ちょっと前だが、「松屋」が牛焼肉キャンペーンをやっていた時に行った。学生時代や就職してすぐの頃は一番利用していた牛丼チェーン。「松屋」は「牛めし」だけど。当時は胃にも歯が生えているくらい食欲旺盛だったので、ここのワンコインセットを特に注文していたな。「吉野家 」はわずかながら高いし、「すき家 」はあまり店舗が無かったし。「松屋」自体もその頃が最も隆盛だったと思う。その後「○○○軒目開店キャンペーン」とかも頻繁にやっていた。ただ、そうやって店が増えたことで「いつでもどこにいても行ける」から「まずくはないし高くはないから、もし出かけた時にめぼしい店が無かった時に入ろう」という「保険」的な感じになり、優先順位からどんどん下がっていった。今回もキャンペーンが無かったら、入らなかっただろう。

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注文したのは牛焼肉定食。590円が540円になる50円引きキャンペーンだった。直前には630円のカルビ焼肉定食が580円になる形でキャンペーンは行われていたが、そっちは間に合わなかった。もっとも、「松屋」は卓上常備調味料が豊富で、カルビソースもあるから、牛焼肉にそれをかければいいんじゃないかな? わざわざ別メニューを設定した理由がわからない。まあ、牛焼肉はロース的な部位で、カルビはちょっと脂が乗っている別の部位を使っているんだろうけど、「松屋」に来る人がそれほど細かいことを気にしているかは大いに疑問だ。けなしているわけではなく、「松屋」というのはそういうことを気にしないで気軽に食べられるジャンクな定食屋という位置づけだから。本当にカルビロースにこだわる人なら、焼肉屋に初めっから行くだろう。

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この時の俺は何だか米が食いたかった。夕方で時間的に他にも選択肢はあったが、はっきりと目標を定めていなかったところに、「50円引きキャンペーン」という大きなファクターが働いた。出てきた物は割と想像通り。昔はこの丼飯にご飯を水平によそるシステムが嫌いだった(この店はそうでもないけど、スゴイ店だと摺り切りみたいにしてくる)。少なく見えるし、いかにもマニュアル通りで自分が機械になったみたいだから。実際少なくて、昔なら確実に大盛りにしただろう。最近はこれで十分だ。

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肉は量、というより枚数か。まあこの値段なら御の字だろう。肉質はたいしたことないが、ネギやおろしが少しでも備え付けられている点を評価したい。むしろ焼き具合が重要だ。「松屋」の肉はスライスを重ねてチルドだか冷凍だかにしてあるので、しっかりバラけて鉄板に広げて焼かないと生の部分ができる。今回は大丈夫だったが、昔はよく夜中に食いに行って生肉を食わされた。深夜バイトはいい加減だ。肉自体は決して美味しいものではないし、味付けも薄い。なので、焼肉のたれやカルビソース、ポン酢ソース、紅ショウガをいろいろ使ってどれが一番合うか試しながら食うのが楽しい。まあ、結論が出た頃には肉が終わってしまっているのだが。

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残るは味噌汁とサラダだが、味噌汁は機械から出てくるものそのままだから評価する点は無い。俺が「松屋」で一番評価したいのはサラダだ。ドレッシングは和風ごまだったかとフレンチの2種類があるが、これも両方使う。最初にフレンチを使ってコーンが乗った部分を食べる。コーンにフレンチ、そしてキャベツが良く合う。和風のドレッシングは、前は酢醤油系だったと思ったが、俺はあれの方が良かった。フレンチとの味の系統の違いがクッキリ出ていて、同じサラダなのに2品食べたようなぜいたくな気分になれた。「松屋」のサラダは別皿でまあまあ量があるのも嬉しい。ワンコインセットの時も必ずサラダ。作り置きを冷蔵庫に入れて保存しているから冷たくて栄養素も死んでいるのだろうが、それでも「野菜食った」感を堪能させてくれる。10年以上前はよく朝食代わりにワンコイン牛めしセットを頼んだりしていた。朝の慌しい店なので、サラダだけが速攻で出てくる。俺は「食事の最初の段階で生野菜を食べると胃に良いし、太らない」という説を信じて、今でもそれを守っているのだが、目立った効果は表れていない。いや、効果があるから俺はこの程度で済んでいるのかもしれない。

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要するに、俺にとっての「松屋」は牛めしは二の次、サラダを食べる店なのだ。あえてもう一つ挙げるとしたらトン汁。トン汁も大根の保存方法をもう少し工夫して、今の切り干し大根みたいな筋っぽい状態を克服したら、しょっちゅう食いに行きたくなるほど気に入っている。濃い味噌味、豆腐をはじめとした具の豊富さは文句無しだ。

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長々と書き連ねてしまったが、「松屋」に関してはもう一つだけ書いておきたい。先日『めしばな刑事タチバナ』を読んでいたら「松屋の名作チキン定食、また食いてえなあ」と主人公がひとりごちる場面を見つけた。思わず「あったな」と俺も相槌を打ってしまった。焼肉メニューとしては牛よりも豚よりも安い鶏を定食に活かす発想は見事。きちんと定食の体をなしていた。漫画ではハムみたい、とあるが俺はどちらかというと冷凍ラムのスライスみたいな印象を抱いていた。既に書いた通り、豚でも牛でもそれほど味付けもしていないし素材の程度も知れているので、同様にソースで味つけしてしまうなら安い鶏で十分なのだ。大学生時代の俺はそれをよく頼んでいたが、今はかなり忘れかけていた。『タチバナ』と唯一違う点は、「食いてえってほどではないな。激ウマは言い過ぎだろう」とちょっと冷めてしまっているところか。

Text by 大王

松屋 上板橋店牛丼 / 上板橋駅
夜総合点★★☆☆☆ 2.7