鯨の噂 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 砂浜に鯨が打ち上げられたらしいという噂を耳にしたので私は自転車に乗って海へと出掛けた。よく晴れていて爽やかな風が吹いていた。海の方角は緩やかな下り坂になっていて自転車が自然と加速した。

 自転車を道端に置いて防波堤に上ったが、砂浜のどこにも鯨の姿は見当たらなかった。私は拍子抜けしたが、せっかくなので砂浜に下りてから波打ち際まで行って海水に触れてみた。

 浜辺には人影がまったくなかった。風景が無闇に広々としているように見えた。どうやら鯨が打ち上げられたという噂は自分一人が聞いたものであるようだと私はしばらく経ってから気が付いた。それで、ようやく私は騙されていたようだと悟り、大きな空の下で悔しさと寂しさが入り混じった不快な気分を味わった。

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