ティラミス“商標横取り”騒動、HERO'Sは「企業戦略」との回答…常習との指摘も | 山岸久朗オフィシャルブログ「正義は我にあり!!」Powered by Ameba

わが国の商標法は先願登録主義をとっています。これは、わが国の商標法の基本構造ですし、根本原理です。商標権の成立に登録という手段を用いる制度です。

 

商標法の目的は、商標の保護を通じて商標を使用する者の業務上の信用の維持を図ることで産業の発展に寄与し、あわせて需用者の利益を保護することにあり、この目的に反する場合は保護に値しませんので商標登録は取り消される必要があります。「不正使用による取消審判」とは、商標権者やその使用権者による登録商標の使用方法が不適切であるため商品の品質や役務(サービス)の質を誤認させたり、他人の業務上の商品や役務と混同を生じさせたりしているときは、何人でも、その登録商標の取消について審判を請求できる制度です。

 

「商標の先使用権」とは、商標法32条1項の規定する要件を充たした「商標の先使用者」に与えられる法定使用権の一種です。その内容は、他人の登録商標権の発生後も、その排他的禁止権に対抗して、従前どおり、自己の未登録周知商標を継続して使用できる権能です。この権能は、商標権侵害訴訟において、被告の抗弁事由ともなります。

 

<以下、ビジネス・ジャーナルより引用>

 

1月20日、東京・表参道に「HERO'S(ヒーローズ)」というティラミスのテイクアウト専門店がオープンした。

 瓶入りのティラミスには味が8種類あり、瓶にはヒーローのコスチュームに身を包んだ猫のキャラクターがあしらわれている。4個セットが3000円(税別)と、やや高価に感じられるが、SNS映えするパッケージもあいまって特に女性から好評を集めるだろうとみられていた。

だが、このHERO'Sは、既存のティラミス専門店の“パクリ”ではないかと指摘され、インターネットを中心に瞬く間に炎上状態となった。

 さかのぼると、まずは2012年8月に、このHERO'Sとは無関係なティラミス専門店「The Tiramisu Hero」がシンガポールで創業し、翌年8月には「ティラミスヒーロー」として日本でも販売を開始。実店舗は構えていないものの、商品は通販や百貨店などで購入できた。

 HERO'Sとティラミスヒーローは、その名称のみならず商品コンセプトや猫のキャラクターまでもが酷似している。さらに、HERO'Sは公式サイトで「ティラミスヒーローズがテイクアウト店舗としてのFC募集開始!」(原文ママ、以下同)と謳い、さらなる展開に意欲を見せた。

 一方でティラミスヒーローの日本支店は昨年末、公式サイトで「ティラミスヒーローの名称にてフランチャイズや代理店の募集が、ネット等でなされておりますが、シンガポール本店『The Tiramisu Hero』並び、当社(日本支店)とは一切関係ありません」と強調。

 

それだけでなく、「2012年にシンガポールでつくった私達のオリジナルの『ブランドロゴ』がコピーされ、只今日本で使用できなくなってしまいました。私達が大好きな日本でこのような事が起きた事を、大変残念に思っています」と、HERO'Sの展開によって従来の商標およびロゴを使えなくなる被害を受けたと訴えた。そしてティラミスヒーローは新たなサイトを立ち上げ、商品名を「アントニオヒーロー」及び「ティラミススター」に改める事態となった。

 

ティラミスヒーローが訴えている“オリジナルの「ブランドロゴ」のコピー”や、商品の改名が意味するものは何か。

 ここで特許情報プラットフォームを参照すると、「ティラミスヒーロー」という名前が昨年3月に、猫のキャラクターがデザインされた「THE TIRAMISU HERO」のロゴは同年8月に、それぞれ商標登録されていたことがわかる。

 これらの商標を出願したのは、パンケーキ店を国内外で60店舗(昨年12月末時点)運営する株式会社gram。同社の代表取締役である高田雄史氏は、株式会社HERO'Sでも同じ役職を務めており、この商標登録によって“元祖”ティラミスヒーローの動きを封じたという見方ができそうだ。

 法的な問題をクリアしているとはいえ、そんなHERO'Sの姿勢を「志の低いやり口」と断罪したツイッターユーザーのツイートは、22日20時の段階で5万5000回以上リツイートされるほどの反響を呼んでいる。

 HERO'S公式サイトは21日、「多彩なキャラクターと本物のティラミスの味わいを特徴に、『ティラミスヒーロー』やキャラクターの商号・ロゴを取得して展開を進めております」「他社のティラミスに関する商品とは関係ありませんので、他社の商品と混同されませんようお気をつけ下さい」などとアピールしたが、“他社の商品と混同”されかねない真似をしているのはHERO'Sのほうだとして、事態が収まるどころか、さらに批判の声は高まった。

 

そして22日、HERO'Sは件のロゴについて「シンガポールの日本側運営会社に対し、その使用権をお渡しする所存でございます。皆様にお騒がせしてしまい誠に申し訳ありません」と、態度を一転させた。だが、あくまでも「使用権」の譲渡であって、HERO'Sが現在保有している権利を放棄するわけではない。

 Business Journal編集部ではHERO'Sに、今回の出店の経緯や、商標登録の意図などの質問事項をメールで送ったところ、「現在、弊社としては個別の質問にはお答えしておりません。HPあるいはメディアを通じての回答を把握いただければと存じます」として詳細な回答は得られなかったものの、担当者は下記のようにコメントした。

「弊社としても、企業戦略の一環とはいえ、このようなお言葉を頂き、真摯に受け止めております。メディアの皆様にも、このようにお騒がせしてしまい、誠に申し訳ございません。今後もHERO'Sとして、良い商品をご提供し、お客様に喜んで頂けるように努力いたします」

 なお、HERO'Sのイメージキャラクターに起用されている俳優・三浦翔平にも批判の声が飛ぶなど騒動の余波が広がっている様子だが、所属事務所に問い合わせたところ、「弊社ではお答えできない」とのこと回答だった。

 実はgram社は、このティラミスに限らず、世間で人気が出た他社のパンケーキやプリンなどの商品名を商標登録して、知的財産権を横取りする手法を繰り返しているとの指摘も上がっている。

 表参道の次は、兵庫・神戸三宮に2号店をオープン予定のHERO'S。その味がどれだけ優れていようと、gram社の手がけるパンケーキ店と合わせ、当面は世間から冷たい視線を浴びることは避けられそうにない。