石を運ぶ | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 大雨の影響で隣の村で山の一部が崩落したらしいという情報を得たので私は息子と共にトラックに乗って現場へ急行した。まだ雨は止んでいなかったが、既に勢いは弱まっていた。

 峠道を越えて崩落現場に到着すると大小の石が土砂に混じって無数に転がっていて人々が群がっていた。試しにその一つを拾い上げて齧ってみたが、なかなかの美味だった。自宅近辺では適当な大きさの石をほとんど取り尽くしていて地中深くまで掘らなければ上物が見つからない状態になっているので私は雨の恵みに感謝した。

 食べ過ぎると身体が重くなって動けなくなるので私はすぐに食事を中断して石を幾つもトラックの荷台に積み込んだ。帰路にはまた峠道を越えなければならないので積載重量には注意しなければならなかった。

 息子も私と同じ作業に励んでいたが、どうも途中で石を摘み食いしていたらしく、疲れたと言い残して勝手に助手席で休息を取り始めた。山が再崩落する危険があるので迅速に作業を行わなければならないのだが、息子が協力しないので私は仕方なく一人で荷台に石を運び続けた。息子の他にも食べ過ぎて動けなくなった人々が近辺に倒れていたが、随分と危機意識が低い連中であると私は呆れ返っていた。

 帰り道、息子は私に運転を任せて助手席でぐっすりと寝入っていた。石を積んでトラックの速度は鈍重になっていた。疲れの影響もあって自宅までの道のりが随分と遠いように感じられていた。私は息子が目覚めた後にしっかりと水害の恐ろしさについて説き聞かせなければならないと考えていた。


《関連作品》
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