数に追われる夢 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 昨日、数に追われる夢を見たよ。街角に立っていて何かの気配を感じたんだ。でも、周りを見回しても誰もいない。けれども、何かがいるような気がするんだよ。それで、気味が悪くなったから僕はとりあえず早足で逃げたよ。

 最初は狭い路地にいたのだけれど、いつの間にか大きな建物に入っていたよ。僕は長い廊下を走り、階段を駆け上がった。でも、背後の気配は消えない。それで、僕はひょっとすると自分に迫ってくるものには実体がないのかもしれないと思い付いた。そして、その瞬間、数に追い掛けられていると気が付いたんだ。

 だから、僕は自分を追い掛けているものの正体を見極めてやろうと建物の中の一室に入って椅子に座ったんだ。そして、ペンを手に取って帳面に数字を書き連ねていった。そうすれば数をそこに定着させられるかもしれないと思ったんだよ。

 一桁の数字から初めて順番に二桁の数字を書いていき、遂には三桁にまで辿り着いたけれど、どうも僕を追い掛けていた数と合致した気がしない。それで、僕はどんどんと桁を増やしていかなければならなくなった。もう順番も滅茶苦茶になって適当に膨大な量の数字を書いていっていたよ。

 でも、ひょっとすると僕を追い掛けていた数は分数かもしれないし、虚数かもしれない。そうすると単純な整数を書いていても永遠に正解には辿り着けない可能性がある。そのように考えると徒労感に襲われて何もかも馬鹿馬鹿しくなったんだ。それで、僕はペンを放り出したよ。

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