渋谷編
と、いうわけで渋谷である。
おじさんは世田谷育ちの田園都市線の人で、しかも一番最後に勤めていた会社も表参道という「おまえは半径5㎞以内の土地から出たら死ぬ呪いをかけられた人なのか」とわかる人なら笑ってくれるレベルでホームタウンというべき街である。
※表参道は渋谷の隣の駅で、世田谷区から田園都市線で渋谷へ行き、乗り換えなしで直通できます。
もうさすがにウン十年渋谷文化で住んでると地下街を通ってどこに出るなんてのはもうお手の物。というか渋谷の地下街は東京・新宿に比べれば屁みたいなもん。と思ってたら、土地デベロッパーとしては最もセンスのない東急がやらかして、再開発で改悪したので、急にわからなくなった。今はもう慣れた。
その日は大塚飲みの翌日で二日酔いでやや重い体を感じながら、大塚編をまとめていたところ、20年来の付き合い仲間のライングループで、「今日渋谷で飲める人!」と友人Iからのメッセージが飛んできた。自分というおっさんも含めて友人のおっさん達は時々おっさん達だけで飽きもせず20年間定期的に時々集まっているのだ。もうそれはエモイワレヌおっさんだらけである。エモ・イワレヌとわけるとロシアっぽいおっさんである。前衛芸術家とか写真家ぽい。なんだそれ。なんだよそれ。
今日はさすがに二日酔い気味だからなぁと思ったんだけど、無職が20年来の仲間から誘われて断れば、「え、お前このグループの中で唯一、無職なのになんでこれないの?何やってるの?無職じゃん?」とか思われるのも癪なので(謎)、こういう時は直ちに出席の意思を表示するのが、正しい無職の友人であると思うのだ(大謎)
ちなみに同グループの中の友人Lは無職の友人が多いと会社で認識されているが、彼が僕を
「まともなほうの無職」
と、話の中で紹介したらしいので、やはり清く正しい無職の友人として成り立っているのではないかと思う(謎威張り
前置きが長くなったが、渋谷である(2回目
渋谷は個人的には身近すぎるからか「飲食不毛地帯」と思ってしまっている。いや、激戦区ではあるんだが、「どこかいいところない?」とあんまり親しくない人に聞かれると面と向かってオススメの店はパッと出せない。
その理由は色々と説明するのは難しいのだが、ざっくりいうと、渋谷は地代・賃料ゆえの「高い」と人が多くて「入れない」、あと強いて言うなら良い店だけど「遠い」の不満がどこにでも付きまとう。
単純に値段が高い、コストパフォーマンスが低くて割高に感じる、人気過ぎてずっと並んでる、店が小さいとか客を捌けなくて回転が悪いから入れない、渋谷駅から15分も歩いてしんどい、離れてるからハシゴしにくい。等など。
そういう何らかの欠点を必ず抱えるのが渋谷の飲食であり、自分が一緒に行くのであればそんな欠点も自分がとりなす事で、そこそこ満足してもらえると思うが、その人達だけで行ってしまうと「なんかあそこダメだったね」と失望させてしまうんじゃないかと考えすぎてしまう。だから、店が出せない。
かといって、クソ安くて人がいなくて取りあえず座れるみたいな店は紹介したくない。
かつては伝説の居酒屋「日本海」という渋谷民に愛されまくった店があってそれをよくオススメしてたのだが、大分前に閉店した。
もうほんとそういう不満がなくて紹介できるのはあとは立ち食い蕎麦屋ぐらい(ゆでたろう万歳!
ただ、おっさん達がおっさん達同士で行くのであれば、何ら問題ない。例えば
・薄皮餃子専門店 渋谷餃子
最近の渋飲基地。一皿六個¥290のなかなか美味しい餃子で、これをお得な大皿注文で30個とか40個と頼んで、焼きあがる前にザーサイなどをつまむのだ。そしてここの素晴らしいところは一人頭¥2000弱で収めた後、下の階の「天下一品」でこってりラーメンを食って帰るという黄金ローテがあるところだ!!
ただし、いつも最低30分ぐらいは並びます。
・ESOLA Shibuya
楽天カフェの上。ここは¥1990で時間無制限ワイン飲み放題!さすがに高級ワインは入ってなくて、イタリア、スペイン、チリものが多めだけど、入り口入ったらすぐ「ワインのビュッフェカウンター」が置かれていて何種類ものワインがぶっ刺さってる。全然飲めるワインが多くて、覚えて帰って酒屋で買っても大してしないから、そういうワインを探すのにもってこい。
ただし、料理が出てくるのがめっちゃ遅い。本当に出てこない。「俺が厨房手伝おう!」と言い出したぐらい。
・鳥竹
渋谷の老舗焼き鳥屋。井の頭線の奇麗なビル、マークシティを燻すかのごとく毎日煙を上げて焼き鳥を焼いてます!種類豊富で、初めての人はえ?と思う大ぶりの肉が刺さっている「大串」スタイルの店で、ハフハフいいながらほうばってビールで流し込むのは格別。最後に焼き鳥丼か親子丼をシェアして食って帰るのがまたいいんです。
ただし、割といつも満席。そして、大串とはいえ、価格は高め(1本¥300~)普通に飲み食いしたなぁ~美味かったなぁ~え?意外と会計いってるなぁ!となりがち。
・麗郷
渋谷の老舗本格台湾料理屋。自家製の「腸詰」が絶品で、若い頃ここで紹興酒をぐいぐい飲まされてつぶされた(それは関係ない)。本格的な台湾料理が楽しめるので結構オススメであったりする。
ただし、基本激安中華屋ではないし、そういう本格メニューは¥1000以上するので、4人ぐらいでいかないと色々食べられないし、お財布にも優しくない。
他にも年中無休24時間営業「山家(やまが、と読みます)」、ありえないくらい大盛刺身の「魚がし 福ちゃん」、おそらく鮮度と味では渋谷一番「四番サード魚真」などがあり、どこも欠点はある。松涛・神泉地区に触れてないのは高くて良い店は多いが遠くてわかりにくいし、結構尖ってるところがあるし、高くて良いなんてそれは普通。本当に渋谷をススメるのは難しい。
そこで、今回の渋谷である(3回目
そういえば渋谷で立飲みってしたことないな?と。
激安居酒屋はあるにしても、それはキャッチのお兄さんがバカな客を捕まえて、「ここはどこの工事現場の飯場だ?」みたいなスチールテーブルとスチールイスの内装の店に放り込んで、「コースを頼んでくれれば料理は一人¥1500ですけど、それ以外だったら料理を一人一品とワンドリンク制デース」と抑揚のない声で店員が注文を催促し、出てくる料理は確かに高くないけど、お前これ全部レンチンじゃねーのか!というレベルのものを苦虫と一緒に噛み潰して発泡酒で流し込んで早々に退出するようなところは入ったが(実話)、あ、バカな客は俺達だった。
他の地では散々立飲みをしておいて、なぜホームタウンではしなかったのか、そうか、この企画の流れで、渋谷をやるべきという運命だ!と閃いた。
一軒目
富士屋本店
入店時間19:50頃。
渋谷の立ち飲み大聖地と呼ばれる、のん兵衛なら誰もが知ってる超超有名店。なんと創業130年超。同じくのん兵衛なら誰もが知ってる「酒場詩人」の吉田類大先生も訪問済み。場所も存在も存じ上げていたが、なぜか足が向かなかったのは世界の七不思議。
おっさんともなると、ハチ公だモヤイ像だなどという所では待ち合わせせず、「道玄坂のみずほ銀行前」で仕事帰りの友人Iと落ち合い、結局来れる面子はコレだけなので、二人でそのまま246号を超えて店の前へ。
「え、渋谷にこんなのあったの」
と、同い年で同じ学科で同じ専攻からの付き合いのIもびっくりする佇まい。すれ違えば半身になるぐらいの狭さの階段を降りて地下一階へ。
すっげー混んでるの。
一周百尺(約30m)とよばれるぐるっと回ったカウンター沿いから溢れる人人人。「おっさんの佃煮」とよく言われる光景だが、よく見ると若い人も多くてそこまでおっさん度は高くない。
でも、大丈夫、こういう立ち飲みは混んでても、店員に人数いえば、常連達にちょっとづつ寄らせてスペースを作る、それが立ち飲みのいい所。
目が合ったおばちゃんに「二人」とピースマークを作って指し示すと、おばちゃん、ぐるっとカウンター見回して
「なぁい!」
寄せねーのかよ!
ちょっとの隙間を指差して「ここか、あそこ!」っていってぷいっとどっかへいく。そこ一人すらも入れねーじゃん……
と思ったら、すっと奥が空いたので、人波掻き分けて、ざざざっと移動する。
左側が僕で、この右の手がIです。
さらに左の皿と瓶ビールは別の人です。
やっとカウンターにとりついて、現金をカウンターにだし、とりあえずドリンクだけ注文するべと、「生二つ!」と店員に呼びかけるけど、
やかましくて全然聞こえてない。
ワイワイガヤガヤじゃない。もう線路のすぐ横にいるんじゃないかってレベル。
あ、こいつなんかいってんなと気がついた若い帽子の兄ちゃん店員が近づいてきたので「生二つ!!」と叫び、注文をつける。
そして、生中二つが中々出てこない。
「もしかして、ここは生じゃなくて、瓶だったんじゃないか?」
とIが他の客の手元を顎でしゃくって示す。
確かに、ビール客はぱっと見、全員瓶ビールだった。そういうことか!?そういうことかもしれない!!
仕方ないのでビールを待つ間に、つまみを考え
お品書きがまったく見えない
角度の悪いところに陣取ったため、お品書きの短冊が全然見えない。手元にメニュー表なんかもない。あいたー、これは勘か?安酒場といえば「ポテサラ」なので、それを頼むとして、ここの名物「ハムキャベツ」か?そこへ「ハムかつも食おう」とIが言うので、それにしよう。
やっとのことで生二つ持ってきてもらい、ついでにつまみの注文をする。
「ポテサラ!とぉ!(聞こえるように叫んでる」
「あー、ポテサラ今やってないんすよ(舌打ち」
大塚に続いてまた五郎状態かョ!!
しかも、舌打ちかよぉ!
「じゃぁハムキャベとぉ!ハムかつ!!それで!!」
しばらくして名物「ハムキャベツ」登場。
千切りキャベツにマヨをバーッとかけて、その上にハムを並べただけのもの。¥350
ハムは結構大きめ、厚めに切られていて、わりと食べ応えがある。
ハム自体の味が思っていたより美味しかった。
ハムキャベをやって、ちょっとほっとした瞬間、思ってしまったのは、
あ、あかんわ、ココ
ここは口開け(開店直後)に来るべき店だったんだと。
それ以外に来るのは、何回も来た経験があり、気に入った人だけが、この混んでいる中で自分勝手に飲んで楽しくなる店だったんだなと気がついた。
渋谷で立ち飲みでディープな雰囲気を持つので貴重だけど、安いわけじゃない、特別旨いわけじゃない、居心地が格別いいわけじゃない、「富士屋本店で飲んでます」ということに酔える人達の店だったんだなと。
周りをずらっと見回すと、他の立ち飲みでは見ないぐらい皆大声を張り上げて力入れて何か叫んでる。立ち飲みだから、サービスなんて期待しないけど、店員も「忙しくて立ちまわるのが精一杯なんだから、悪い?」みたいな形になってしまっていて、全然目端が利いてない。殺伐としてるなぁと全然酔いが回らなかった。
「ハムかつ食ったら、次いくか」
「そうだな」
と示し合わせて、ハムかつ(3個で)¥200をムシャムシャ平らげ
ひげのおっちゃんに「ごちそうさま!!」と叫んでカウンターを離れるも全然気がつかない。
歩き出して店を出るところでもう一度「ごちそうさま!!」と叫ぶと、はっと気がつき、
「あ、こちら空いたから、こっちへ!!」と待ち客を通そうとする。一見には会釈も目挨拶もなしかぁと思いつつ、階段を上ったのでした。
でも正直、人生一回来ればまぁ、満足かなってとこだった。あまりにも人が来過ぎてもうなんか魅力が薄れてしまったんだろうなぁ。ただ、口開けではあればまた違う顔を見せてくれたのかもしれない。飲み屋っていうのは時間によって顔が違うところがある。そう思ったので、大塚編にも、わざわざ来店時間を追記したのだった。
お代はしめて二人で¥1450?ここはIが払ってくれた。
ちなみに頼まなかったけど、ここのホッピーは¥800。なんでそんな高いかって言うと、「中」である焼酎が、ミニボトル360ml一本でボンと出されるから。
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二軒目、立吉 渋谷本店
来店時間、20:10頃
いつもの撮り忘れたときのグーグル先生。
地上に戻って、よしどうしようかと思ったら、ここは「餃子」だろうと。
渋谷餃子もせんべろっちゃーせんべろだけど、ここは新しいところへ!
というより、毎回人が一杯で入れなくて、涙を呑んでいる「立吉」が近いのでそこへ行くことにした。立吉は画像を見ればわかるけど、カフェっぽいかもしれないようなそれっぽい佇まいの、「餃子とワイン」の店。言うなれば「餃子バル」。いつも餃子で飲んでるおっさん達なので、楽しみに店に向かった
が、今回も満席で入れず!!
いつになったらここは入れるんでしょうか。
すごすごと次へ向かうのでした。
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三軒目、串かつ でんがな
来店時間、20:15頃
グーグルry
さぁ、こうなったらどうっすかなぁ、「幸」か、「なぎ」か、「グリフォン」?と、取りあえず歩道橋を渡ったところで見えた、この店。
「串かつ、食ってく?」とIを呼びかけ、盛況で店頭にも客が溢れてる店へ。
「二人なんすけど」
「ちょっとお待ちくださいねー!」
といってカウンターの場所の客を寄せてスペースを作ってくれた。これだよ、これだよ!
Iが黒ホッピーを頼んだので同じくする。
メヌー。
ポテトサラダがあるじゃないか。
ここで仇を取らんでなんとする。
どんだけ無かったのが悔しかったんだよwww
キャベツが入ったやつと、映ってはないけどソースが入った深汲みバット二つ渡され、ホッピーが届く。キャベツはおかわり無料です!!
「ポテサラと、どて焼き!」
どて焼きはカウンターで煮込まれてるので、さっと出てくる。トッピングは葱か生姜かを選べたので葱を選択。かなり甘い味付けだったので、葱は不正解だったかもしれない。ぴりっとする生姜が正解だったかもしれない!
ポテサラ。ここは芋は輪切りに、胸肉をゆでて短冊に刻んだものが混ぜられてる模様。かなりマヨは多めで、酸味も強め。これはこれで中々ホッピーにあって良い。
やっと落ち着ける場所になったためか、二人の話が弾む。Iは個人事業主だが、つまり社長なので、二人で話してると大体「どんな事業を起こせるか」の話になる。独特というにはマイナーすぎる視点を持つIのプランは、他のメンバーが聞いても「?」と扱われるが、マイナー志向の自分にはとてもよく分かる狙い目で笑ってしまう。今回も、実際に事業をやる可能性があるので詳細は記せないが、なるほどなぁ!と思うところ狙っていて、非常に面白かった。
串かつ。
紅生姜、紅生姜、牛串、牛串
ハムかつ、ハムかつ、しいたけ
の並び。
当然、しいたけは俺の分じゃない。
「店員さんが、皆若いわ」
と、Iが急に言い出す。
見ると、胸に名札がついていて、あだ名?と年齢が書いている。皆(20)とか、(21)とかだ。
「そうですなぁ!僕ら、今年9ですからね!」
「ほんとだよ、サンキューじゃねえよ
で、いつ本出すの?」
「は!?」
どうも全国フラフラと競馬場を回っているのは本でも出すつもりなのかと思ってたとのこと。
「いやいやいや、普通に遊んでるだけですよ」
「ほーう、
で、いつ本出すの?」
ブラジャナイヨ!!
(分かる人には分かるネタ
そういえば学生時代はお互い文系だったから「文章を書きたい欲」が強かった。彼は「ライトノベル作家になりたい」でいくつかの賞に応募してたし、自分は「エッセイとか駄文を書き散らしたい」タイプでサークル報をつくって遊んでいたっけ。また、二人でフジロックレビューサイトを作ったり、コラム同人誌を作ったりしたなぁと思い出した。
出版社に勤めたかった彼がSEになり、別に就職活動もしなかった自分が出版・広告代理店に進むとは何の因果なのか。
ちなみに「がちゃぴん(20)」という名札のお姉さんは確かに目がクリクリしてるんだけど、俺から見たら美人だったから、がちゃぴんちゃんを見たい人は近いうちに行った方がいい。
Iがホッピーの中をガッパンガッパン飲んで注文する。こっちは昨日飲み疲れたので、最初の中だけであとはひたすら外で薄めながら飲んでいた。
「あ、これやるわ。今日常駐先の部長が配ってた」
といって昔なつかしのフェリクスガムを渡される。
「おいおいおい、いいのかい、俺にこういうの渡しちゃって。
当てちゃうよ?」
本当に当てました。
「おまえ、本当にいつも引き強いな!!」
いやぁ~、こういうのは強いんすわ。人生の引きは弱いけど。
コーン、たこ、きす。
注文ごとにバッター液をつけ、パン粉をつけて、揚げて出す。
その分ちょっと時間はかかるけど、カラッと揚がっていて、オーソドックスだけど文句の無い串かつだった。ごちそうさまでした!
Iが「中」を四回ぐらいおかわりして、御代はしめて二人で¥3400ぐらい。
「最後に天一食って帰るか!」
こってりは来たらすぐ、かき混ぜるべーし!
ということでいつものセンター街店で、こってり並を食って帰ったのでした。
以上、渋谷編レポっす。