pickles探偵デカゲロくん 第十七話~後輩三人失踪事件~ | 怜菜のブログ

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pickles探偵デカゲロくん見てね!

1 いない!


デカゲロは、来たこともない場所にいた。

薄暗くて。殺風景で。

でもそこには、誰もいない。

なかゲロも。メガゲロも。とくゲロも。

ライバルのおおゲロさえも。

見渡しても、見えるのはコンクリートの壁だけ。

床には、紙が。

『お前の後輩三人を誘拐した。』

「何だと!」

思わず声をあげてしまった。

でも、気になること。

――なぜ、ここにいるのだろうか。

記憶を辿ってみても、ここに来た覚えはない。

そんなことを考えようと、なかゲロたちが誘拐されたのは事実。

(今すぐ探しに行かなければ!)

「ねえ。お願い。デカゲロくん……。」

とくゲロの声が聞こえる。

(今から、助けに行くから!待って!)

目を凝らしてみると、光が漏れているところがあった。

――ここが、出口だ!


そこから外に出ると、ここはピクルス市街。

デカゲロの家、探偵事務所の近く。

よーく見れば、ミニゲロ・ケーキ・パンや、まめゲロ・ロール・ブッシュも見える。

だが、そんなことは、関係ない。

後輩がいなくなったのだから――


2 助けを呼ぶ声


「ねえ、デカゲロくん。クレープ……。ケーキ……。」

メガゲロの声がする。

でも、どこから?

「先輩、お願いだから……。お願いだからっ!」

なかゲロの声もする。

なかゲロたちの姿は見えない。

でも、なかゲロと、メガゲロの声は、すぐ近くからする気がするのだ。

気のせいだろうか。

デカゲロは、三人に答える。

(今から、助けに行くから。待ってて!絶対に、助けに行くから……。)

――近くから声がするから、近くにいる!もしかしたら、事務所にいるのかも!

デカゲロは、事務所へ向かった。

後輩がいると信じて――


しかし、事務所にはなかゲロたちはいなかった。

人影さえも。

デカゲロは、気付いた。

近くから声がすると、決め付けていたことを。

「ここにいますよ。ここにいますよ……。」

なかゲロの声がする!

(ここにいる?事務所には、だれもいなかったのに。)

もう一度、事務所を探してみる。

でも、見つからない。

(もしかしたら、ぼくの家にいるのかな。)

事務所と、デカゲロの家は隣なのだ。

「ここですよ!先輩!聞こえますか?」

声が聞こえる。

でも、見渡しても、姿はない。

やっぱり、隣のデカゲロの家なのか。

デカゲロの家に行っても、誰もいない。

いつもいる母さえも。

(お母さんは、旅行でも行ってるのかな?)

でも、三人の姿は、なかった。


3 それぞれの家


「なかゲロ~?」

叫ぶ。デカゲロは、中々マンション501号室のドアの前で。

何も、聞こえない。

ピンポン

「なかゲロ~?」

インターホンを押しても、出て来ない。

「いないのかな。」

デカゲロは、マンションを出ると、メガゲロの家へ向かう。

ピンポーン

「はい?どちらさまで?」

(誰っ!?)

「えっと……、デカゲロ探偵事務所長のデカゲロですが、メガゲ」

途中なのに、なんかよく分からない人は、

「ああ。メガゲロは今、いませんよ。でも、それにしても、帰りが遅いわ。あの子、何をやっているのかしら。ケーキを買いに行ったきりなのだけれど。」

デカゲロは、気になっていることを聞いてみる。

「えっと、あなたは……?」

「あ、わたし?わたしは、メガゲロの母。マリアよ。」

「あ、すいませんね。メガゲロは、いつ出て行きました?」

マリアは、考え込んだ。

「そうね。三時間くらい前かしらね。でも、あの子はずっとお菓子屋さんにいることが多いから、気にしていないわ。でも、いつもは遅くても二時間半くらいよ。」

まめゲロ・ロール・ブッシュにいるのだろうか。

(でも、まめゲロくんは、誘拐なんてしないと思う。)

まめゲロは、大会で優勝した、実力のあるパティシエ。人気がある店を離れることはできないだろう。

(ケーキを買いに行っていたメガゲロは、どこかで誘拐された……。)

デカゲロは、思った。

どこか”が分かれば、メガゲロの居場所は大体分かると思う。でも、“どこか”は、きっと見つからないだろう。メガゲロの性格から。


4 気付いたこと


「はっ!」

デカゲロは、気付いた。

――“どこか”の範囲が絞れる!

(メガゲロは、『ねえ、デカゲロくん。クレープ……。ケーキ……。』って言っていたから、きっと、まめゲロ・ロール・ブッシュに行く途中だ!)

そしてデカゲロは、まめゲロ・ロール・ブッシュへと向かった。

いつも通る道を通って、あたりを見回す。

三人が居ないかと思いながら。

何回も見回し、前へ進む。

キョロキョロ。キョロキョロ。テケテケ。テケテケ。

すると、あっという間にまめゲロ・ロール・ブッシュへ着いてしまった。

――ここの間に居るはずなのに。

まめゲロが話してきた。

「いらっしゃいませ。」

「あ、あの……お菓子を買いにきたわけじゃないんだけど……。」

まめゲロの顔が不思議そうな顔になった。

「じゃあ、どうしたの?」

「三人が、いないの。」

「どうして?」

デカゲロは、少し黙った。

あの事実を、言いたくはない。

でも、言わなきゃならない。

(よし、言うんだ!)

「ぼく……気がついたら、薄暗い部屋にひとりでいて、閉じ込められていたみたいなの。」

「えっ!?」

まめゲロは驚きのあまり口をぽか~んと開けている。

「それで、三人を探しにいったんだけど……。」

「いない、ってわけかぁ……!」

まめゲロの顔に、すこし笑みが浮かんだ気がした。

(怪しい。やっぱりまめゲロくんかな。)

「ねえ、お店の中、見せてくれない?」

「いいけど……。」


5 証拠


「調理場、見せて。」

「良いよ。どこでもご自由に。」

「じゃあ、見せてもらうよ。」

デカゲロは、調理台の引き出し、下、上の引き出しなどをくまなく調べてみた。探偵らしく。

入っていたのは、ゴムべらや、ボウル、泡だて器など、調理器具だけだった。本当に普通の調理場だった。

「ねえ、その服、貸して。」

「なんで?これがなきゃ、お菓子を作れないよ。」

「お願い。」

まめゲロは、仕方なく言った。

「じゃあ、分かった。ちょっとだけだよ。」

デカゲロは、まめゲロから服を受け取ると、ポケット、裏ポケットなどを調べた。

でも、入っていたのはハンカチやティッシュだけ。

(なんだ。なんにもないじゃないか。)

「ごめん。これで帰るよ。」

「少しくらい買ってほしいな!」

まめゲロの声を聞かない振りをして、デカゲロは歩いていった。

今度は、どこへ行くのだろうか。

それは、デカゲロにしか分からない。


6 謎


「はぁ……疲れたよ。」

デカゲロは、歩く気もない。なにもかもやりたくない。

――後輩がいないのだから。

しかし、デカゲロは、後輩を探さなきゃいけない。

これは、本当に事件なのだろうか。

考えてみる。

もし、本当の事件だったら――

警察に、通報したほうが……。

(ダメだ!そんなことしたら。)

デカゲロの、“探偵”というプライドが失われるのだ。

だからって、後輩を一人で探すのか。

時間がかかる。

もしかしたら、その間に後輩達が危ない目に遭っているかもしれない。

しかし、デカゲロは決めたのだ。後輩を一人で探すことを。

だからといって、自分のプライドを優先したわけではない。

(希望は、そこにある!希望を持っていなきゃ。諦めちゃダメ。)

そして、デカゲロはまた探しに行った。


ちょっと歩くと、見たことある人が歩いていた。

(……おおゲロっ!?)

とても驚いた。

(見なかったことにしよう。)

すると……!

「おい。お前、デカゲロだよな。」

「えっ?……はい、そうですけど……。」

(気付かれた!?)

「何やっているんだ?」

「えっとぉ……なにも。」

(やばいやばい……。)

「何も無いわけないよな。話せ。」

(えー!)

「えっとぉ、後輩がぁ……。」

(やだよ。)

「失踪しました。」


7 おおゲロ


「後輩が失踪したのか?」

おおゲロは、心配そうな顔をした。

(意外とやさしい。)

「はい。探しているんです。」

すると、おおゲロは、ニヤニヤと笑った。

(えっ、何かこわいよ。)

「そうかっ。じゃあ、俺と勝負しないか?」

「え?」

「どっちが先に、三人を探せるか。」

(え―――!)


(もう……何で悪いことばかりなんだ。まるで悪夢のようだよ。)

薄暗い場所に閉じ込められ、そして後輩がいなくなり、さらにおおゲロに「勝負しよう」と言われる始末。

今日は本当に悪夢みたい。

「おいっ。やらないのか?」

(なんだ、まだいたのか。勝負なんてやる気になんないよ。)

「なんだよ。つまんねーな。」

(ええ、つまんなくて結構です。ぼくは一人で探しますから。)

そして、デカゲロは、また歩き出した。


8 三人の居場所


デカゲロは、あることに気付いた。

――GPS。

三人には、GPSがついている。

GPSを使えば、三人の居場所が分かる。

電源をつけた。

「なかゲロ」をタッチ。

pickles市の地図が出てきた。

どうやら、三人はpickles市内にいるらしい。

GPSを外されていなかったとしたらの話だが。

でも、100%いないと決まったわけではない。

(探そう!)

GPSの地図の場所は、深い森の奥。

確か、そこには廃屋があったはずだ。

そこにいるのだろうか。

しかし、現在地からかなり遠い。

(バスを使おうかな。)

ポケットに手を突っ込む。

お金は無い。

(うそー!?いつもこの中に入れてるのに。)

デカゲロはびっくりした。

(じゃあ、誰かに車を運転してもらおうかな。)

誰に?

デカゲロの母はいなかった。

(どうしよう……あっ!)

マリア。メガゲロの母。

もしかしたら車を運転してくれるかもしれない。

「もしもし。マリアさん。」

電話をかけた。

『あら?デカゲロくん。どうしたの。』

「車で、連れて行って欲しいんです。あの深い森まで。」

マリアは驚いていた。

『あそこは危険よ。やめなさい。』

止められても、行く。

「あの森の廃屋に、メガゲロたちがいるんです。」

『え?まさか。それは行かなくちゃならないわ。息子だもの。』



9 発見


マリアに、車を運転してもらって、森までの道を辿る。

「あっ、森が見えてきた。マリアさん。奥まで進んでください。」

「分かってるわよ。」

ブーン。ブーン。

どんどん進む。

どんどん突き進む。

あの廃屋まで――


「廃屋が……見えてきた。」

(心臓が……どくどく鳴ってる。)

なかゲロたちは、安全だろうか。

心配でたまらなかった。

「着いたわよ。」

廃屋は、ツタだらけで、だいぶ放っておいたのが分かる。

ドアは……開いた形跡が見られる。

(もしかしたら、いるかも!)

希望が見えてきた。

キィ……。

ドアを開ける。

!!

!!!

!!!!

!!!!!


そこにあったもの――

なかゲロたちだった。

「なかゲロ!メガゲロ!とくゲロ!」

呼びかける。

三人は目覚めた。

「良かった……。」

ほっとしているのもつかの間、三人の顔は悪魔に変わった。

「えっ……!」

ピンチだ。三人は、本物ではない。

逃げなきゃ。

ドアを開けよう。

ガチャガチャ。

「えっ。」

開かない。

開けられない。

「ぼくはこのまま――。」

終わってしまう。

誰か、助けて――


10 真実 


「デカゲロくん!?」

カチャ。

ドアの先にいたのは、マリアだった。

(そうか。ぼくだけで入ったんだもんね。)

「助けてくれて、ありが――

しかし。

マリアの顔も悪魔に変わった。

「えっ!?」

ピンチ。絶体絶命。

もう味方はいない。

「うそ!?」

ドアから出たいが、マリアが邪魔だ。

「ぼくは、本当に終わってしまう……。」

ニヤニヤ。

悪魔達が、デカゲロたちに襲い掛かった。

デカゲロは、静かに言った。

「さようなら――。」


ピカーン

あたりが光に包まれた。


「先輩!」

「デカゲロくん。」

「デカゲロくん!」

なかゲロたちの声が聞こえた。

――えっ?

「ぼくは、悪魔に襲われて死んだんじゃ……。」

「何言っているんですか?」

「悪い夢でも見たの?」

なかゲロたちが聞く。

「えっ。きみたちが誘拐されて、廃屋に向かったら、ぼくが悪魔に襲われたんじゃ。……もしかして、ここは死後の世界!?」

「はぁっ?何言ってんの、デカゲロくん。ここはデカゲロ探偵事務所。地上。死後の世界じゃないよ。」

とくゲロが言った。

「えっ。じゃあ、ぼくは死んでないの?」

「そうに決まっているじゃん。」

メガゲロが答えた。

そのあと、なかゲロが、

「デカゲロ先輩が起きないから、三人で呼びかけていたんですけど、先輩、なかなか起きなくて……。」

と言った。その続きを、とくゲロが言った。

「死んじゃったのかと思ったよ。メガゲロは、デカゲロくんにお菓子を買ってもらえないのかと思って、『クレープ……。ケーキ……。』て言ってたし。」

「えっ。じゃあ、あれは、助けを呼ぶ声じゃなくて、ぼくを起こそうとした声だったの!?」

メガゲロが、「うん。」と答えた。

「先輩が起きて良かったです。先輩は、死んだんじゃなくて、悪夢にうなされていたんですね。」

「……。」

夢にしては、ずいぶんリアルだった。

「まあ、夢だったから、とりあえず良いかな。」

現実じゃなくて良かった。

メガゲロが、言った。

「ねえ、クレープ買いにいこ。」


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