夢に関する本 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 図書館で本を読んでいた。夢の内容が幾つも掲載されている書物だった。

 ここのところ私はまったく夢を見れていなかった。もしかしたら見ているのかもしれなかったが、見ていたという記憶や実感を得られていなかった。夜の間に眠りに着き、起床する頃には朝になっているという概ね規則正しい生活を送っているのだが、私の主観としてはほんの一瞬しか瞼を下ろしていなかったような気がしていて、目覚める度にまるで時間を飛び越えたかのように感じていた。

 眠気は解消されるので普段の生活には支障が出ていないのだが、それでも私はずっと釈然としない気持ちを抱えていた。時計や太陽の動きなどは充分な睡眠を取ったという事実を保証してくれているのだが、夢を見なければ眠っていたという実感を持てないのだった。

 少年時代に睡眠中の何割かの時間は夢も何も知覚していないという学説を聞かされた折りにも時間泥棒の被害に遭ったかのように感じて憤りを覚えたが、今でも私はできれば眠っている間はずっと夢を見続けていたいという願望を抱えていた。

 それで、私は失われた時間を回復する為に図書館で夢に関する本を読んでいた。どれも突飛な内容で興味深かった。私は再び夢を見られるようになりそうな手応えを感じていた。

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