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国際派日本人養成講座よりの転載です。

http://blog.jog-net.jp/201610/article_8.html

 

移民問題、二つの進路 (下)「大御宝」への道

 

■1.少子化の原因は未婚者の増加

 前号[a]では「洗国」というシナの恐るべき戦略を紹介して、安易な移民受け入れが、国民生活にどのようなコストとリスクをもたらすかを考察した。

 しかし、それだけでは移民受入れ論者の説得には不十分だ。彼らが「移民は必要」と主張する人口減少や労働力不足などの問題をどう解決するのかを、提案しなければならない。この問題を三橋貴明氏の『移民亡国論』[1]や政府の統計を参考に本号で考えてみよう。

 まずは人口減少の問題を先に取り上げよう。人口減少が食い止められれば、そもそも労働力不足の問題も相当に緩和されるからだ。

 人口減少の理由は、少子化、すなわち生まれる子供の数の減少である。昭和46(1971)年から3年間の第二次ベビーブームでは、出生数は年間200万人を超えていたが、昭和59(1984)年には150万人を割り込み、平成25(2013)年は約103万人まで落ち込んだ。[2]

 出生数の減少には、以下の二つの仮説が考えられる。

(1) 晩婚化、女性の職場進出などで既婚女性が産む子供数が減っている。
(2) 未婚の男女が増えている。

 統計的に見れば、(1)ではなく、(2)が真の原因となっていることは明らかである。既婚女性が生む子供の数(有配偶出生率)は90年代に千人あたり66人と最低を記録したが、その後は緩やかに回復し、2010年代は79.4人と80年代をも上回っている。

 (2)を未婚率で見ると、「30~34歳」男性の未婚率は1970年にはわずか11.7%だったのが、2010年には47.3%にもなっている。すなわち、1970年代には30代前半で独身だった男性は10人に一人強だったのが、今や半分近くにも達している。女性の未婚率も同様に上昇している。

 すなわち未婚者が増えているから、子供の数も減っている、という、ごく当然の現象が起きているのだ。


■2.結婚したくともできない多くの成年男女がいる

 未婚が増えた理由は種々考えられるが、有力な原因は実質賃金の低下や雇用の不安定である。厚生省の調査によると、現在の日本で約600万人の男性が年収200万円以下で暮らしているという。その多くはパート、アルバイト、派遣などで雇用自体が不安定だ。

 女性では年収200万円以下は1180万人もいるが、パートタイムの主婦も相当含まれているので、以下、男性を対象に考える。

 男性で月収十数万円、それもいつ失業するか分からない状況で、結婚して家庭を持とうとするのは難しい。未婚男性の約85%は「いずれ結婚するつもり」と答えながら、結婚への障害として挙げられているトップが「結婚資金」、2位が「結婚のための住居」である[3]。その結果が「30~34歳」男性で半数近くが未婚という結果なのである。

 わが国は皇室が国民を「大御宝」と呼んで、その安寧を代々祈られてきた。そういう国で、結婚したくともできない多くの成年男女がいる、という事自体が大問題ではないか。


■3.「移民400万人」より「日本国民400万人出生増」

 仮に、何らかの政策によって、これらの人々の所得を上げ、雇用が安定したとしよう。そして独身男性6百万人のうちの三分の一の2百万が結婚して、平均2人の子供を持ったとすると、4百万人の子供が生まれることになる。

 4百万人の子供が増えたら、政府が受け入れようと提言した移民20万人の20年分に相当する。日本語もよく話せない、文化も習慣も異なる移民400万人と、日本で生まれ日本人として育った400万人のどちらが良いかは言うまでもない。

 さらに大きな違いが、その裏にある。移民を受け入れれば、国内の賃金ベースがさらに下がり、雇用も不安定になるので、未婚率が今以上に悪化し、少子化が加速する。移民を増やした結果、日本人の少子化が進んだのでは、さらに移民を増やさなければない、という悪循環にはまることになる。

 逆に、未婚率を下げることで出生数が増えれば、その出産、教育、結婚、家庭作りと、新たな消費需要が生まれ、経済発展の原動力となる。さらに彼らが成人して仕事につけば、税金を払って国家財政にも寄与する。まさに「子は国の宝」である。

 多くの未婚者の生活水準をあげて、結婚できるようにすることで、善循環を生み出すことができる。どのように彼らの収入を上げるかは、後で考察しよう。


■4.子供を産みたくても産めない

 経済的理由が少子化を招いている事を示唆するデータがまだある。

 子供一人を持つ夫婦が、「もう一人子供が欲しい」という出産願望は、「25~29歳 89.8%」「30~34歳 79.0%」と非常に高い。すでに子供二人を持つ夫婦でも「もう一人欲しい」という夫婦は「25~29歳 47.5%」「30~34歳 28.3%」もいる。[1, p222]

 しかし、実際の夫婦の出生児数は2人を割っている[4]。上記の強い出産願望と現実の出生数のギャップを見ると、子供を産みたいのに産めない、という夫婦が相当数いることが窺われる。理由はやはり経済的理由や住居の制約だろう。

 弊誌633号「『明るい農村』はこう作る ~ 長野県川上村の挑戦」では、「信州のチベット」と呼ばれていた寒村が、高級レタスの栽培で農家の平均年収が25百万円にもなり、東京から多くの女性も嫁いできて、平均出生率(一人の女性が一生に生む子どもの人数)は1.83と全国平均より0.5人も多い、という事例を紹介した。[a]

 産みたいのに産めない、という状況を示すもう一つのデータが、人工妊娠中絶である。近年は毎年20万件程度で推移しており、その理由の多くが「経済的理由」である。もちろん母体保護など別の理由もあるが、出産と育児・教育の負担を減らせば、せっかく授かった赤ちゃんを産めないという悲劇は大きく減らせるだろう。[1, p222]

 わが国は経済大国といいながら、低収入から結婚できない、結婚しても子供を作れない、子供を授かっても産めない、という点で、経済力が国民の幸せに結びついていない面があり、その結果が少子化となっているようだ。こういう国民の不幸を差しおいて、移民による穴埋めを図ろうとするのは、政治として本末転倒ではないか。


■5.30万人の生活保護受給者を再教育する

 次に、労働力不足の問題を考えてみよう。国内には、労働力として活躍できていない層がある。たとえば、30万人近くもいる「働けるにも関わらず、生活保護を受けている日本国民」。三橋氏は、こういう層をなぜ教育して、資格を取得させ、労働市場に送り出さないのか、と問う。

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 労働市場から退出したままの「日本国民」を「人材」(即席であっても)に育成するためならば、それこそ政府はいくらお金を使っても構わない。

 たとえば、働けるにもかかわらず生活保護を受けている30万人の「人材予備軍」に対し、1人100万円のコストをかけたとしても、「わずか」3000億円の支出ですむ。・・・

 3000億円のコストで、即席ではあっても「人材」に成長した、あるいは人材に成長する可能性がある「日本語が堪能」でコミュニケーション上の問題も起きない「専門職30万人」を、需要が拡大している分野に送り出すことができるのだ。[1, p116]
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 仮に生活保護費用が、1人あたり平均月10万円だとすると、年間で120万円。人材育成に100万円を投じたとしても、それで彼らが職を得て、生活保護を脱することができれば、10ヶ月で回収できる。さらにこれらの人々の多くは税金を払うようにもなるだろう。

 金銭的な問題だけでなく、人は誰でも世間のお荷物になるより、自分の力を十分に発揮して、世のため人のために貢献したいという気持をもっている。そういう充実感を30万人の人が味わえるようになるだけでも、大きな価値がある。


■6.高齢者の活躍

 もう一つ、未開拓の人材のプールが高齢者層である。平成26(2014)年の日本人女性の平均寿命は86.83歳で3年連続世界一。男性は80.50歳で3位。長寿国として世界に誇れる記録である。我々の周囲には70代、80代で元気なご老人をよく見かける。

 平成25(2013)年の統計では、65歳以上70歳未満の高齢者人口は869万人[5]。この大半は定年後で無職と思われるが、たとえば70歳まで働けるようにすれば、その半分のみが就業したとしても、やはり400万人以上が生産労働人口に加わる。

 移民を毎年20万人、20年間受け入れるのと同数の労働力人口がすぐに生まれるのである。それも日本語に不自由しないだけでなく、人生経験も職業経験も豊かな人々なのだ。しかも高齢者が働ける環境を作れば、それだけ元気になって医療費も減るだろうし、年金の原資不足も緩和されるだろう。

 現代医学の急速な進歩により、2045年には平均寿命は100歳に到達しているだろうと予測されている。そういう時代に60代半ばで定年退職して、あとは暇を持てあましつつ、年金暮らしをする、という事自体が、時代にあわなくなってきている。

 弊誌926号「『寿命100歳』時代の生き方」でも紹介したように、高齢者の雇用を生み出す会社も健闘している[b]。我が国は高天原の神々でさえ、田畑を耕したり機織りをしたりして働いている。体が動く限りは働いて世の中のお役に立つことが幸せなのだ、というのが、我が国の労働観である。

 高齢者が働ける環境作りを進めることは、国家にとっても、企業にとっても、そしてお年寄りの生き甲斐のためにも良い施策である。


■7.労働人口不足が呼んだ高度成長

 以上は、人口減少を食い止め、生産年齢人口を増やすための余地がまだまだある事を示したが、それでもまだ人手不足の状態であったら、どうするのか、という反論が寄せられるかもしれない。

 人手不足が日本経済の縮小をもたらすのだろうか。三橋氏はその可能性を明確に否定する。かつての高度経済成長時代は、人手不足の中で、いや、人手不足だったからこそ実現した、と氏は主張する。

 昭和31(1956)年から48(1973)年までの20年近くもの間、日本のGDP(国内総生産)の平均実質成長率は9.22%にも達している。しかし、この間の生産年齢人口は平均で1.7%程度しか伸びていない。慢性的な人手不足で、地方の中学卒業生が都会に集団就職をして、「金の卵」と大切にされた時代だった。

 人口が1.7%増えれば、それに伴い経済規模も1.7%は膨らむ。逆にいえば、9.22%の経済成長のうち、人口増による部分は1.7%に過ぎない。残りの7.5%はコンピュータ化、自動化などを含む一人あたりの生産性向上によるものである。高度成長期の民間企業設備投資は、実質年平均17.33%もの率で伸びていた。

 人手不足だから、賃金が上昇する。企業は賃金上昇をカバーしようと、自動化設備やコンピュータ投資によって生産性を上げようとする。すると設備メーカーやコンピュータメーカーの売上げが増える。そしてそれらの企業に部品材料を売ったり、サービスを提供したりする企業も売上げが増大する。

 一方、就業者の方は高い賃金を貰って、結婚して家や車、家電製品を買う。こうした生活水準の上昇によって、消費需要が増大する。それがまた人手不足を呼び、賃金を上げる。

 人手不足が、生産性向上のための投資需要を呼び、賃金上昇によって消費需要も増やす。かつての高度成長は供給と需要が両輪となって、人も企業も、そして社会全体も豊かになっていったのである。これこそ国民を大御宝として、その安寧を実現する道だろう。

 高度成長時代に「人手不足だから外国人労働力の導入を」という安易な逃げ道に行かなかったのは幸いだった。この時、外国人労働力を入れていれば、設備投資は冷え込んで投資需要は増えず、賃金は下降して消費需要も冷え込み、高度成長は腰砕けになっていただろう。


■8.「洗国」への道か、「大御宝」への道か

 85%近くもの結婚願望を持つ青年が経済的制約に縛られずに結婚できる社会、2人、3人と子供を産みたい夫婦が自由に産める社会、そして70代、80代でも働きたい老人が働ける社会。それが国民を大御宝として大切にする国のあり方だろう。

 労働移民により人件費を安くして企業の利益を上げたいという近視眼的な政策だけでは、どういう国家を作りたいのか、という国家観が全く見えない。多くの国々の移民導入失敗から見れば、その道は移民による無法地帯を作り、国民の安定した生活を破壊する道だ。わが国では、さらにシナの「洗国」工作に乗ぜられる危険も大きい。

 外国人労働者を入れるかどうか、というのは、短期的な政策的選択の問題ではなく、長期的にどういう国家をめざすのか、という次元で考えなければならない。企業の目先の利益だけでなく、国民が労働者として、消費者として、そして生活者として、物言いをすべき問題なのである。
(文責:伊勢雅臣)


■リンク■

a. JOG(974) 移民問題、二つの進路 (上)「洗国」への道
「洗国」とは他国に数十万人規模の流民を移住させて、やがてその国を乗っ取るという、シナ大陸で多用される手法である。
http://blog.jog-net.jp/201610/article_6.html

b. JOG(633) 「明るい農村」はこう作る ~ 長野県川上村の挑戦
「信州のチベット」が高収入、高出生率を誇る「明るい農村」に変貌するまで。
http://blog.jog-net.jp/201006/article_19.html

c. JOG(924) 「寿命100歳」時代の生き方
「2045年の平均寿命は100歳」と多くの研究者が予測しているが、そこでの生き方は?
http://blog.jog-net.jp/201510/article_8.html


 

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