第588回『野菜の品種を考える―54 最終章―④』 | シェフの料理教室

第588回『野菜の品種を考える―54 最終章―④』

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「品種改良と遺伝子組み換えの違いは?」


品種改良の話をする時どうしても避けて通れないのが、巷間言われて久しい

「遺伝子の組み換えの作物」「品種改良」との違いについてです。


品種改良についても、初期の品種改良の方法と、現在、行われている

雄性不稔の因子を取り込む品種改良の技術ではずい分と違います。


少し復習も兼ねて、品種改良から話をしてみまよう。


人が自らの手により、品種改良に着手し、

やがて品種改良できる新しい品種を商業ベースにのせようと

本格的な改良を試みた当初は、

人海戦術に頼る、 「つぼみ受粉」 による品種改良でした。


母種となる花の中の雄しべを抜く作業(除雄)を行い、

その後、花が受粉可能になった時に

閉じた花のつぼみを無理やり開き、別の雄しべを受粉させる方法です。


人手と労苦を使います。


この苦労の一部を楽にしてくれた技術の1つが、

「自家不和合性」だったり、

「雄性不稔の特性の取り込み」だったわけです。


その中で、特に、雄性不稔の性質を取り込むための異種間交配では、

遺伝子の違うものでの交配ですので、

自然界では起こり難いと考えれば、遺伝子の操作と言えなくもありません。


しかしながら、雄性不稔の性質を利用した品種改良は、

変異で起きた雄性不稔の遺伝子を、交配により取り込むもので、

もともと交配間に存在する遺伝子の伝達です。


つまり、交配可能な近縁種同士の間での交配です。


交配の方法が人為的、作為的であるにせよ、

遺伝子そのものを操作しての改良とは違います。


確かに、雄性不稔という、

遺伝的には不健康と思われるものを改良に利用するということは、

不思議ではあるのですが、・・・・・。


ここまで話したように、


交配可能な同種あるいは近縁種間での、交配による品種改良では、

交配する両親の遺伝的特徴を、子世代は基本的に半分づつ受け継ぐので、

できた子の選抜と排除を繰り返し、

目的とする品種を作り上げるという作業が必要です。


一方で

「遺伝子の組み換え」というのは、

全く違う遺伝子の直接的な取り込みですので

同種であるとか近縁種であるとかは関係ありません。

ダウン

大切な話なので、

次回、もう少し詳しく考えてみましょう。

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