第556回『野菜の品種を考えるー25』
(
「トマトの品種ー24 品種改良―⑭」
ここまで、非常に遠回りして、非常に回りくどい話をしていました。
私達はスーパーの棚にならんでいる野菜や
産直市などで多くの野菜を手にし、
その鮮度については知っているつもりですし、そのことに神経を使います。
しかし、手にした野菜がどのように栽培され実りをむかえているのか?
さらにその種子はどうなっているのか?はあまり知りませんでしたし、
もしかしたら種子の事は、考えてこなかったかもしれません。
学校の勉強で、
植物のことは習ったのかもしれませんがそれさえ忘れています。
また、現在は世界中から豊富に物が入ってきます。
しかし、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉に見られるように
世界の物の流れは、日々変わっていきます。
しかも日本では、
多くの食料を海外に頼っている事は知っていても、野菜の種子まで、
海外への依存(いそん)の割合が高まっている事は、あまり知りません。
その意味からも、少し遠回りしながら考えて来ました。
今回からは、その種子そのものに焦点をあてて考えてみましょう。
前回までの話のように、『交配種=F1(エフワン)種』は一代限りの種子です。
自身が野菜に成長し、収穫されるのが目的の種子です。
子孫を永続的に残しながら、野菜としての役目を同時に果たす事が、
目的の種子ではありません。子孫は考えない種子として作られています。
固定品種(母種)と固定品種(父種)を掛け合わせてできるF1種は、
両親の良いところ〔遺伝的には優性(ゆうせい)と言います。〕を受け継ぎ、
悪いところ〔劣性(れっせい)〕は受け継ぎません。
しかも、両親よりもその優性が強くなると言う遺伝の法則があります。
「メンデルの遺伝の法則」です。
この遺伝の法則を利用し、
目的に合わせた親種同士を掛け合わせることで、
性質や形質が揃い、収穫も増えると言う、栽培にとって
非常に望ましい種子を作り出す事が可能になったのです。
しかし、F1種の果実から採種した種子や、あるいはF1種を交配した種子、
いわゆる、
雑種第2世代は、栽培しても、遺伝法則から離れ、
性質や形質が揃わず、求めるものができなくなります。
そのため、F1種は、1度限りの収穫のための種子で、
毎年、交配種の種子を種苗会社から買うことになります。
次回、この事をもう少し掘り下げて考えてみましょう。