催眠療法 その1 退行催眠に出会うまで | やまびこDr.の診療日記

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薬よりもっと大切な事をお伝えする小児科医のブログです。

催眠療法とは何かを知ってもらう前に、何故とても怪しげな「催眠療法」を導入しようと思ったのかという事を、最初に説明しようと思います。

医学部6年間では、「西洋医学」というものを深く深く学びます。

人間の本体は超高性能ロボットである肉体であり、病気や怪我はロボットの故障であり、手術や薬によりその故障を修理すれば治ると(暗に)教えられました。

西洋医学では目に見えないものは否定するため、そもそも心というものも存在せず、超高性能コンピュータである脳の故障により生み出される現象が鬱病などの精神疾患であり、だから薬で脳を修理すれば治るのだと説明されます。

氣などのエネルギーも存在するはずがないと考えているため、東洋医学やホメオパシーといった伝統医学は最初から相手にしていません。

大学6年間でそのように教えられるため、医者は目に見えるものやデータなどの証拠のあるものしか信じていません。僕も当初そのように考えていました。

しかし、生まれ来る命と去り行く命の両方に携わる小児科医として、命とは何か、死とは何かを考えさせられる事が多かったため、人間の本体は肉体ではなく「魂」なのではないかと自然と考える様になりました。

一番はじめに「魂」を感じたのは、研修医になりたて1週間目の頃です。

その日大動脈解離の中年男性が救急外来にやってきました。

最初はベッドに横になって話をしていたその男性が、突然「気持ち悪い」と言い出し、そのうち意識がなくなり、(先輩医師達の)懸命の救命活動もむなしく数十分後には死亡確認がされたのです。その亡がらをみて思ったのです。

「この人はここにいない・・・」

あの時の不思議な感覚はずっと残っています。

ほんの数十分ほど前まで自分と喋っていたその人の肉体はそこにあるのだけれど、でもその人はここにはいないと感じたのです。

そしてもう一つの症例は、原因不明の肺出血の生後6ヶ月の女の子です。

顔色が悪いという主訴で小児科外来を受診し、一時心停止に陥り緊急入院になったその女の子は、入院後の治療により一旦回復したのですが、退院が決まった日の夜に急変してしまったのです。

その時にマスクバッギング(呼吸の補助)をしながら先輩小児科医がぼそりと言った一言です。

「この子、生きる気ないのかなあ・・・」

目に見えないものは存在しないと暗に教えられてきたのに、生きる気があるかないかで命が左右されてしまうというのは、とても衝撃的でした。

小児科は内科と違い、採血しすぎると貧血になったり、子供のサイズの医療機器が存在しなかったりと制約が大きい事もあり、診察時に元気かどうか違和感を感じないかどうかという、「感覚」を重要視しています。

新生児の分野でも「なんとなく元気が無い」だけで敗血症を疑い検査を進めることになっています。

このように、大学で教えられてきた事とは違い、「魂」こそが人間の本体ではないかと次第に思う様になっていったのです。

そしてその「魂」とは何かを知るため、あらゆる書籍やネットやテレビでの情報を集め、そこで「退行催眠」の事を知る様になったのです 。 (その2へ続く)