ヒーローの仮面 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 夜、顔面に異物が乗っていると感じたので驚いて意識が覚醒した。私は咄嗟にそれを両手で除けそうと試みたのだが、そこには目や鼻や口などがあるばかりで実際には何も乗っていなかった。

 そういえば、夢の中で特撮ヒーローに扮装して道を歩いていたと私は思い出した。鮮やかな原色で彩られた仮面を被り、子供達と擦れ違う度に歓声や称賛を受けていたのだった。そして、徐々に私を追ってくる子供達の数が増えてきていた。

 しかし、私は自分がそのような称賛には値しない人間であると思っていた。たくさんの子供達から憧れの眼差しを向けられながら居たたまれなくて息が詰まるようだと感じていた。一刻も早くヒーローの仮面を脱がなければならないと考えていたのだが、路上には身を隠せるような場所がなかった。

 私はその体験が夢で良かったと思いながら布団の中で胸を撫で下ろしていた。そして、両手で念入りに自分の顔面を撫でていた。その目や鼻や口などがヒーローのものではないと確認していた。


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