長い夜道が続いていた。私は運転席に座ってトラックを走らせていた。荷台には陽光を詰めた瓶が幾つも置かれていた。電力で人工的に製造した紛い物ではなく、太陽から地上に降り注いできた天然物だった。私はそれを村へと運んで帰る途中だった。
今回の仕事には息子も連れてきていた。まだ運転免許を取得できる年齢にも達していないのだが、やがて彼が運び屋としての家業を継ぐはずなので今から手伝わせておこうと考えたのだった。
仕事は順調に進行していた。私達は途中で何度も車中泊をしながら長い時間を掛けて太陽が照っている地域を探し当てた。ただ、最近になって息子の口数がめっきり減っているので私は心配して話し掛けた。「どうした?元気がないな。さすがに疲れたか?」
「大丈夫だよ」息子はそれだけ言うと再び黙り込んだ。
私は自分の父親から仕事を教わっていた当時の心境を思い出し、きっと息子は太陽の光が降り注ぐ大地に行って村に帰りたくなくなったのだろうと推察していた。しかし、村に帰還して太陽の光の到着を歓迎する人々の笑顔を見れば息子の未練は吹き飛ぶはずだと私は確信していた。太陽の運び屋は村では名誉ある職であると認知されていた。私は自分の息子もきっと家業に誇りを持つようになるはずだと考えていた。
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