市場でゴリラ馬を入手したので私は手綱を引きながら旅に出た。ゴリラの血が混じっているので純粋種の馬よりも速度は出ないのだが、その替わりに体格ががっしりとしていて力が強いので荷物をたくさん運べるという利点があった。
一度、峠道で山賊に襲われたのだが、ゴリラ馬は武器を持った三人の大男をまったく相手にせずに撃退した。実に頼りになる動物であると私は感服した。
しかし、普段は物静かな態度で私に付いてきていた。私は一緒に長い旅を続けている内に徐々にゴリラ馬の感情を読み取れるようになってきたという手応えを感じていた。どうやらゴリラ馬には道端の花や夜空の星を愛でる繊細な感性があるようだった。人間の言葉さえ通じれば花や星の美しさについて語り合えただろうと考えて残念な気がしていた。
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