読んでいて、なんて、残酷なのだろうと思う。


語り手である空也は、元ボクシング雑誌の記者。小さなボクシングジムに所属する立花という選手を応援している。ジムにはノンちゃんという少年がいて、親が変わり者なせいでいじめにあい、立花の勝利に希望を託している。ところが、立花は天才ボクサー・岸本との試合で目を覆いたくなるようなみじめな負け方をする。それ以来、立花は試合中に「負けるかもしれない」という気持ちにつかまって、動けなくなるのだという・・・。空也は悩む立花を追ってタイに出向くが、そこで、さめざめと泣いている立花を見てしまう。


朝ドラみたいに、話しが進みそうで進まない。クライマックスは自分をボロボロにした岸本の、前座での立花の試合。新聞小説だから、それなりに勝つんだろうと思うけど。他人事ではあるが、世の中にこんなに沢山の役者が必要なのかと悩んだものだ。監督だって、つくったり見せたりをしなくなったら、無職と同じ。儲からなくても止まれないのだと、憶測する。簡単なことだ。力のない選手は勝てずに、消えていく。立花は「もう一つ、先に進むための何か」と出会えるのだろうか?


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着物に家紋を刺繍してもらった。ここは、違う時間の流れ方をしていて、日常を忘れてしまう。先生は「江戸になれ」と言うが、こういうことを求められているんじゃないかな?