素晴らしきこの世界 | イージー・ゴーイング 山川健一

素晴らしきこの世界

 震災と原発事故から10カ月以上の時間が経過し、疲れが出てくる頃だ。
 きれいな雪や美味しいはずの食べ物や──そういうものに含まれている不可視の汚染が、ぼくらを追いつめている。
 健康の問題だけではなく、家族や親しい友人間で価値観のズレが生じ、日本という国に対する不信感もピークに達している。

 子供達の世代には、ほんとうに申し訳ないことになってしまったと、頭を下げるしかない。途方に暮れるというのは、こういうことだろう。

 でも顔をあげようね。失ったものの大きさに較べれば小さなものかもしれないが、「こいつ、こんなに忍耐強い奴だったんだ!」とか、「あの人、こんなに愛が深かったんだ」とか、たくさんの希望の星々にも出会えることができたから。それがあれば、ぼくらはきっと共に歩いていけると思います。
 できることは何でもやろう。大きなものから小さなものまでシンポジウムや勉強会を開催し、デモへ行き、署名し、肩の隣りの大切な人に語りつづけよう。
 あきらめてしまうには、この世界には素晴らしいものがありすぎるから。