営業時間は過ぎていたんですが、事務所にはまだおじさんがいました。この人、男性モードのわたしを知ってるので、聞こうかどうか迷ったんですけど、グズグズしてるとおじさんが帰っちゃうかもしれない。
何か情報を持っているかもしれないし、もしかしたら非常階段を使わせてくれるかもしれません。
このまま着替えられないリスクとおじさんにばれるリスクと天秤にかけて、ばれたところで他人だし、意を決して聞いちゃいましたよ。
階段も使えないんですか?
だめだそうです。エレベーターを修復する会社もライフラインの復旧が優先の為、係の人がいつ来られるかもわからないとのこと。
これ、エレベーターの扉に映ってるわたし。
鏡みたいになってます。
ただ、これが動かないと問題だ~。
おじさん、ただただ謝るばかり。おじさんの話しっぷりでは、今日中に直るかどうかも怪しい感じ。でも、おじさんの態度、普段とあまり変わらずに謝ってばかりいたからばれていないかもしれません。
取りあえず、携帯メールで地震のせいで帰りが遅れる旨連絡します。
あ~、でもどうやってこの危機を乗り越えられるんだろう。パニクリそうになりながらも、冷静に頭をフル回転。
このままのカッコじゃ帰れないし、男物の服はトランクルームの中。暗くなってから、この服装のまま家に忍び込もうか。そんなに広い家じゃないから見つかっちゃうよ。
仮に万一誰にも見られずに風呂場に辿り着いたとしても、着ていた服やサンダルやウィッグを隠しきれない。
家には男性モードで帰るしかありません。そのためには男物を買わないと。
でも、服を買っても家を出たときと違う服装になるのをどう説明するのか。更に、家を出る時持って出たショルダーバッグも持たずに帰ることになります。あ、靴もいる。あ~ん、どうしよう。
あなただったら、どうしますか?
それはともかく、どうしよう。家に帰れない。