1977年1月,アルバム『Animals (アニマルズ)』の発表に伴って行われたアニマルズ・ツアー (通称:In The Flesh Tour)の最終日に当たる 7月6日 カナダはケベック州モントリオールのオリンピック・スタジアム公演において,ウォーターズ は最前列にいた若者が騒ぎ立てていることに激怒し,唾を吐きかけるという行為に及んだのは有名な話であり,このときにウォーターズは自分自身の行為にショックを受けながらも 「ステージの前を隔てて壁を築くことにより,僕の嫌悪感を表現しようという考えが稲妻のごとく頭に浮かんだ」という事をインタビューで語っています.
 このインスピレーションがコンセプトとなったアルバム『The Wall (ザ・ウォール)』は,1979年11月にリリースされ世界中で大ヒットを記録しました.

 「The Wall (ザ・ウォール)」の完全再現は,多数のサポートミュージシャン等を従え,演奏のみならずシアトリカルな一大エンターテインメント・ショウを行った関係もあり,そのあまりの大掛かりなステージセットの為,通常のライブツアーではコストがかかりすぎ,同一会場での連続公演のみというスタイルで,公演地と公演回数が限られ,結果的に,1980年2月のロスアンゼルス 7公演,ナッソウ 5公演,同 8月のアールズ・コート 6公演,翌1981年2月のドルタムント 8公演,同 6月のアールズ・コート 5公演と,2年間で計 31公演しか行われませんでした.

 本音源は,そのアルバム『The Wall (ザ・ウォール)』の発表に伴って行われた1980年の北米ツアーから,ツアー初日=「The Wall」初演 に当たる,カリフォルニア州はロス・アンゼルスのスポーツ・アリーナ公演を収録したものです.

 音像は遠目であるものの,バランスは良く,音に篭りがありません.またオーディエンスの歓声や拍手が,かなり遠くに聴こえており,オーディエンス・ノイズが殆どありません.関係者席等の特殊エリアがミキシング・ゾーン等で収録された可能性が高いですね.
 唯一近くでの少しノイズが聴こえるのは最終曲 "Outside The Wall" の前後程度です.

 第一部では,"Goodbye Blu Sky" の 1分39秒には爆竹らしき音が収録されており,相変わらずな米国ファンを感じさせます. 
 また詳細はメーカー情報にもありますが "Empty Space" 中にトラブルがあり,ロジャーがあわてて「ストップ! ストップ!」と叫び,演奏を中断させます.その後の復旧に伴って再度 "Goodbye Blue Sky" のエンディングの静かなキーボード部分から再演し,徐々に "Empty Spaces" 導入部のリズムが刻まれていきます.Disc 1 に "Empty Spaces #1" と "Empty Spaces #2" がトラックとして切られているのは,この関係であり,これも一つのドキュメント.
 "Young Lust" ではギルモアが,1分34秒から 2番の歌詞「Will Some Woman In This Desert Land」に入るタイミングを間違えたのか,あわてて最後の「Land」の部分から歌います.
  まだ "The Last Few Bricks" として完全に整理されておらず "Another Brick In The Wall (Part 3)" の延長として演奏されている部分は,途中にスローなキーボードとギターのジャムを含み徐々にアップテンポになっていきます.この部分は "Another Brick In The Wall (Part 3)" を含めて 12分以上も演奏されており,興味深く聴く事ができます.同 2月13日のロスアンゼルス最終公演では,合わせても半分の 6分程度に収まっており,ほぼ完成版に近くなっているので,公演を行いつつ進化していく過程をみることができます.

 "Hey You" から始まる第二部では,メーカー情報でも明記されているように,"Nobody Home" の一定間隔に刻まれる音がのっていたり,"Vera" では,00分17秒からタイミングを取るための音による一定間隔のメトロノーム的なリズムと,声による「One...Two...Three...~ Seven」のカウントが流れてしまっています."Comfortably Numb" も,短い間隔のメトロノーム的なリズムが 2度目のギターソロの途中である 4分55秒までなり続けています.前者(:"Nobody Home")は然程気になりませんが,後者(:"Vera" と "Comfortably Numb")は気になってしまいます.とは言いつつも,当日の観客は,このショウを初めて観る訳ですが,観た人の感動と興奮は凄かったでしょうね.それが本CDからも聴き取る事ができます.

 メーカー情報では
 『1980年2月7日のロス・アンゼルスで行われた「ザ・ウォール」初演ライヴを、史上初めてマスタークオリティで完全収録。
 既発では10年以上前にリリースされた「AZIMUTH COORDINATER」(6CD)というタイトルが有名でしたが、今回のタイトルではこれまで流通していた同音源とは比較にならない程に音がクリアーな上、大きく被さっていたヒスノイズも全くないベスト・ヴァージョンです。
 更には鑑賞の妨げとなっていた「bump-noises」と形容されていたノイズが無い、非常に聴きやすい安定した鮮度抜群のサウンドで、記念すべきウォールの初日公演を楽しむことができます。
 音はそれなりに距離がありますが、音像自体は終始安定しており、籠りもありません。適度な臨場感はあれど、周囲に煩い観客もいないとても聴きやすいサウンドです。
 この公演では、通常行われる前節と後半 In The Flesh 手前の MCを、ラジオ局「KMET-FM」のシンシア・フォックスが務めており、LAらしく陽気なムードでコンサートのオープニングと中盤MCを務めています(語りを遮るようにいきなりスタートするのは同じですが)。
 結果的にコンサート自体は成功と呼べるものになっていますが、この日は幾つかのトラブルが発生してます。
 有名なのは Empty Spaces で、特殊効果に使用した火がステージの一部(カーテン)に引火し、曲が始まって1分14秒を過ぎたあたりで、ロジャーが「ストップ!ストップ!」と叫び、演奏を中断させます。この間、ロジャーが月をテーマにした妙な語りを始め観客を盛り上げますが、機材はすぐに復旧した様子で、曲前のSEから再度リピートしてステージが再開されます。ノンカットで収録されているので、トラブルとはいえ、興味深いドキュメントとして聴くことができます。
 Another Brick In The Wall Part 3 はまだ The Last Few Bricks として整理されていないので13分近い大熱演が聴けます。この辺のパートの醍醐味は比較的、画一的な演奏ばかりのウォールライヴ史のなかで、唯一、70年代のフロイドらしいスポンテニアスなまさに本領発揮ともいえるジャムプレイが聴けます。
 その後、Goodbye Cruel World に入るわけですが、初めて観るその演出の見事さに、ファンが感動の思いで熱狂している様子が、盛り上がる観客の様子からリアルに伝わってきます。
 Hey You から始まる第2部は本来、ミュージシャン側にしか聴こえないはずのクリック音が各所で大きく鳴ってしまうという失態を複数個所で聴くことができます。
 Nobody Home の 8秒目から1分目にかけてリズムマシンのトラックが大きく鳴ってしまっています。
 この辺りは音のトラブルが連続しており Vera のイントロでは「Three, Four」の肉声カウントが大きく流れてしまい、ロジャーの最初の1節の後、20秒目から「One, Two..」と肉声カウントがこれまた大きく出力されてしまい、気付いたテクニシャンが「Seven」でオフにした様子をリアルな録音で聴くことが出来ます。
 Comfortably Numb では再びリズムトラックがメトロノームのように5分間鳴り続けてしまい、結構演奏をスポイルしてしまっています(ギターソロの途中でようやく止まります)。
 こういったトラブルを細部まで聴けるのも、ここまでクリアーな音のマスターが出現したからなわけですが、この LA7日間連続公演初演が、いかにトラブルに満ちたものだったかが判ると言うものです。しかし、ロジャー&バンドはトラブルにめげず、最後までノンストップで演奏と続けます。
 Is There Anybody Out There ? 等の演出にも観客が驚きの絶叫を上げているのが聴こえます。
 ラストの Trial の歌い回しは後のライブテイクとは全く違っており、初演ならではの生々しいパフォーマンスは、聴き手を大いに感動させてくれます。
 このようなトラブルがあったとしても、観衆は大満足だったようで、Outside The Wallでは万雷の拍手でバンドを讃えます。ラスト30秒のロジャーの「Thank you!!」の連発は巨大なショウを何とか成功させ、観客を魅了できたことへの満足感と興奮に満ち溢れたものだったのではないでしょうか。
 ウォール・ライブは、ナッソー、アールズコートと、演奏も音質もより良い公演の録音は沢山あります。しかし、現代になっても世界中のロックファンを魅了し続ける「ザ・ウォール」第1回目のライヴは、あらゆる意味で特別感に満ち溢れています。2014年、遂に登場した、ウォール初演ライヴ・LA初日。これは本当に優れた、そして重要なタイトルです。圧巻の、そして感動のドキュメントをたっぷりとお楽しみ下さい!』

The Wall:First Ever Live (Sigma 116)
 
 Live At The Los Angeles Memorial Sports Arena,Los Angeles,CA,USA 07th February 1980

 Disc 1
  1. MC Intro (Cynthia Fox KMET-FM)
  2. In The Flesh?
  3. The Thin Ice
  4. Another Brick In The Wall (Part 1)
  5. The Happiest Days Of Our Lives
  6. Another Brick In The Wall (Part 2)
  7. Mother
  8. Goodbye Blue Sky
  9. Empty Spaces #1
  10. Empty Spaces #2
  11. What Shall We Do Now ?
  12. Young Lust
  13. One Of My Turns
  14. Don't Leave Me Now
  15. Another Brick In The Wall (Part 3)
  16. Goodbye Cruel World
 TOTAL TIME (68:26)  

 Disc 2
  1. Hey You
  2. Is There Anybody Out There ?
  3. Nobody Home
  4. Vera
  5. Bring The Boys Back Home
  6. Comfortably Numb
  7. The Show Must Go On
  8. MC Intro (Cynthia Fox KMET-FM)
  9. In The Flesh
  10. Run Like Hell
  11. Waiting For The Worms
  12. Stop
  13. The Trial
  14. Outside The Wall
 TOTAL TIME (54:02)

 Empty Spaces #1 
 
 Another Brick In The Wall (Part 3) 
 


 本商品の限定ナンバー入りステッカー付きに限って,ツアー開始前の2月1日にロスアンゼルスはパラマウント・スタジオで行われたリハーサルをステレオ・サウンド・ボード録音で収録した「L.A. Rehearsals Complete (Special Bonus)」が付属しています.

 こちらの方は,リハーサルなので「The Wall」構成曲が全て収録されている訳ではありませんが,ウォーターズの生声が入っていたり,"Another Brick In The Wall (Part 2)" のギルモアのギター・ソロが変わっていたり,"Young Lust" のギターのディストーションが効き過ぎていたりと,非常に生々しいものとなっています.サウンド・ボード収録されているので,非常にクリアです.

 メーカー情報では
 『過去に「Lost Documentary」の ディスク2に収録された,貴重な1980年2月1日の LA のパラマウント・スタジオでのバンド・リハーサルのアップグレード・ヴァージョンを収録。
 既発に比べてテープのジェネレーションがまるで違い、音質が比較にならないほど向上しており、既発テイクはディスク一枚に収めるために曲間をかいつまんで無理やり短く編集していたのですが、本作はテープに録音されていたそのままの状態を楽しむことができます(既発が75分27秒の収録だったのが本作では90分収録されています)。
 ミキシング卓で録音された(90分)カセットをマスターにしているようで、音は完全にステレオに分離されています。とにかく非常に優れたサウンドで収録されているので、コレクターは間違いなく必携の一枚です。ダイレクターのロジャーの指示に合わせてショウのサウンド構成を構築していく様が非常にリアルに収録されており、マニアは一瞬たりとも聞き逃せないでしょう。
 Young Lust のギターリフが凄い迫力で収録。Stop Bulding The Wall と題された TRK11 ではロジャーのイライラがピークに達してる様子が分かります。Hey You では全体のサウンドが一瞬にして落ちてしまい、ブリッジパートの But it was only fantasy のロジャーの生声が響き、沈黙と共に「いったいどうなってるんだ?」とロジャーがつぶやくところもリアルです。
 この6日後から空前絶後の大掛かりなショウをスタートさせなければならないバンドとロジャーの苛立ちは相当なものだったでしょう。フロイド音楽史にとって、最重要音源のひとつがマスター・クオリティで登場』

L.A. Rehearsals Complete (Special Bonus)
 
 Rehearsals At Paramount Studios,Los Angeles,USA 01st February 1980

 Disc 1
  1. The Thin Ice
  2. Another Brick In The Wall (Part 1)
  3. Happiest Days Of Our Lives
  4. Another Brick In The Wall (Part 2)
  5. Mother
  6. Goodbye Blue Sky
  7. Empty Spaces
  8. What Shall We Do Now ?
  9. Young Lust
  10. One Of My Turns
  11. Stop Building The Wall
  12. Another Brick In The Wall (Part 3)
  13. Goodbye Cruel World

 Disc 2
  1. Hey You
  2. Don't Start The Tape
  3. Is There Anybody Out There ?
  4. Nobody Home
  5. What's On TV ?
  6. Vera
  7. Bring The Boys Back Home
  8. Comfortable Numb
  9. The Show Must Go On

 Stop Building The Wall 
 


[参考]
 The Wall Tour 1980
  February
   07 Los Angeles Memorial Sports Arena,Los Angeles,CA,USA
   08 Los Angeles Memorial Sports Arena,Los Angeles,CA,USA
   09 Los Angeles Memorial Sports Arena,Los Angeles,CA,USA
   10 Los Angeles Memorial Sports Arena,Los Angeles,CA,USA
   11 Los Angeles Memorial Sports Arena,Los Angeles,CA,USA
   12 Los Angeles Memorial Sports Arena,Los Angeles,CA,USA
   13 Los Angeles Memorial Sports Arena,Los Angeles,CA,USA

   24 Nassau Veterans Memorial Coliseum,Uniondale,Long Island,NY,USA
   25 Nassau Veterans Memorial Coliseum,Uniondale,Long Island,NY,USA
   26 Nassau Veterans Memorial Coliseum,Uniondale,Long Island,NY,USA
   27 Nassau Veterans Memorial Coliseum,Uniondale,Long Island,NY,USA
   28 Nassau Veterans Memorial Coliseum,Uniondale,Long Island,NY,USA

  August
   04 Earls Court Exhibition Hall,London,UK
   05 Earls Court Exhibition Hall,London,UK
   06 Earls Court Exhibition Hall,London,UK
   07 Earls Court Exhibition Hall,London,UK
   08 Earls Court Exhibition Hall,London,UK
   09 Earls Court Exhibition Hall,London,UK

 The Wall Tour 1981
  February
   13 Westfalenhalle,Dortmund,GERMANY
   14 Westfalenhalle,Dortmund,GERMANY
   15 Westfalenhalle,Dortmund,GERMANY
   16 Westfalenhalle,Dortmund,GERMANY
   17 Westfalenhalle,Dortmund,GERMANY
   18 Westfalenhalle,Dortmund,GERMANY
   19 Westfalenhalle,Dortmund,GERMANY
   20 Westfalenhalle,Dortmund,GERMANY

  June
   13 Earls Court Exhibition Hall,Earls Court,London,UK
   14 Earls Court Exhibition Hall,Earls Court,London,UK
   15 Earls Court Exhibition Hall,Earls Court,London,UK
   16 Earls Court Exhibition Hall,Earls Court,London,UK
   17 Earls Court Exhibition Hall,Earls Court,London,UK

ザ・ウォール



The Wall: Immersion Edition Box Set



アニマルズ