何てこった。まだショックが続いている。


院に入ったときに買ったカジュアルな革靴があって、

そればかり気に入って履いているので底がすり切れてきた。

UKの製品でちょっと特殊な底なので、修理のために

それを買ったデパートへ行ったのだ。

その場では直してもらえないことはわかっていたので、

あれこれ新しい靴を買おうと試していて、ふっと、カバンから意識が

離れた。そのスキに、やられた。持って行かれた。

カバンごと、そっくり、置き引きにあってしまった。


にわかには信じられない。

だって、その売り場は品のいいご婦人ばかり、10数人ぐらい。

私が何かおかしくなっただろうか。

いや、でも、私のほとんど動きのない行動ルートを何度も見てまわり、

やっぱり、ない。ない。ない。ない。

どどどどどどどどどどどどどどどどどうしよう。

防災センターへ行って下さい、と店員にいわれても、

信じられない。誰?どこ?まだそばにいるはず。

だってわずか3分ぐらいしかたってないんだもの。

でも、わからない。私のカバンはない。


オーーーーー、マイガー。

防災センターで、各種クレジットを停止させている間も、

頭がぐるぐる、倒れそう。

だって、カバンの中には、メモリーが入っていた。

修論・・・・修論のための取材メモ・・・・・・・・・・・・・・。

パソコンも壊れることがあるから、ネット上のヤフーのブリーフケース

にしようか、バックアップとらないとまずいな、と考えていた矢先だった。

かばんごと、盗られるなんて想定外だ。


警察で被害届を出す間も、時にうなだれ、涙し、大混乱。

カバンは時価いくら?財布は?

値段なんてわからない。安いもんだし。

いくらだったら、売りますか?と聞かれ、

じゃあ、カバンは古いけどCOACHだし、2000円、財布は100円。

欲しい人にはあげますよ。それより、メモリー。

いくらですか?と聞かれ、100万円渡すから、返して欲しい。

いや、メモリーはいくら?だから、100万あっても売らないですって。

と意味不明なやりとりを繰り返し、結局、時価500円と書かれる。

メモリーには、母にもらった十字架ストラップもついている。

値段じゃないのよ。大変なのよ。どうしたもんだ。


携帯もなくなった。

日曜日に福山で講演があるのでその前に岡山の長島愛生園に

立ち寄ることにしていて、諸々関係先の連絡先も全部入っていた。

そうそう、新幹線のチケットも。

いたい。いたすぎる。

その他、修論で引用したいと思っていた貴重な冊子や、林力さんの本や・・・。

オーマイガー。オー、マイジーザス。


警察で、地下鉄運賃160円をかりるために、あれこれ書いて、

拇印を押して、泣きながら、地下鉄に乗って帰った。

身ぐるみ剥がされ、てぶらで。

いつまでも、現実感がない。どうしたんだろう。私。何があったの?

交通事故に突然あって、バタッと人生を終わらされることも

大いにあるんだから、持ち物がなくなるなんて、大したことではない。

フォローできないことはない。原稿は一度書いたんだ。

だから、思い出せばいいのだ。

大事なインタビューは幸いICレコーダーに残っている。

生きているんだから、感謝すべきなんだ、なんて言い聞かせつつも、

ショック状態は続いている。


日本は、それほど、治安が悪化している。

お金がなくて困っている人がいる。そういうことなのかな。

私ゃ現金なんてほとんど持ち歩かない。

盗ったって、意味ない。財布の中身みて、がっかりして、

トイレなんかに置き去りにしてくれるといいんだけど。

お掃除の人が拾って届けてくれている、そういうかすかな望み・・・

どうだろうか。あーーー。このやり場のない怒りをどうすりゃいい。