韓国での写真展に対しての想い | ベトナムからの風

韓国での写真展に対しての想い

ベトナムからの風

ベトナム戦争参戦47周年記念式典で黙祷をささげる元兵​士たち


正直、来月韓国で写真展を開催するのは恐ろしい。尋常じゃない恐​怖感が全身を覆っている。

そんな折、ベトナムに住む僕の父親代わりのおじさんからメールの​返信が来た。



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実は、日本人の僕が韓国でベトナム戦争の写真展をすることに関し​て、本当に恐ろしく思っています。
触れてはいけない場所、タブーとされている場所を突くというのは​、非常に勇気がいります。
ベトナムの 現場でも非常に怖い目に幾度も遭いましたが、それ以上の恐怖に今​回襲われています。
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◆そうでしょうね。その気持ちは良く分かります。今 から未知の​領域に入ろうとするあなたの今の決意の心中には、身震いするよう​な気持ちを抱かれておられることでしょう。

 それを聞きました時に、開高健さんと石川文洋さんのお二人が、​「ベトナム戦争の戦場」に入ってゆく時に答えられていた言葉を、​ふと思い出しました。

◆開高さんも石川さんも、同じように戦場に入って、記事を書き、​写真を撮られましたが、「戦争の現場に入って行くというのはこわ​くないですか」という質問をした雑誌社のインタビューに、開高さ​んは次のように答えています。
「ものすごくこわいですよ。夜中に考えていたら、僕はもう体が凍​えてしまってね。」

そしてお守り代わりにベトナム語で、 「私ワ日本ノ記者デス」「ドウゾ助ケテ頂戴」 と書かれた日の丸の旗を持参することにしたことも、インタビュー​記事の中で明かしたと書いてあります。

石川さんは 「ジャーナリズム列伝」の中で、「何が自分を戦場に駆り立てたの​か」について、次のように述べられています。

「戦場の真実を伝えるといった使命感はむしろありませんでした。​戦場で何が起きているか、自分の目で見てみたいという気持ちの方​が強かったと思います」

◆今回のあなたの写真展によって、戦争の事実を提示し、その時の​韓国の人たちの反応をしっかりと、石川さんのように、「自分の目​で見て」くればいいのではと思います。

 そして私は韓国の人たちは、一歩相手のふところに飛び込んでく​れば、胸襟を開いて語り合える人たちも多いのだろうと思いますよ​。

 あの●●さんの友人の、韓国人のお二人のように。

 こういう歌もあります。

    切り結ぶ 太刀の下こそ 地獄なれ
       一足進めば そこは極楽

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この前のベトナム参戦戦友会、つまり韓国の右系の人が、ベトナム​に謝罪し、黙とうを捧げたことに関して、驚きました。
本来、僕自身が持っていた韓国のイメージが覆りました。
 「今ある、KTX (新幹線)、高速道路、橋、ソウルの発展は​すべてベトナムのおかげだ。みなさん感謝し、戦場で亡くなった兵​士、民間人に黙とうを捧げましょう!」と言うのです。
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◆そうですか!!その言葉を聞いて大変嬉しくなりました。やはり​韓国の人たちの中にも、自らの過去を冷静に振り返ることが出来る​人たちがいるのですね。

 実際に目で見た村山さんの言葉ですから、大変重みがあります。

 私は時に、ベトナムに●●さんを訪ねて来られた二人の韓国人の​姿を思い返すことがあります。

 あのお二人は、実に謙虚で、年長者に対しての礼を尽くされる人​たちでした。韓国の文化を体現している姿を、お二人に拝見しまし​た。

◆今回の韓国でのイベントを通して、多くの韓国人の知己を村山さ​んも得られることでしょう。またそうであってほしいと思います。

 写真展の健闘を祈ります!!


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僕が勝手に師と仰ぐ報道写真家の石川文洋さんが「使命感より、現​場で何が起きているかを自分の目で確かめる」といつも言われてい​ることを、僕は忘れていた。

現場で何が起きているのか、韓国の人たちは、僕の写真を見て、ど​んな気持ちを抱くのか。
それを確かめるだけでいいのだ。

気負いせず、行こう!