返事がなかったので向かってみると、倒れていました。」

玄関の警備をしていた警備員のBさん。

「誰も訪ねて来ませんでした。」

豪邸の柵は高く、検査をしても足あとは見つかりませんでした。

なぜこのような事件が起こったのでしょう。


どうやらこれを15分間で解くらしい。

倍率が高い割には問題が少ない。

おおゲロはこう書いた。


主人が倒れていた理由……病気の発作

宝石があさられていた理由……宝石の正体はグミだから。


合格になるだろうか……。

試験会場を後にして、あとは結果を待つのみだ。


4 届け、祈りよ


そして結果発表の日。

今年も合格者は20人らしい。

手に持った紙を持つ。

50点満点のおおゲロは47点。

上位20名が選ばれる。

微妙な点数だ。

そして、足を踏み入れた、結果発表される会場――探偵大学の敷地へ。

心臓がドクドク鳴る。

足が震える。

もう一度紙を見る。

受験番号は2003。

そして、下を向きながら合格者の番号が書いてある看板前に来た。

――どうか、どうかありますように!

おおゲロは祈った。

――届け、祈りよ!

そして、見上げる。

0に近い番号から見ていく。


0002 0009 0056 0123

0295 0579 0777 0998

1132 1257 1367 1368

1449 1508 1780 1973

2002……


2003はこの次の番号だ。

――載ってろ。2003……!

そして、その次を見る。


2003


あった!

そして。


2004 2006 


入っていた。1%に。

おおゲロは嬉し涙を自分の番号が書かれた紙にこぼした。


5 探偵大学珍道中


おおゲロは見事探偵大学に入学。

1クラス3,4人の少人数授業。


「今日は探偵の掟。そしてモットーを。」

先生がチョークを持って書いた言葉。

『探偵は全てを捧げる』

――はぁ?

おおゲロにはさっぱり意味が分からなかった。

「探偵は、事件解決には自分の時間、そして自分の体、善意を捧げるのです。」

……?

ぽかーんとしているおおゲロに、もう一度説明した。

「つまり、自分のことばかり優先してはならないということ。自分の利益を追い求めているばかりでは、先は見えない。」

――探偵は全てを捧げる――

おおゲロはそれを何度も暗唱した。

全てを……捧げる。

自分のことばかり優先してはならない。

人のことを優先に。


授業だけでなく、友達との生活も楽しかった。

「おおゲロ。今は仲良しだけど、卒業したらライバルだね。」

「一緒に頑張ろうね。」

一緒に励ましあった。


そして四年経ち卒業。おおゲロは一応一人前の探偵に。

夢は、「自分で探偵団を作り、団長を務めること」。

おおゲロはそこから伸びる、一筋の光へ一直線に進んだ。


6 おおゲロ探偵団、始動


探偵団を作るために、自分でチラシを作って配ったり、かえる県のSNSで伝えたりした。

しかし、人が集まらない。

おおゲロはそのまま一年を過ごしてしまった。

そして探偵大学を卒業してきたのがおびゲロ。

おびゲロはおおゲロ探偵団団員1号目になってくれた。

――とりあえず二人だけでも運営できる。

適当にSNSを辿っておおゲロに目が行ったリーフも仲間になった。

三人になり、運営開始。

事件がなければ仕事にならない。

怖いが警察に行って事件の書類をもらうことになった。

「おおゲロ探偵団長のおおゲロです。」

そう言っても信用されなかった。

「事件を解決したいんです。」

と言うと、

顔をしかめながらしぶしぶ渡してくれた。

――まだ無名だから仕方がない。

そう納得したが、自分が「無名」ということに胸が潰れそうになった。

おおゲロが探偵を夢見てから、6年。

誰かに言うように、心のなかでつぶやいた。

――ようやくおおゲロ探偵団、始動しました。

目指せ、事件解決。

目指せ、世に知れ渡る、名探偵を。


7 最初の事件


警察からもらった、事件の書類。

おおゲロたちは、これを解決するという義務がある。

逆の考え方をすることも出来る。

被害者が直接申し込んできたわけではないが、警察からもらったので、おおゲロたちが捜査する権利はある。

事件の内容。

本題。

おおゲロたちが捜査するもの。

資料を見る。


事件名:夫婦大ゲンカ事件


事件というほどの事件ではない。

どうやら、警察はおおゲロたちを甘く見ていたようだ。

――喧嘩なんて、家族で解決すればいいものなのに。
肝心な初めの事件がこれなので、おおゲロは捜査に気が向かなかったが、警察が悪いということにして、内容を見た。


夫サワーと、妻ストロベリーの大ゲンカ!

最近、考え方や心が合わないと思っていたけれど……、

一体、どうなるのか!?


さすがに腹が立った。

――これは小説のあらすじか!

全くかえる県警察もバカなものだ。

これのどこが資料というのか。

――現場の様子とかじゃないのか。

ますますおおゲロは捜査をしたくなくなった。

けれど、腹がたったせいか、警察に自分の凄さをみせつけてやる!と、心が燃えてきた。

――見てろ、甘く見ている者達よ。我の凄さがどういうものか。


8 まずは見るが大事


「おおゲロさん。」

おびゲロが話しかけてきた。

「何をすればいいんですか?腹が立ちすぎて分からなくなってしまいました。」

「ぼくもです。」

リーフも同様。

おおゲロは言葉を返せなかった。

「もしかして、おおゲロさんもそうですか?」

――図星。

そのとおり。

「そうだ……しかし、記憶を辿って掘り返せば、何か分かるかもしれない。」

そこで三人は静かに何をすべきか考えた。

「あ!」

その声はリーフ。

「その事件の様子を見なければいけないんじゃないですか?探偵小説だと初めは現場の様子を見ていますよ。」

なるほど、という思いと、劣等感を覚えた。

(優秀な後輩だ。大学に通わなくても。)

それはさておき、おおゲロたちは現場に行くことを決めた。

「住所は……。」

資料に書いてある。


住所:かえる県アニマル市手玉町3-9-102


「アニマル市は、ピクルス市の隣ですよ。すぐ行けます。」

リーフは車の準備を始めた。

しかし、おびゲロの「ちょっと待って。」

「ぼくの記憶だと、手玉町って、安全にとても気を配っているから、車じゃダメなんじゃ……。」

「行けるとこまで行って、そこから歩けばいいじゃないですか。」

「でも……。」

リーフとおびゲロが言い争いを始めてしまったようだ。

どうすれば良いのだろう。

静かにその様子を見ていることにした。

――しかし。

自分は探偵団長。止めなければいけないのではないか。

「二人とも。やめてくれ。どっちの意見も聞くから。」

まずは聞くが大事。

そう。まず大事なのは見ることと聞くこと――


9 責任を


「おびゲロは、何だったっけ?」

「車で行かないほうがいいと思う。」

「なぜ?」

「さっきも言ったとおり、手玉町は、安全に気を配っているから、車だと歩行者に危険が及ぶ。」

とりあえず、おびゲロの意見を聞く。

「で、リーフは?」

「車で行ったほうがいいです。速いし。」

「でもおびゲロは歩行者が危険と言っているが?」

「行けるところまで車で行ってコインパーキングに止めればいいじゃないですか。」

――なるほど。悪くはない。

「おびゲロ、何か言いたいことはある?」

「コインパーキングだと、お金がかかる。」

――たしかにそうだ。

――しかし。

「おびゲロ、探偵大学に通ってすぐ、探偵の掟、モットーを教わったのは覚えているか?」

――はい。」

「探偵は、全てを捧げる、と。自分の利益ばかり追い求めてばかりでは、先は見えない。損がなければ得はない、と――。」

おびゲロは黙ったままだ。

「そして、リーフ。おびゲロの話、聞いていたか?」

「はい。」

「たしかに車は早く着く。しかし、そのせいで誰かが危険な目に遭うかもしれない。『損がなければ得はない』の『損』が、自分たちじゃないかもしれない。」

リーフも黙った。

「だから、二人、聞け。考えろ。どうすればいいのかを。」

(探偵団長として、果たせ。責任を。)

おおゲロも考えた。

(きっと答えは出る。)

――そう信じれば、必ずうまくいく。

(信じれば。)


10 出発


「結局。何で行くか。」

「電車はどうでしょう?」

リーフが提案。

「線路の周りには、柵があります。歩行者にも危険が及ばないですし、最寄り駅まで行ったら、歩きですので、危険を及ばせる可能性が少ないです。」

「そうしようか。」

おおゲロも賛成した。

「じゃあ、行こう!」

おびゲロがどんどん先に行ってしまう。

「ちょっと待った。駅までは何で行く?」

「歩きでいいじゃないですか。」

おおゲロは納得いかない感じで「そうか。」と言った。

(しょうがないか。)

テケテケと歩いてゆくと、すぐに駅に着いた。

「ピクルス駅だ。」

「おおゲロさん。事件現場はアニマル市だから枇蛙線で北アニマル駅で降りればいいです。二駅なのですぐですよ。」


改札を通ると、おびゲロはお腹が空いたそうでコンビニへ立ち寄った。

「ポテチ買うよ。」

リーフは、喉が渇いたみたいで「お茶を一本。」と言っていた。

ガタンゴトン、ガタンゴトン――

電車が来る音がした。

「枇蛙線、南蛙行、まもなく停車します。」

おおゲロたちが乗る電車だ。

「やばいっ!」

おびゲロは階段を二段飛ばしで駆け上がり、急いでホームへ。

「待って……。」

「おびゲロ、待てよ。」

二人は追いつけない。

「大丈夫!いざとなったら電車とホームの間にまたがって、ドアが閉まるのを防ぐから!」

それは無茶しすぎ……。

おびゲロの声を聞いていた人たちみんなが呆れた。

おびゲロは、電車についた。

二人は、まだ階段の半分のところだ。

「それでは、枇蛙線、南蛙行、発車します。」

プルルルルルル

「ぎゃー!」

「急げ!」

すると、おびゲロは、本当にドアの間に立った!

電車の中にいる人はおびゲロに視線を差す。

「危ないですよ。電車の中に入りましょう。」

駅員さんに言われたが、おびゲロはそのまま!

「あと二人が来るのでっ!」

(それにしても遅いなぁ。)

「はぁ……。へぇ、へぇ……。」

二人がようやく来た。

「すいません。」

二人は電車に入れてもらい、ドアが閉じた。

三人は乗客ににらまれるばかりだった。

(もし、有名だったら、手加減してくれるよなぁ……。)


11 現場


電車を降り、駅から歩き始めた。

十分ほどで現場に着いた。

家の中から、大声が聞こえる。

「何度も何度も、早く帰ってくるようにって言っているでしょう!」

「だってさ、仕事もうまくいくようになって飲み会に誘ってもらえるようになったからだよ!」

「毎日毎日じゃない!毎日お酒を飲んでいるようには見えないわ!」

「それは……残業だからさ!」

「あそう!じゃあ今日は会社に早く帰ってくるように夫に行っておいてくださいって連絡しとくわむかっ

「じゃあ行ってくるから。」

ガチャンッ

バタン

かなり乱暴にドアを開けた。

(……小さい。)

手玉町とだけあって、短足、もう1,1頭身くらいだった。

おそらく今出てきたのが夫サワーだ。

三人は後をつけることにした。


「おおゲロさん。車で来なくて良かったです。」

おびゲロが話しかけた。

「……」

「だから、後をつけるってことは時間がかかるんですよ。コインパーキング代、すごかったんじゃないですか?」

「分かった。とにかく電車で正解ということだろ?」

サワーが振り返った。

「後をつける……?」

(やべっ。)

おびゲロはこんなことを言ってみた。

「しりとりですよ。車に、後をつけるって言っていたんですよ。」

「わざとらしい。」

(バレたかな……?)

しかし、おびゲロは気にせずに歩いた。


12 サワーの尾行


一方、おおゲロは、サワーの尾行をしている中、ゲームのようにワクワクしていた。

(尾行をしている……やっと探偵になれたんだ。)

探偵と言えば尾行だ。

おおゲロは、尾行で自分が探偵だと実感した。

そして、リーフは、足がつかれたので、(早く会社につかないかなぁ)と、それしか考えなかった。

すると、急にサワーは走り始めた。

しかし、短足のためか非常に遅い。

しばらくすると、サワーはある建物に入った。

看板には、

「かえるタクシー事務所本部」

と書かれている。

サワーはここに勤めているようだ。

さすがに中に入るわけにもいかないので、近くのドーナツ屋で過ごすことにした。

リーフは、スマホを取り出した。

「ちょっと、ゲームしないでよ!?」

おびゲロが心配する。

「もちろん、しないよ。検索するんだよ。」

「はぁ……って何を?」

おびゲロにはまだ分からないようだ。

おおゲロが話した。

「かえるタクシーの会社のことだろ?」

「はい。勤務時間などを調べ、サワーが出てくる時刻を予測します。」

「あ!そういうことか。」

おびゲロも納得。

「いっただっきま~す!はぐはぐ……」

おびゲロはさっそくドーナツを食べ始めた。

調べるのはリーフに全て任せるようだ。

一方、おおゲロとリーフはスマホを見ていた。

「どうだ?」

「えっとですね……。」


勤務時間は、日によって違います。

深夜営業の日もあるので、社員、すなわち運転手が予定を決めます。


「ってことは……。」

リーフ、少しがっかり。

「ずっと見ていなきゃいけないってことか?」

「そうだな。」

「え~。マジで。」

おびゲロはもっとがっかり。

「おい、二人とも。『探偵は全てを捧げる』だぞ。」

「はぁい。」

そこで、二時間ごとに会社前を監視することになった。


13 探偵は全てを捧げる


おおゲロ、おびゲロ、リーフの順で監視。

おびゲロとリーフは、ドーナツ屋で待機。

おびゲロは一人で監視。

(タクシー会社かぁ……。)

おおゲロはサワーが勤務している様子を想像する。


会社の裏から、駐車場に出て、街中を運転。

(会社の裏から出る!?)

ってことは、逃げ出すかもしれない。

すぐさまドーナツ屋に戻って、おびゲロたちに裏口も見てほしいと伝えた。

「マジで。疲れるわぁ~。」

「おびゲロ。探偵は、全てを捧げるだぞ。たとえお腹がすいても、足が折れそうでも。事件解決のためには、我慢しなければいけないことがたくさんあるんだ。」

「分かった。」

三人体制で、おおゲロが表口。おびゲロが裏口。リーフが非常口を監視した。

しばらく監視していると、リーフが二人に連絡を入れた。

「出てきました。逃げ出すのでしょうか。」

するとサワーは、駐車場の方へは行かず、会社の裏門を出た。

「逃げ出しました!」

リーフが連絡を入れると、おおゲロから「後を追え。」という連絡が来た。

サワーに気づかれないように、静かに後を追う。

気づかれそうになったら、物陰に隠れて。

近くの住民が出てきたら、様子をうかがって。

途中でおおゲロたちと合流し、そのまま後を追う。

しばらく追っていると、サワーはある住宅に入った。

もちろん、サワーの家ではない。

ポストのところに住所が書いてあった。

「手玉町2-10-18」

この住所を使えば、家主が分かるはずだ。

住所をメモし、事務所(兼おおゲロの家)に帰ろうとすると、テレビでよく聞く声を聞いた。

「それは偽札ですね!」

これは……。

足を止め、おおゲロが口を開いた。

「デカゲロ。」


14 デカゲロの活躍


「あなたは、モンブランさんですね?中央蛙市のかえる銀行で強盗を、知りますか?……犯人は、あなたですね。」

問い詰めているような口だ。

「事件など起こしていない。勝手に人を疑っておいて。」

「じゃあ、ぼくの推理を披露させてもらいますよ。あなたは、三十年前の銀行強盗事件で、キラとファイアーが逮捕されたため、かたきを討つためにかえる県最大のかえる銀行で強盗を起こした。」

「違う!」

「三十年前と同様の方法で、それで千万円を獲得したが、自分がこれだけの大金を手に入れられるということを知り、お金がもっと欲しくなった。」

「……」

すっかりモンブランは黙ってしまった。

「それで、一万円札を本物そのままに再現した偽札をつくった。」

「……」

「さあ、中央蛙市で強盗を起こしたと認めるのです!」

「……。そうだ。事件は、ブラウンと起こした。」

モンブランは罪を認めた。

「警察はもう呼んでいますよ。パトカーに乗ってください。」

パトカーの音が響いた。

そのあと、サワーの「モンブラン!」という声が響いた。

おおゲロは、実際に犯人を追い詰めたところを見て、デカゲロに憧れた。

(自分も、あんな風に……。)

おおゲロは、自分もデカゲロのように事件を解決して有名になることを想像してみた。

そんな想像をしているおおゲロの横で、二人が推理をしていた。

「なんでわざわざモンブランの家へ行ったのでしょうか。」

「あんなに妻が怒るんだってから、てっきり浮気かと思ったぜ。」

二人の話し声に、おおゲロははっと我に返った。

デカゲロが事件を解決しているところを見て、実感がわいた。

自分も、探偵なんだ、って。

こういう風に自覚させるのも、デカゲロの活躍なのかもしれない。

おおゲロは、デカゲロを目指すことを心に決めた。


15 推理


事務所(兼おおゲロの家)に帰ると、三人は推理を始めた。

「要点をまとめると。サワーは、仕事中に会社を抜け出し、モンブランの家に行っていた。」

(まとめすぎ……。)

おびゲロはツッコミは入れなかった。

「何か意見はあるか?」

「はい。」

リーフが手を挙げた。

「ぼくは、サワーさんが浮気して、その浮気相手との遊ぶ時間を作るために会社を抜け出したんだと思います。」

おびゲロが「じゃあモンブランの家に行っていたのは?」と質問した。

「ストロベリーさんにばれないように、働いたと見せかけるために偽札を作ったんじゃないでしょうか。モンブランさんの家で。」

こんどは、おおゲロが「それをストロベリーに持っていったということか?」と質問した。

「ぼくはそう思います。今日は、給料日だったんじゃないでしょうか。」

「なるほど。」

「明日にはなにか変化があるはずです。」

「なにを調べるの?」

おびゲロがきいた。

「明日もサワーの尾行をして、どこに行くか追跡しましょう。」

「ストロベリーのところにも行ったほうがいいんじゃないのか?」

おびゲロが言った。

「もしかしたら、給料のお金は本物かもしれないぜ。」

「たしかにな。」

おおゲロも納得。

「でも、タクシーで貰ったお金がその人の給料になるんじゃないですか?」

リーフはわかっていないようだ。

「個人タクシーならそうだが、サワーのタクシーは運営会社がある。会社がある場合は、まず社員、つまり運転手からもらったお金を会社で集めて、給料日になったら社員で分ける。」

「でも、集めたらごちゃまぜになるんですよね?それなら、他の人のところでもいいと思うのですが。」

おおゲロは「やめた方がいい。」と言う。

「いきなり、給料のお金を見せてください。とか言ったら、相手はお金を盗られるんじゃないか、って思ってしまうだろう?ストロベリーなら、サワーさんが浮気しているかを調べています、って言ったら、受け入れてくれる可能性高いよな。」

「たしかにそうですね。」

ということで、おおゲロたちは、二手に分かれ、捜査をすることにした。


16 分かれ道


おおゲロとリーフはストロベリーの所へ、おびゲロはサワーの尾行、ということに決まった。

「おびゲロは大丈夫だよな?」

「もっちろん!どっかの誰かさんみたいに歩いていて『疲れた……』なんてこと無いしな!」

それを聞いていたリーフは、

「どっかの誰かさんって、ぼくのことですか!」

と不満が出ていた。

「じゃ、行くぞ!」

と、おびゲロはリーフの言葉を無視し、扉を開けた。


その日のサワーは、またモンブランの家に行っていた。

モンブランはいないのに。

その後、サワーはマンションへ来た。

ラムネマンション。かえる県の中でもトップクラスの大きさを誇る。

おびゲロは、電柱の裏に隠れ、サワーがマンションから出てくるのを待った。

しばらくして、サワーはある一人の女と出てきた。

ストロベリーではなかった。

おびゲロは、驚いてだんだん電柱から顔を出してしまった。

サワーは、おびゲロに気づくと、女と一緒に走った。

おびゲロも後を追う。

すると、ひとつのT字路に着いた。

おびゲロがサワーの後を追おうと向きを変えた時、女がいないのに気づいた。

(どっちを追えばいいのかな?)

ふたりとも追いたいが、尾行係はおびゲロだけだ。

電話していると、二人が来るのに時間がかかって二人がどこにいるかわからなくなる。ここは分かれ道も多い。

案の定、女は次の道を曲がってしまった。

(二人とも追うには……。)

おびゲロは、二人の服の色を思い出した。

サワーは水色、女は頭に虹色の羽をつけて、ワンピースはえんじ色。

そして、ラムネマンションに登った。

管理人に許可をもらい、屋上に登った。

幸運なことに、二人ともそう離れているところにはいなかった。

(これで二人とも分かるぞ!)

サワーは時折後ろを振り返っていたが、おびゲロがいないのが分かって、スピードがゆっくりになっていた。

おびゲロは、空から見ていた。


17 偽札?


その頃、二人はストロベリーの所にいた。

「すいません。この前の、サワーさんの給料日のお札って、ありますか?」

「いきなり、なんですか……。」

さすがに全く知らない赤の他人が家に来るとなると、どんな人でも驚く。

「偽札の可能性があるんです。」

ストロベリーは、目を丸くしたが、「失礼ですけど、詐欺じゃありませんよね?まだあなたたちのこと知らないわ。」とまだおおゲロたちに疑いの目を向けていた。

「ぼくたちはおおゲロ探偵団です。警察に依頼されて捜査しています。」

本当は自分たちから警察に乗り込んだのだが、嘘をついて信頼を得られるようにした。嘘がバレない間だけ。

ストロベリーは、しぶしぶ給料袋を取り出すと、おおゲロたちに渡した。

二人は、偽札発券機にお札を通した。

何枚かが反応した。偽札が混じっている。

「偽札です。この偽札、サワーさんが関係しているはずです。」

反応しなかったものもあるので、タクシー会社はやはり集めて後に分ける方法を取っていた。

「サワーさんは、ぼくたちの捜査により仕事をサボっています。偽札でその分を補っていることが分かっています。」

ストロベリーは、「嘘でしょっ!?」と叫んだ。

「今夜サワーに知らせなくちゃ。」

「いいえ、伝えないでもらえますか。サワーさんが捜査のことを知ると、行動を変えてしまう可能性があるので。」

「はい……。」

あきれているストロベリーに、リーフは胸を張って言った。

「まあとにかく、ぼくたちが解決しまっせ!」


18 つながる手がかり


おびゲロは、二人に電話をした。二人を目で追いながら。

「サワーがラムネマンションから女と出てきた。いまラムネマンションの上から二人を追っている。」

「了解。」


わずかな手がかりから事件が見えてきた。

「リーフ。事件の全貌がもうすぐ分かる。」

「はい!」

「サワーは、ストロベリーがいるにもかかわらず、仕事をサボってまで女と遊んだ。

だが、仕事を休むと給料が減ってバレる。

だからモンブランの所で偽札を手に入れた。

しかし、ストロベリーは、帰りが遅いサワーの浮気を感じ取っていた。

それで喧嘩になったってわけだ。」

「でも、まだ謎があります。」

おおゲロはうなずいた。

「分かっている。

なぜストロベリーを裏切って女と遊んだのかってことだろ?」

「そうです。」

「だが、謎は一つではない。女の正体はまだ不明だ。」

「それを解決すれば……。」

「そうだ、ぼくたちは事件解決できたといえる。」

リーフの目が輝いた。

「まさか事件を解決できるなんて……。おおゲロさんに出会ったのが幸せです。」

おおゲロは顔を赤くした。

あとは、残りの謎を解決するだけ――


19 残りの謎


「女の正体はおびゲロが探ってくれるはずだ。ぼくたちはサワーが女と遊んだ理由を調べるんだ。」

おおゲロがそういうとリーフは「はい。」と返事をする。

「考えられることはその女のことが好きになったってことでしょうか

。」

「そうだな。わざわざ仕事を休んでまでやることではないと思うのだが、仕事の時間じゃないとストロベリーにバレるからな。」

「はい。ですよね。おびゲロさんが女の正体を暴いてくれればそれも明確になるはずです。」


おびゲロは、引き続き二人を見ていた。

しばらくすると、サワーがタクシー会社に入り、タクシーを運転し始めた。すかさず二人に電話する。

二人が、タクシーを追ってくれるとのことなので、おびゲロは女を監視する。

女がだんだんおびゲロから遠くなるので、おびゲロはラムネマンションを降り、女を追った。すると、近くのファミレスに来た。

おびゲロがそっと覗くと、女は制服を着て客に向かって「いらっしゃいませ」と言った。どうやらアルバイトらしい。だが制服に名札がついている。名前は……「かえる あかゲロ」。

名前を入手したので事件解決へ大きく進んだ。

二人から電話が来た。

「サワーは普通に仕事し始めました。」

リーフだ。もう追う必要が無いとのことで、合流しようと言っていた。

おびゲロは、ストロベリーにあかゲロの正体を知っているか聞くため、ストロベリーの家に来いと言った。


ストロベリーの家で合流し、訪ねる。

ストロベリーは、三人の姿を見ると、「どうぞ」とさっきと違い快く受け入れてくれた。

「かえるあかゲロという人物について知っていますか?」

おおゲロが聞く。

「あかゲロ……?」

そのあと、ストロベリーはひらめいたように目を見開いた。

「大学の後輩です!あかゲロがどうしたんですか?」

「……サワーさんと浮気していることが分かりました。」

それを聞くと、「まさか、あかゲロが……」と微妙な様子。

「後日、三人で話し合ってみます。」



20 事件解決


ストロベリーから電話が来た。

「実は、ストロベリーも浮気をしていて、サワーが浮気相手だそうです。ですので、元の相手とそれぞれまたやり直すことになりました。」

電話に出たリーフには意味が分からなかった。

おびゲロが説明する。

「ったく。あかゲロにも彼氏がいて、サワーと浮気をしていたってことだよ。それで、ストロベリーはサワーと、あかゲロは彼氏とまた仲良くするってことだろーが。」

リーフは「すいません……。」となぜか謝る。

おおゲロは事件が解決して何だか嬉しい。

(一回目の事件だし。)

そういえば、なんだかんだ走り回って大変だったなあと思い返す。

頑張ってやっともらった書類が、ふざけていて、怒ったこと。

北アニマル行の電車に乗る時に遅れそうになっておびゲロが体を張ったこと。

サワーの尾行をするときにつかれたこと。

でも。

事件が解決した。

たった一件の事件だけれど、おおゲロの中では大きな出来事だった。

おおゲロは、デカゲロのことを思い出した。

世で活躍する名探偵の一人。

実は、おおゲロにとってデカゲロは憧れだったのだ。


おおゲロが事件に出会う度に、デカゲロへと近づいていく。

デカゲロに近くなるからこそ、妬みが生まれた。

近くなったから、ライバル意識が生まれた。

おおゲロのライバル意識は、憧れが変わっていったものだった。



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