文化財はいかに守られてきたか | ドット模様のくつ底

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奈良が好きなライターの瞬間ブッダな日々の記録。
福祉的な目線から心の問題を考えています。



奈良大学博物館企画展

「文化財はいかに守られてきたか」のレポと、

自分の学んできた文化財のことなどを記しておこうと思います。

(去年2月の記事の再掲載です)



戦時中、他国の略奪から自国の文化財を守るための方法として、

国際条約を結ぶという方法があると紹介されていました。

戦後であれば世界遺産に登録することで、

世界共通で文化財を守っていこうという呼びかけになります。

世界遺産の場合は規程が厳しく、

所在地や地域の法律、社会制度によって

万全に保護されていることが条件となっているので、

戦争中の国は対象外であるんですよね。

それでも内戦状態のレバノン共和国は

1980年に5件の世界遺産登録をされることになりました。

登録によって文化財を守りたいという、

人々の強い想いが登録への希望を叶えたそうです。


登録に伴う義務や責任については、

世界遺産条約第4条にこう書かれています。

_________________________


「締約国は、第一条及び第二条に規定する文化遺産及び

自然遺産で自国の領域内に存在するものを認定し、

保護し、保存し、整備し及び将来の世代へ伝えることを

確保することが第一義的には自国に課された

義務であることを認識する。

このため、締約国は、自国の有するすべての能力を用いて

並びに適当な場合には取得し得る国際的な援助及び協力、

特に、財政上、芸術上、学術上の援助及び協力を得て、

最善を尽くすものとする」

_________________________


戦後、文化財保護法に守られていた日本が世界遺産条約に

批准するのが先進国の中で遅くなったのは、

自国で文化財を守ることができるということが

理由の一つです。


文化財保護法に守られていることは

日本の文化財に対する保存意識の高さを表しているようですが、


このことからも
日本ほど古いものが残されている文化はないと言われているほど、

日本人にとって文化財は大切な心の拠り所であることがわかります。


その時代ごとに生きてきた人を感じ、

その人々の想いが伝わることで、

これらを途絶えさせたくないという

想いに駆り立てられる人は多いのではないでしょうか。


「原爆ドーム」は戦争が生み出した文化財として残されています。

この歴史を忘れてはいけないという戒めのための
「負の遺産」として残されています。

戦時中は文化財を守るために

疎開させるという方法もあると紹介されていました。


奈良県庁の大瀧技師らは

東大寺法華堂の国宝をいかにして

アメリカから守るかと考えて

円成寺に文化財を託すことを決めます。

そして円成寺住職の田畑住職に疎開を依頼したそうです。

博物館では「円成寺文書」が展示されていました。

「疎開の件は極秘に」

「東大寺の者が点検に参ります」

など

東大寺に再び安置されるまでの経緯が記されてあるものです。


東大寺の法華堂から円成寺まで、

今の感覚でいくと、

車で20分ほどで到着というくらいの距離があります。





天平時代に出来た脱活乾漆という技法で造られた像は

通常の車の振動に耐えるだけの強度がありませんし、

今でこそ、その運搬ルートは国道369号線として整備されていますが、

当時は舗装されていない柳生へと続く道です。

諸仏を運ぶことがどれほど大変だったことでしょうか。


そう考えるだけで今、自分が便利な社会で生きていることについて

考えさせられますし、

この功労があったからこそ、

これらの素晴らしい諸仏を、目に出来ているのだと思うと感慨深いものがあります。


(疎開先は正暦寺などもあります。今回紹介されていたのが円成寺でした)

 
 
 正暦寺


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去年8月末、東大寺ミュージアムに
搬送される法華堂ご本尊 不空羂索観音の様子


日通の免震構造完備の技術車です。

戦後、疎開先であった円成寺から

法華堂の国宝諸仏は戻ってくることになります。


そのときに入江泰吉は遭遇するんですよね。

有名な話です。


「アメリカが奈良を焼かなかったのは、

文化財をきれいなまま持ち帰るため」

という噂を聞いた入江泰吉は、

これをきっかけとして

奈良の風景や仏像の写真を撮り続けることになりました。

敗戦後、文化財は奪われることはありませんでしたが、

写真家として活動をおこなってきた入江泰吉の功績を残すべく

奈良市写真美術館が高畑町に建設されています。

(入江泰吉写真美術館)

便利な社会では量産されたものがあふれています。

壊れたって無くしたって大丈夫、また買えばいいもの・・・・・。

残したい文化、残しておくべき文化財・・・・・・。

世界共通の平和への意識、戦争への戒め、

文化財や写真など残されてきたものに人の想いを感じとり、

自国の文化をもう一度見つめ直していきたいですね。



それでは、今日も皆様が健康で幸せに過ごせますように。