《これまでの回 1
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謎の金縛りに遭った動揺も覚めないうちに、蓮の携帯が鳴った。
(※ちなみに、尚君にはまだ怨キョが憑りついています)←憎しみ加算
マネージャーからかと手に取れば、発信者通知には先ほど逃げられたばかりの少女の名前が表示されている。
(※興味を持つ範囲が深いが狭い彼は、携帯の個別着信音設定など関心を持つことすらありません)
どう切り出すかは決めかねていたものの電話を取る。
「最上さん……」
携帯から響いてきたのは前のめりな声。
「最上です!さっきはすみませんでした!
恐ろしい病気になりかけているので、慣習は今日で終わりにしてください!
(↑あくまで自称なりかけてる)
冗談で言われても、取り返しのつかない重症になりそうなんです!そんな迷惑をかけないためにも会えません!会いません!完治するまで放っておいてください!」←熱烈な告白…?
そんな言葉が、彼に初めてもたらされた意中の少女からの愛の言葉だった。
(↑そもそもが、あれだけストレートに愛の告白をしても、まだ冗談だとか思われてしまっています)
蓮は、言葉を選ぶことも忘れて、彼女に負けない勢いで叫んだ。
「迷惑だなんて思うわけないだろ 俺も君のことが好きなんだから! もう、俺は最上さんじゃないとだめなんだ!!」←熱烈な告白!
しかし、すでに携帯からは通話終了を示す音しか聞こえてこなかった。
切る前の挨拶すら無く通話を切断。
(※迷惑に思わないの途中で切っちゃって、肝心の告白部分を聴いてすらいません)
先輩後輩などの礼儀を重んじる普段の少女からは考えられない行動である。
(↑礼儀を知らない天然キャラで売っているアイドルでもやらないような無礼)
言うまでもなく、キョーコはそれだけ必死だ。←他人からすれば明らかに間違った努力の方面に
蓮は急いで電話をかけ返した。
それでも、留守番電話に繋がるだけ。それでも、諦めきれずに6回ほどかけ直し続けたところで、社が迎えに来て時間切れになった。
(※もちろん、直接出向く前にまずは電話したのですが、蓮さんがキョーコさんに繋がるはずの番号を連打中だったため繋がりませんでした)
まず、彼は、迎えに行った担当俳優と一緒に、何もない場所でなぜかもがき叫ぶトラブルメーカーがいるのに顔色を変えた。
(↑まだまだ、怨キョに憑りつかれています)
そして、急いで彼らの元へ駆け寄って、携帯片手に暗雲を背負う蓮の様子を見たとたんに、当然に思った疑問を口にしたくなくなった。
けれども、7回目の電話をかけ終わるのを見て(どこにかけているのかを察したうえで)勇気を油にされるごま粒のごとく絞りに絞りまくって進言した。
「蓮…あの、もう送ると次の仕事に間に合わなくなるから……」
(↑それでも、はっきりと「キョーコちゃんを送るのは諦めてくれ」とは言えない)
軽く髪を掻き上げるしぐさに青年の心の乱れがみてとれて、社は静かに胃の痛みに耐えつつ引きつった笑みを浮かべる。
(※これからのマネジメント業務が過酷なものになることを予想しています)
「そうですね…いきましょう」
逸る気持ちを抑えながら、蓮は本来ならばキョーコを迎えに行くはずだった駐車場へと向かったのだった。
※
手早く次の仕事現場へ移動した後、蓮はさらにもう1度電話をかけ直した。
(※類を見ないほど荒い運転をされましたが、社さんはそれで少しでも担当俳優の荒ぶる心が鎮まるならばと耐えていました)
すると、留守番電話からキョーコ本人の声でアナウンスが流れてきた。
(※凝り始めるととことん凝り出すB型少女なので、携帯の設定はしらみ潰しチェック済です)
『電話に出られなくてすみません 迷惑のかからない状態になったら、私のほうから連絡します』
額面どおりに受け取れば普通の留守番電話メッセージだが、そのメッセージを送られた当人にはきちんとその意図が伝わった。
先輩への無礼に対する謝罪と、恋心から逃げ切ろうという決意表明。
「冗談じゃない! やっと、俺を愛してくれるきざしがみえたのに逃がしてたまるか!」
彼は叫んだ。周囲の状況も目に入れずに叫んだ。
そこは敦賀蓮個人の楽屋だった。
「なんだよ! てっきり、キョーコちゃんが不破と一緒にいるのを目撃して落ち込んでるのかと思ったら!!」
そして、彼のマネージャーも側で冷や汗をかきながら、電話をかける蓮を注視していた。
「いやあ~よかったねえ、蓮くぅん? そんな確信ができるくらいのリアクションしてくれるまで好きになってもらえてさあ!」←テンション反騰中
なぜ電話を何度も何度もかけるなどの恋愛戦線に問題発生と誤解するような行動をしているのかという疑問をさしはさむ隙もなく、キョーコが蓮に恋をしたという事実に浮き足だつ社。
「車内を絶叫マシーンにしてたのも、早く電話して口説き落としたくてたまらなかっただけかあ~ いやあ、青春だねえ!春爛漫だねえ!」←きゃぴきゃぴしてる20代後半男性
そんな他人のはしゃぎぶりを見て、蓮はようやく冷静さを取り戻した。
「全然よくありませんよ 俺の気持ちを、あの娘はまったく信じてくれてないんですから」
「はあ? どういうことだ?」
疑問の声をあげるマネージャーに現状を把握させ、キョーコちゃんらしいなと同情されたところで次の仕事の時間となった。
※
あちらも恋愛感情を抱いたからには、後は想いが通じ合っていることを分からせるだけ。
蓮も、社も、キョーコが振り向いた時点で、もうアプローチは成功に9割方近づいていると思っていた。
しかし、ラスボスは手ごわかった。
(↑百里を行く者は九十を半ばとすな状況)
電話に出ない。会わないように行動する。
そんなことは序の口。
3階の窓からオブジェ(←今回はハワイアン風のトーテムポール)をつたって逃げられたときには、蓮はそこまで避けられる憤りや悲しさうんぬんよりも悲鳴をあげたくなった。
(※キョーコさんの留守番電話に危ないことはするなという説教じみたメッセージが残されたことは言うまでもありません)
そんなこんなで、くだんの蓮の告白からのキョーコ逃走劇から10日ほど経った。
蓮のほうが、スケジュールという時間制限が多く課せられているため分が悪い。
(↑異性のキャアキャアという黄色い声により接近を感知されるものだからなおさらです)
言うまでもなく、現在もその追いかけっこは継続中である。
「社長…再びすみませんが頼みたいことがあるんです」
恋に邁進する男は、次なる一手を繰り出すことにした。
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