おもしろがる。

テーマ:

午後、地下鉄に乗る。ドア横にこんな広告が出ていた。

 

普段はテレビドラマに興味のないひとでも「恋ダンス」を知っている。男の子たちは後頭部に毛束を集めたヘアスタイルと丸眼鏡で、小学生にも名前を覚えられ、彼の顔を思い出さない日はない。文庫本の広告には「つまらない生活をおもしろがろう」と添えられていた。

 

地下鉄を降りて地上に出たら、飲食店の並んだ片側一車線の狭い道路に銀杏並木が続いていた。二階の軒からブルーシートをびろーんと地面まで吊るし、伐採した枝を滑り落としていた。刈り取られた枝をバッサバッサとブルーシートが受け止める。

 

ブルーシートの手前にはゴミ収集車が止まっていて、ゴミ係りのひとが枝を掴んでは荷台の中に放り込む。回転する鉄の板が、掻き込むように枝を荷台の内部に集めると、枝の折れる音は悲鳴のよう。合理的だが、荒っぽい。

 

それでも、均等にカットされた並木道は美しかった。

 

 

夜は日比谷シャンテの裏でお好み焼きを食べた。

 

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88

千代田区有楽町1-2-4

050-5797-2677

 

 

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2019年に平成の元号が変わるという。

 

2016年の年末には日本の総理大臣が真珠湾を訪れ「日本人はハワイのアメリカ人をいっぱい死なせたけど、アメリカ人は軍人のお墓を建ててくれた。日本とアメリカの絆は永遠だ」と語り、ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞して「シェークスピアも、自分のやってることが文学だとは予想もしなかっただろう」とコメントを出した。

 
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NHKでは2005年のボブ・ディランのドキュメンタリーを放送していた。
 
ネタバレだが、あまりに、もやもやするので、全部書いてしまう。
 
「ノー・ディレクション・ホーム」は、映画「沈黙」の公開で話題の話題のマーティン・スコセッシ監督の作品で、ディランのプロテストソングが注目を集めた時代を挟んで、その前後が描かれている。
 
ウディ•ガスリーに憧れてN.Y.にやって来た大学生のディランが、グリニッジビレッジで歌い始めた頃、同じ店に、詩の朗読をやるインディーズのアーティストがたくさんいたんだって。ドリアン助川みたいな感じなのかな。
 
ディランも自分で曲を作るようになって、歌うための場所と資金が必要になった。当時の音楽業界には、今の日本みたいに権威のあるアーティストの曲じゃなくても、営業をかけてくれる人がいたんだって。
 
「風に吹かれて」はそうやって広まったって言っていたらしいよ。
 
だから、1963年、キング牧師がリンカーンセンターへ何万人という人を集めて、ケネディが暗殺された頃、ディランはたったの21歳だった。社会体制に噛み付くディランの歌詞は「政治的意識を支える歌」に育っていたんだけど、恋人のフォーク歌手とは違って、彼は市民運動家ではなかった。
 
そうして、周囲が期待するプロテストソングのレッテルに噛み付くようになった。
 
ディランは政治的でない歌詞を模索して、自分のファンに、フォークじゃない演奏を聞かせようとした。そうして、生まれてきた曲が「ライク・ア・ローリング・ストーンズ」。
 
歌詞の一部がタイトルになってるんだけど、それは「帰る場所を持たない」という意味で
 
エレキギターをさげて、ヨーロッパツアーに乗り込んだディランは「風に吹かれて」の彼が出てくるもんだと思い込んでいたファンは赤裸々なブーイングを浴びせる。ディランは即興が上手いひとだから、目の前に届ける相手が必要で、歌手としてのスタートした頃とスタイルは変わらない。
 
映画のラストは、バイク事故で死にそうになった後の1966年。
 
小雨の中の長い行列。ステージに出れば「裏切り者のユダ」のヤジ。客席にロックの爆音を返すディラン。「どんな気分だい?」と自分に問いかけるように、映画は終わる。
 
たいへんなのね。
 
 
こんなにもやもやしてしまう理由は、なぜ、村上春樹じゃなくて、ディランなのか、答えが出ないこともあるが、それだけじゃなくて、自分のテーマを模索しているからだ。拙作「この坂道」はラブストーリーだが、格差に噛み付く話でもあった。次は、家族を否定し、その次は、絆を否定し。根性なしなのに。ボブ・ディランのように、日々の体験から湧き出てくるものを待っているのでした。
 
 
映画はもやもやするほど、興味深かった。
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初稽古

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今日は成人式。1歳ぐらいの子を抱っこしたお父さんが亀甲柄の袴と青い羽織を着て歩いていた。昨日はつぼ合わせ。唄と三味線にお囃子を合わせて弾く。

自分の出来は置いといて、驚いたのは小鼓。やっていたのは「新曲浦島」というたいへん手の混んだ曲で、普段ひっそりと口数の少ない「秘書タイプ」のお囃子の先生が、小鼓を構えるご自分の弟子さんを凝視していた。

演奏の合間に細かく指導なさるんだけど、黙っている間も弟子である別な人間の身体から、鼓の音を吸い出しでもしそうな気持ちの入れようで

無言の肢体に「気迫」がブワっと溢れ出し、私は密かに感動してしまった。

今まで、わざと気づかないふりをしてきたけど、2017年はそういう人の気配を大事に、反応していこう。

「元禄花見踊り」月に兎は、和田酒盛りの黒い盃。闇でも嬉し。

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正月だ。一年ぶりの着付けをして、深大寺まで初詣に出かける。雲ひとつない快晴の空の下、冬の日差しは暖かく、山門の左右に伸びた露天をカップルや家族連れが覗いて歩いている。鬼太郎茶屋も人気だった。

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読経の声が聞きつけて、本堂の奥にある元山大師堂へ。護摩供養をやってもらうことにする。

仮説テントの下で3枚複写の申し込み用紙に名前を書き入れて、詰所に持って行く。待ち合わせの時間を気にして、郵送受け取りで申し込む。送料は二百円。切手が貼られて、郵便ポストに投函されるのかしらと奇妙。

詰所の受付のお姉さんは、お札に書く名前を一文字一文字確認してくれる。「ミヤはウ冠にロを書いて、ノを書いて、ロを書く普通の宮の字で良いですね?」と顔いっぱいの笑顔で尋ね、立派な字で、名前の横の「宮」と書く。どう見ても、私の字より上手い。その後は「次も普通の字ですね」と省略しつつ、最後に「どの字も普通の楷書でお書きしますね」とまとめた。

お姉さんは普通の字が好きらしい。

それなら、普通じゃない漢字を使っているひとには、なんて尋ねるのだろうと、年賀状の宛名で、齋の字が書けなかったことを思い出す。この字は、説明するの無理。

家の中がたいへんな時期なので、お札は家内安全。三千円。並ばなくても本堂に入れると聞いて、境内をぶらつく。のんびりし過ぎて、中に入ったら柱の外、ご本尊の次の間にしか座れなかった。

護摩供養のお坊さんが全部で12人出てきて、護摩札の係はオレンジの着物に黄緑色の袈裟を着た若手のふたり。引き戸を開け閉めしながら、盆に並べたお札を運んでくる。炎で清めて、引き戸の外に運び出す。また、運んでくる。手際がいい。

読経が終わり靴を履いて外にでると、目の前の受け取り所のカウンターにお札が並んでいた。深大寺は受付は丁寧で、全てが簡単なのである。

境内の人出は多く、破魔矢を求める列が絶えなかった。

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深大寺蕎麦も食べた。

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玉乃屋
042-485-0303


仕事納め

テーマ:
年の瀬、大江戸線に乗って山利喜という店に行き、炙り牡蠣と生麩の揚げ出しをいただく。厨房に面したカウンターに通され、丸刈りの板さんが、オーブンに入れる耐熱皿にドロドロの煮込みを盛りつけたり、串に刺した焼きトンを炙ったりするのが見えた。

板さんの反対側にあるビールサーバーの前には柳楽優弥が丸顔になった感じのアルバイトくんがいた。厨房越しに目を合わせて彼を呼ぶと、折悪く、板さんが盛り合わせの刺身がお品書きと別な種類の魚になったと、申し送りを始める。

年内最後の営業日なのだ。

柳楽優弥・似のバイトくんは刺身の説明が終わらないうちに身体をはすにして、カウンターまでオーダーをとりにきてくれた。可愛らしい子だった。

背中側のテーブルには若いサラリーマンのグループがいて、男ばかりで結婚について喋っている。「結婚するまでは、尽くす派だったんだけど」と女子みたいな口調。

どうでもいいような結婚話がだらだら続くので、こっそり「サラリーマンって満員電車はキツイけど、会社をでれば仕事しなくていいんだもん。フリーより、楽だよね」「両方を経験して、そう思う」とチャチャをいれたのが、相手に聞こえてしまったらしく、去り際に「五月蝿くてすみませんね」と謝ってきた。

集団はスーツも着なれないような20代の若者でキョトンとしていた。カウンターに近い席でひとりで喋っていたのが彼らの上司で、飲みの最後に「来年もチームワーク良く頑張ろう」としっかりまとめたのを聞いて、旦那さんは「言いたいのは今の一言で、結婚の話はつなぎなんだよ」と教えてくれた。


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冬のぶどう畑

テーマ:

勝沼に行こうとして山手トンネルを通って中央道に乗るが、軽自動車の火災が原因で高速を走れず、相模湖I.C.まで国道20号をのろのろ進む。高尾山を超えたあたりで、突然、視界が開けて、真っ白な富士山が目の前にどーん。旦那さん「写真を撮れ」と私を煽るが、うまく収まらない。がっかりしていると、湖畔にカフェを発見。

テキサスにでもありそうなCAFA. COFFEの看板に興味をそそられて広い駐車場の中へとハンドルを切る。

店はエチオピアを支援するNPOの経営で、広いスペースにイームズ風のカラフルなチェアと暖炉を配してある。まったりして「もう、勝沼なんか行かなくてもいいや」と眼下の湖面を眺める。船艇をピンク色に塗った競技用のボートが湖面に筋を残しながら、横切っていく。スワン型の船は遊覧船だろうか。

 

そうもいかずに再び高速道路へ。冬のぶどう畑は静かだ。

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温泉の女湯も私と地元の女性客ひとりだけで、手前の湯船に入った私が震え上がって奥の湯船に飛び込むと「ここは沸かし湯なの。そっちはぬるいのよ」と教えてくれた。ぬるぬるしたお湯で、冬の乾燥肌には効果てきめん。

 

温泉の帰りに山梨市駅を通過したので、駅から西沢渓谷までの距離を確かめに車を走らせる。いのぶたの店のあたりで、旦那さんが「静か過ぎて、不気味だ」と愚痴り始める。すれ違う車もなく、温泉を目指して車道を歩くハイカーひと組見かけただけで、あとは冬枯れの山、山、山。

Uターンして、帰ることにした。帰り道、塩山フルーツラインで路肩に車を止めて念願の富士山写真。近くに、勝沼の夜景スポットもあるらしい。

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正徳院温泉 初花

山梨県山梨市正徳寺1093-1

 

 

 

誰そ彼

テーマ:
2016年もあと5日。今年は雲間に流れ星と思いきや、飛行機だったという経験をした(笑)。話題の『きみの名は。』を観に行った。なるほど。いろんな要素が詰め込まれていて、ハリウッド映画みたいなアニメだった。年明けの1/7から、『湯を沸かすほどの熱い愛』や『デイストラクション・ベイビー』『葛城事件』も観てみようっと。


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師走。

テーマ:
 
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映画祭で審査員をやって下さった指田文雄さんの出版記念トークイベントに参加した。戦時中の映画界と航空教育なるものの繋がりに、びっくり。秘密の歴史は指田さんの著書にて。自宅に戻ったら、東京裁判のドラマを放送していて、複雑な気持ちになった。
 

 
先週の土曜日はシナリオ・センター時代からお世話になっている金塚悦子さんと「この坂道」に出演して下さった大倉順憲さんの作・演出による俳優、深水三章さんのリーディングの会。

濃くて、凝っていて、おもしろかった。

 
前半は東京キッドブラザースの演出家、東由多加氏に再会する話で、セントラルパークにあるメリーゴーランドがモチーフになっている。静かな語り口で、聞いているひとも真剣だった。記念イベントとしての重みを感じる作品に仕上がっていた。
 
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そして「ボク東奇譚」は彼自身を主役に、ロックミュージカルとの出会いと別れの経緯が語られる。既に天寿を遂げた方なわけだが「ボク東奇譚」では小林由紀子さんの「講談」だけが第三者の目線で、あとは当時の録音と現代の台詞とを織り交ぜた、主人公のひとり語りのスタイル。引用なのか、フィクションなのか、どれが誰の言葉なのか奇妙な気分に浸る。

 

結末に「終わることで、始まる」というニュアンスの台詞があったんだけど、生身の人間に代わって台詞や歌が遠慮無くひとりあるきを始めたのかもしれない。そういえば、幼少期に寂しい思いをしたから「舞台の上で愛されようとした」という台詞があったっけ•••


吉田類でやってたお店で、打ち上げ。充実した日だった。

秋をあじわう その2

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女子旅に参加できなかったので、小田原の寺まで紅葉狩りに行ったのは11月の最後の日曜日。もう、散ってしまったかしら。
 
大井松田インターで首都高速を降る。途中のコンビニへコーヒーを買いに寄る。南足柄はアスファルトが黒々と濡れ、丹沢の山にはぶ厚い雲。工場らしき煙突に雲と同じ色の煙が立ち上るさまが見える。
 
三門の横の道路から、一番上の駐車場まで行く。雪かきしたあとの雪が溶けずに残っている。慧春尼堂からくだる道を逆走してお堂を覗きに行く。思い直して、本堂のある境内へ。瑠璃門下にある紅葉の写真を撮りに行く。
 
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紅色の紅葉をカメラマニアが夢中で撮影中。

 

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大天狗・小天狗を祀った御真殿を見学して、お約束の奥の院へ。鬱蒼とした杉林を貫く石段が新しくなって、350段が短く感じる。

 

 

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帰りは慧春谷をくだって、再び慧春堂へ。尼僧として生きた慧春尼さまに背中を押される思いでお堂を後にしたが、急な坂道せいだろう。

 

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神奈川県南足柄市大雄町1157
大雄山最乗寺
小田原駅から大雄山駅(大雄山線で21分)