屁のような風 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 数年程前から風が吹く度に屁のような音が聞こえてくるようになっている。耳がおかしくなったのだろうかと心配になったが、他の人々も同じように聞こえているらしい。人類の聴覚が風を屁のような音として認識するように進化したようだと科学者達は言っている。

 屁のような間抜けのような音なので私は風が吹く度に笑わずにはいられなくなる。いい加減に慣れても良さそうなものなのだが、未だに可笑しくて堪らない。路上でも所構わずに爆笑するものだから知人達の顰蹙を買っている。彼等からは幼稚な人間であると軽蔑されている。

 実際、屁の音が聞こえてくる度に笑い転げているせいで日々の生活に支障が出ている。なにしろ風が強い日には他人との会話が成り立たなくなるのである。他の人々がどうして笑わずにいられるのか不思議で仕方がないが、私はまったく我慢できない。どうやら私は人類の進化に対応できなくなった個体であるらしい。その厳しい現実を受け止めざるを得なくなっている。


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