希望のマッキントッシュ | イージー・ゴーイング 山川健一

希望のマッキントッシュ

最初のマッキントッシュを買ってから、気がつけば8年が過ぎた。オーバーなようだが、マックと出会ったからこそこの8年がきらきらと輝いたのだと思う。長い年月の間には、さまざまなことがあった。出会いと別れ、かきまくった恥の数々、失ったものや手に入れたものや……思い出したくもない出来事だってある。
しかし、である。
いずれにしても、素晴らしい時間の連続であった。そして、この8年間はマッキントッシュなしには考えられない。この話をするとたいがい唖然とされるのだが、ぼくはこれまでに30台以上のマックを手に入れたのである。
考えてみればずいぶん無駄な金を使った気もするが、マックがあったからこそぼくは雨が降る日にも……これはもちろん比喩的に言っているのだが……微笑むことができた。

恋愛に関する本を読んで得られるのが知識で、実際に異性を好きになり喜びを感じたり酷い目にあうことによって得られるのが知性である。それを絵画や音楽や文学で表現した時に、多くの人々が共有できる英知というものが誕生する。
Windowsマシンでも、知識を得ることはできるだろう。知性までいくと、どうだろうか。ま、これはユーザー次第だから断言するのはやめておこう。
だが英知となると、マッキントッシュの独壇場である。マッキントッシュは、スティーヴ・ジョブズが東洋知と西洋知を合体させることのなかから生み出したコンピュータなのだから。

古くからのマックユーザーの間に、こんなジョークがある。
「でもあなたは、アップルのマークが入ったジャンボジェットに乗る気がしますか?」
マックがよくフリーズする、という事実を前提にしたブラックジョークである。
だがOSXはUNIXベースだからフリーズしない。やる気になればターミナルを使い、UNIXにアプローチすることも可能だ。
マッキントッシュを窓口にすると、デジタルは人間に優しく深い。
デジタルの向こうに、温かな未来が見える。

 

 

抜粋:: 山川健一. “希望のマッキントッシュ”  iBooks.