十進法の世界で | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 エレベーターに乗っている。表示されている数字はどんどんと減少していっているが、一桁しか示されていないので同じ数字が何度も繰り返して登場する。しかし、二進法の世界ではないので減少しているという事はわかる。現在の位置が地上か地下かは不明だが、数字の減少は地面との距離が縮まっている事を意味しているはずである。

 エレベーターはなかなか停止しない。他に乗り合わせた人間はいないのだが、天井に設置されている小型の防犯カメラがこちらを監視しているので完全に一人きりというわけではない。それに、いつ眼前のドアが開くかもしれない。私は直立したまま姿勢を崩さず、腕組みをしながら数字の表示を見守っている。

 数字は十種類ある。ゼロもその内の一つである。もしも古代人がゼロという概念を発見する以前に数字の桁を増やすという表記方法を開発しなければ、9の次に11の出番になったのであろうか?二桁に到達した瞬間に一桁の部分がゼロを示すという現行の習慣は私などには自然に感じられるのだが、果たして9の次に11の出番になるような数列に不都合はないのだろうか?

 エレベーターは止まらない。表示には十種類の数字が現れるが、一桁しか示されていない。まるでゼロという概念を発見したものの数字の桁を増やすという表記方法をまだ開発できていない過度期の古代人を思わせる中途半端さである。減っているが、同じ場所を延々と堂々巡りしているようでもある。増加に転じもしない。ドアは一向に開かない。


「数字」関連

ゼロの存在
ゼロの表記
ゼロの孤独
数字と共に
十進法の世界で
+1と×1
数値頭
数学頭
ゼロを巡る歴史
1+1=?

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