どんな権威にも絶対に屈服しないこと──山川健一の言葉 | イージー・ゴーイング 山川健一

どんな権威にも絶対に屈服しないこと──山川健一の言葉

 東北芸術工科大学芸術学部「文芸学科」を準備中ですが、文芸学科の告知に向けたリーフレットを作成することになりました。その中の企画として、「山川健一の言葉」を10ほど選んで紹介するコーナーがあります。
 ブログとmixiで、読者の皆さんに、「若い人にも読んでほしい」ということで、記憶にのこるぼくの言葉を選んでもらいました。皆さん、ほんと、どうもありがとう!

 たくさん集まったので、そのすべてを編集部に送り、先方で選んでもらうことにしました。
 でも、せっかくなので、お礼の気持ちを込めてその全文をアップします。



・少年にとって大切なたったひとつのことは、自分で自分自身を「カッコいいと思えるかどうか」ということだったんだ。(「イージー・ゴーイング」

▼僕にとって、生きるうえでの指針になりましたし、実は何冊か親しい人たちにプレゼントした作品で、その都度、買いました。若い世代にとって、少年期のヤマケン先生の真っ直ぐな想いはとても伝わりやすいかと思います。僕はそこまで若くないですが、特別な想いがありますから、いつも近くに置いています。(田中ビリー



・ブルースは恋愛ととてもよく似ている。とぼくは思う。朝早く、高い空の彼方からブルースがぼくの胸のなかに堕ちてくる。そうなったら、おしまいだ。ぼくは、もうブルースなしでは夜眠ることができないのだ。
 十九歳のときに、そういう“朝”があった。一年ぐらいの間、ぼくはブルースに夢中になった。だが、やがて、彼女は背中を見せてゆっくりとぼくのもとから歩き去って行った。ぼくが彼女よりもっと若い、明るく陽気で、誰とでも寝てしまう、どうしようもない女に心移りしてしまったからだ。その女の名前はロックンロールという。(「ブルースマンの恋」

▼当時二十代だった私は、この作品に出会って「ロックンロールのルーツはブルースなんだ」ということを明確に伝えられた。そして、初めてマディー・ウォーターズのアルバムを手に入れた。そして、ブルースをプレイしつづけることのなかから、強さを身につけていった彼の生き様を知った。(夕暮れ



・ぼくは書きたくない文章は一行だって書いてはいない。そうでなければ、文章を書く意味なんてゼロだ。(「僕のハッピー・デイズ」あとがき)

▼今の自分の心境に合わせて選んじゃいました。やっぱり、後悔するような人生は送りたくないな。つくづくそう思う。(渓人



・人間はいかにイノセント(純粋)になるかということのために、全生涯をついやすんだと思う。(「イージー・ゴーイング」

▼この本を読んでから、何かを成し得るのではなく、ただ生きていることが、かっこいいと思えるようになってきたからかなぁ…(



・自分を知るには、自分が好きなものを列挙していけばいいのではないかとぼくは思います。好きなものが、自分そのものなのです。好きなものがひとつ増えれば、自分の豊かさも増える。難しいことだけれど、嫌いなものを少なくするように努めればいいのではないでしょうか。(「イージー・ゴーイング」

▼初めてこれを読んだ時には、目からうろこが落ちるが如く、自分自身がクリアーになりました。自分の事って、自身が一番わかっているようできちんと捕らえきれていなかった事を知りました。まるで歩き方がわからなくなった時に「かかとから歩いていたでしょ」って言ってもらえたような気持ちでした。その後、自信を持って次の一歩が踏み出せました。(夕暮れ



・どうなろうと今の幸福を噛みしめればいい。幸福とは光か水のようなもので虹となって美しく輝き、でも消えてしまう。私は今、幸福だと感じたら、ただそれを味わえばいいんだよ。(「イージー・ゴーイング」

▼先のことが、不安で、未来を諦めてて、だから、よけい切ない頃、この言葉と出会いました。どうなろうと、今、自分は幸せって思えるようになりました。この言葉は私の宝物です。(セロー



・人は十九歳の時にそのピークに達するのだ、と僕は思う。(「みんな十九歳だった」
・自分の欲望の量と質をはっきりとみきわめること。(「みんな十九歳だった」

▼感想というより影響でしょうか? 最初のほうは「自己」というものをリアルに意識した初めての文章でした。後のほうは、それからの指標になり、岐路にたったときや迷ったとき、自分に言い聞かせる唯一無為の言葉でした。 (yosh-guan



・だが、たとえばアルコールやミックス・ジュースよりもソーダ水が飲みたいことだってある。炊きたての御飯よりも、深夜のプラット・ホームで秘かにふかす一本の煙草のほうが好ましいことだってある。つまり、そういうことなのだろう。(「壜の中のメッセージ」所収「八月のトライアングル」

▼これは「共感」ですね。初めて読んだ20数年前から何度となく、人生のいろいろな場面で思い出しては「そういうことなのだろう」と自分自身を納得させてくれた言葉です。過去をふり返り、「あの時なぜ俺はそれを選んだんだろう?」と思う場面って誰にもあると思います。冷静に考えれば「それ」以外のチョイスもあったはず。でも「それ」を選んだことを後悔はしていない、っていう時に、このフレーズが浮かんできます。暗記するほど読み返してるってことでもあるんですけど(笑 (ryoxxx



・ぼくらに固有な価値観を手放さずに死ぬその日まで走りつづけること。大切なのは、それだけだ。(「ローリングストーンズ伝説の目撃者たち」

▼周りに流されず自分らしく生きて行っていいんだ、それがロックすることなんだ、と思わせてくれた山川さんの言葉です。 (よしし



・いや、自分にかえるんだ。(「蜂の王様」

▼僕はどうも背伸びをしたり、周りに合わせたりしてしまうのですが、そんなときにこの言葉を思い出します。「自分らしく個性的に生きる」という簡単そうで困難なことに挑みたくなります。会社でも学校でも多くの人に知ってもらいたい言葉です。(蠍座アストロノーツ



・独りの時間に慣れること。独りでいる自分に自信を持つ事。孤独力を磨くこと。心配しなくてもだいじょうぶ。ほんとうに大切な友達は決して離れていかないから。(「イージー・ゴーイング」

▼挫折してしまった時、友達と些細なことですれ違ってしまった時、独りぼっちだと感じる時・・写真に撮ってケータイにしまってある、この文をそっと読みます。ちょっと前、それが娘にばれちゃいました。娘もこの文が気に入って、こっそりケータイに忍ばせて、時々読んでるみたいです。(上総介 ) 



・どんな権威にも絶対に屈服しないこと。(「不良少年の文学」帯コピー)

▼私は、やはりこの言葉です!(Hayato



・こんがらがった糸をほぐそうと無理をして、糸を切ってしまっては元も子もないではないか。(「幸福論」

▼「イージー・ゴーイング」をダイレクトに表わしてくれている言葉です。もがいてもしかたがない時にこそ、私たちはもがいることが多いのではないでしょうか。南無阿弥陀仏...とも通ずる言葉だと思います。(荒城の月



・宝石のように青く輝く海を感じながら、海のことについて考える。そして、水のある地球という星のことを考え、暗黒の宇宙に浮かぶあまりにも美しい星の姿をイメージするのだ。(「星とレゲエの島」

▼20代の頃の話です。このころ押しつぶされそうに思う時が多くて、わけもなく大きな不安でいっぱいだった頃。そんなころに地元の駅前の書店でこの本と出会いました。大きなものを感じると楽な気持ちになれたから、山を見たりお風呂に入って海やくじらのことを考えてた。これを読んでからはまねをして地球のことをかんがえてました。今でもこのときのイメージを忘れません。(アイリイ



・メネメネ・テケル・ウパルシン。(「カナリア」

▼震撼しました。。。(BJ東里



・ところでいったい君はどれほどまでに裸であり得るのか? 君は怯えているか? 慄えているか? 寒さに耐えているか? 背後に閉じた扉の向こう側に、何を置き去りにしてきたのか? 人間はどれほどまでに<己れの神>たり得るのだろうか……? (「天使が浮かんでいた」

▼これは山川さんが「群像」でデビューされる前、早稲田の学生新聞で賞をとった作品の中の言葉です。まだ19歳の時の言葉です! ずいぶん後で私はこれを読みましたが、衝撃を受けました。この人の書くものはずっと読みつづけようと思い、可能な限りそうしてます。己れの神、今でも胸に響く言葉です。(Rider



・誰かを愛するということは、もう一人の自分を持つということだ。(「夜の果物、金の菓子」

▼山川さんは小説、エッセイ、ブログ、講演・セミナー等、様々な媒体で多くの言葉を発信してきました。それらの中で、好きな言葉、セリフ、箴言などをみんなで共有していきませんか。 言いだしっぺがまず書きます(^^) (だいけん



・反対だよ。一生懸命働いて、世の中のシステムってものをちゃんと守って、役人やポリスに逆らわないで生きていけばハッピーになれるなんて考えるほうが、夢みたいなものじゃないか。(「星とレゲエの島」

▼「この台詞がかっこいいんだよ」って深夜にカクテル飲みながら女の子にして、笑われた思い出があります。(ミカウバー



・人間は弱い存在だ。どんなに強がってはいても、ふとしたことで自殺に追い込まれたり、精神のバランスを崩してしまったりする。知性を獲得したいと強く願った人間は、みんなそうだ。だが諦めずに、愛しつづければ、誰もが太宰治のような優しい眼差しを手に入れることができるのではないだろうか。人間失格? とんでもない。「太宰治」の名前で呼ばれるものは、この地上で人類が獲得し得たもっとも美しい魂の一つなのである。(『太宰治の女たち』

▼涙が出る。自己を責め続け、消えてしまいたいと感じる自分、いいやこのまま終わりたくはないと願う自分がいつもいる。弱さを知り本当の強さを得て、優しくなりたい。やはり最期まで諦めずに生きようとの決心を、新たにする。魂が美しければ、他には何も必要ないのだとさえ思えるのだ。
high



 書き込んでくれた人の名前がわからないものや、コメントのないものでは、こんなのがあります。



・月がブライアンで、輝く星が・・・・・汚れることのなかったジャニスの心なんだよ。そして優しかったブライアンは月になって、今夜もジャニスを守ってあげているんだよ。(「スピカと月」



・おれにもあんたにも、なにか信ずるものが必要なんだ。それから、もうひとつ。どんな人間にも、そいつがこのアスファルトの上で生きて呼吸してたってことを示す印みたいなものを残していかなきゃいけない。たとえ、引っ掻き傷みたいなものでもいいから。(「パーク・アヴェニューの孤独」



・情事よ。(「ドライヴと愛の哲学に関する若干の考察 ~ホテル・ハイランドリゾート」

▼杏子の台詞です。深い…。



・イッツ マイ シェイプ。(「雨の日のショートストッパー」あとがき)

▼著者が浜辺でキースと出会ったとき、サインをしてもらおうとギターをみせた時、キースが放った一言です。



・今夜のお月様はなんて言ってる?(「星とレゲエの島」

▼アイリィさんのチョイスです。



・だから私は振り返る。時の向こうの暗闇へ去って行こうとするものたちの背中に、もう一度だけ、さよならを言うために。新しい言葉は、いつも過去の中に眠っている。(「鏡の中のガラスの船」あとがき)

▼山川さんより少し年下の私は高校生の頃この作品を読み、あとがきを読んで「なんて生意気な作家が出てきたんだ」「ランボーみたいな天才だ」と思いました。20代でこんな言葉を書き記すなんて……!




 以上です。
 いやぁ、さすがに襟を正すね。
 もう一度、みんな、ありがとう!