入社1年目で頭角を現す人、沈む人 | 山中伊知郎の書評ブログ

入社1年目で頭角を現す人、沈む人

入社1年目で頭角を現す人、沈む人/ぱる出版
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 ビジネス本というか、新入社員に対する啓蒙本というか、どちらかといえば、私が普段読まないタイプの本だ。
なぜあえて手にしたかといえば、著者の山口伸一氏が、大学時代のサークル(稲門シナリオ研究会)の後輩だったから。

 彼は最初、森永乳業に入ったのだが、その後、銀行系のコンサルティング会社に転じ、そこで研修、セミナーを仕切るプロとして長年活躍した人物。特に新人社員セミナーは20年以上継続の実績を誇り、毎年、200人以上の参加者を獲得してきたらしい。

 てなことで、その彼が長年の経験で蓄積してきた、「新人社員が進むべき道」について記したのがこれだ。

 端的にいって、非常に丁寧な作り。55項目にわたり、「進むべき道」について触れているが、ただ「こうしなさい」だけでなく、そうしたほうがいい理由や、具体例が示されている。
 たとえば「誰から給料をもらっているか知っているか?」という項目で、会社員であるあなたは、誰から給料をもらっているか? と問いかけ、実は会社の社長ではなく、お客様からもらっている、と語る。そして
「お客様は結果にのみお金を払うのであり、言い訳や努力」には払わない」
 だからこそ、グダグダ言う前に結果を出せ、とまずは言い切る。
 が、その一方で、じゃあ、営業職以外の身近なお客様とは、直接の「上司」であり、その上司を満足させるのが、会社の中で「進むべき道」だとも教えている。

 ここらへんが、丁寧たるゆえんで、普通の本だと「会社じゃなく、お客様からお金をもらっていると知れ」で、だいたい終わってる。組織社会で生き抜くには、ここ忘れちゃいけないよ、と細かくポイントをフォローしているわけだ。

 もっとも、反面、還暦まで一度も会社勤めをしたことのない私としては、ここまでやらなきゃいけないなら、
到底自分は「新入社員」はムリだな、と感じた部分がいくつもあった。「与えられた仕事を好きになろう」といわれたって、そりゃ与えられる前に自分の好きな仕事を捜すべきだろ、と思っちゃう。「組織の歯車」ではなく、「組織のモーター付き歯車」になろう、っていわれても、歯車には変わりないだろうが、と反発したくなっちゃう。

 仕方ないな。どう考えても、私みたいな人間は、この本の読者ターゲットじゃないし。