1971年8月に初来日を果したピンク・フロイドは,8月6日と 7日の箱根アフロディーテ公演(過去ブログ「Memories Of The East (Sigma 24)」を参照),8月9日の大阪フェスティバル・ホール公演(過去ブログ「Osaka 1971 (Sigma 67)」参照)を終え,オーストラリアに渡り 8月13日のシドニー公演(過去ブログ「First Australian Show (G.R. 321)」参照),15日のメルボルン公演(過去ブログ「GTK 1971 (Bonus DVDR)」参照)を行います.このオーストラリア公演から約一ヵ月後の 9月18日と19日にスイスのモントルーで行われたモントルー・ジャズ・フェスティバルに出演,9月30日には英国の BBC放送でのライブ(過去ブログ「BBC Archives (Siréne-026)」参照)と,10月4日~10月7日は,イタリアのポンペイでの撮影(過去ブログ「Live At Pompeii:Collector's Edition」参照)を行なっています.
 今回は先日紹介した1970年11月21日のスイス・モントルー公演「Too Late For Mind Expanding (No Label)」繋がりで,翌年の1971年9月18日のモントルー公演を収録した「Echoes In Montreux (Sigma 53)」です.

 この公演は過去に The Swingin' Pig Recordsレーベルから「Live In Montreux 1971 (TSP-CD-071-2)」,Hightlandレーベルから「Plays Montreux (Highland HL476/477)」,Sigmaレーベルから「Labyrinths Of Coral Caves (Sigma 18)」として発売されており,当時は Sigmaレーベルの「Labyrinths Of Coral Caves (Sigma 18)」が本公演日の決定盤という扱いでした.
 本CD「Echoes In Montreux (Sigma 53)」は,この音源と異なる新たなステレオ・オーディエンス音源からの収録で,曲間のカットはあるものの,演奏は完全収録しています.この音源は良くSBD(:Soundboard)音源と言われる場合もありますが,最初の導入部のノイズ,曲中のオーディエンス・ノイズ等から,オーディエンス録音であることは明白です.そしてテープ劣化が原因なのか否か不明ですが,所々片チャンネルの出力レベルが落ちる箇所があります.この部分は残念ですが,それ以外は殆ど SBD(:Soundboard)録音と言っても判らないくらいの高音質で収録されています.

 この時期は赤字になる関係からブラス隊,コーラス隊を伴わず,四人編成で演奏されていた "Atom Heart Mother" がオープニング・ナンバーになるケースが殆どでしたが,アルバム「Meddle (おせっかい)」リリースを翌月に控えている関係か,"Echoes" がオープニング・ナンバーとして演奏され,しかも "Atom Heart Mother" はブラス隊とコーラス隊を従えての演奏が披露されます.しかもこのブラス隊,コーラス隊と共演する "Atom Heart Mother" は,本公演が最後となる事,他のブラス隊とコーラス隊との共演に比較すると,本公演の "Atom Heart Mother" の演奏が素晴らしい関係から重要な公演であることは言うまでもありません.(四人編成の "Atom Heart Mother" は,幾つも素晴らしい演奏は残されていますが,ブラス隊,コーラス隊共演の "Atom Heart Mother" は,費用の関係から公演回数も限らており,必聴の価値があります.)
 また直前の公演までは "Green Is The Colour" と "Careful With That Axe, Eugene" がメドレー形式で演奏されるケースも多々ありましたが,本公演以降 "Green Is The Colour" はセット・リストから外され, "Careful With That Axe, Eugene" が単独で演奏されます.

 "Echoes" 冒頭でマイクを触れるガサゴソといったノイズが数回入ります.演奏は 7分55秒辺りでギターの音程が怪しくなり,曲中に簡単なチューニングして持ち直しますが,ベースとドラムでリズムを刻みだす 8分30秒当たりから本格的なチューニングに入ります.よって中間部は一時的にベース,ドラム,ハモンドオルガンのみになります.9分23秒からチューニングを終えたギルモアのギターが入ってきます.11分47秒では,ポンペイでの "Echoes (Part1)" 終了時のベース・ラインが一瞬出てきます.そして終盤部はオフィシャルと異なっており,最後がピアノ音でフェイド・アウトしていくタイプでは無くキチンと終了するタイプです.
 "Set The Contorols For The Heart Of The Sun" の 11分04秒には耳障りなノイズというかハウリングがあり,12分10秒にはテーパーがマイクを触るノイズと小さなカットが存在します.
 翌年以降セットリストから姿を消す "Cymbaline" は,ギルモアの歌が始まったところで拍手が起こるのが感動的です.そして足音の SE(:Sound Effects)中,咳等のオーディエンス・ノイズは少し耳障りですが,非常にクリアに収録されており,再度テーマに戻る際に観客から拍手が起こります.
 そしてこの公演のハイライトの一つであり,ブラス隊とコーラス隊を従え,30分に及ぶ "Atom Heart Mother" が演奏されます.本CDに使用された音源は,メーカー情報にもあるように,旧音源より導入部が 1分30秒程度長く収録されています.また "Funky Dung" パートでのデイブ・ギルモアのプレイは中々素晴らしく、ブラス帯、コーラス隊、バンドが一体となって感動的なエンディングを迎え終了します.
 アンコールとして演奏される "A Saucerful Of Secrets" も,咳等のオーディエンス・ノイズがありますが,SBDを思わせる素晴らしい音で収録されています.

 メーカー情報では
 『10月の「Meddle」リリースを前に行われた1971年ヨーロッパ・ツアーより、9月18日のスイスはモントルー公演を完全収録した話題の初登場音源。
 同日の既発決定盤「LABYRINTHS OF CORAL CAVES」とは完全別マスター音源。既発盤も大変優れた極上音質盤でしたが、本盤は既発を上回る鮮度抜群の自然な広がりを持った最高音質で収録されており、突如登場した高品質な新音源にマニアは大いに驚かされることでしょう。
 既発がモノラルなのに対し、本盤は広がりをもった完全ステレオで収録されており、イコライズ感を感じさせない自然な質感をもった高音質で聴ける 1時間52分のサウンドドラマは間違いなく全てのフロイド・ファン必聴です。
 静かな部分では若干のヒスノイズが聴こえるものの、マスター・ダイレクトを確信させる音の鮮度や深みは終始圧巻。
 マスターに起因する問題点としては、Echoes のイントロの不安定箇所、7:51のカット&ノイズ、更には曲間でレコーダーがオン・オフを繰り返していることですが、Echoes の問題点は全て適度な補正処理を施しており全く問題なく聴ける上、曲間のカット部分も、既発音源を自然にパッチし、注意して聞かなければ分からない程に仕上げてあります。
 逆に Atom Heart Mother 開始前のイントロは冒頭のリックのプレイも含め、本盤のほうが 1分30秒近く長く収録されており、素晴らしいアドバンテージになっています。Atom Heart Mother での金管楽器のサウンドの素晴らしさは見事で、圧巻のサウンドドラマを楽しむことができます。
 既発音源の欠点であった、テープ再生時に発生したと思われるノイズの問題は本盤は一切無く、この時期の充実のパフォーマンスを理想的な最高音質で楽しむことができます。コーラス隊とオーケストラとの共演による Atom Heart Mother のライブはこの日が最後ですので、そういった意味でも大変貴重な記録になっています。白熱の演奏が楽しめるラストの A Saucerful Of Secrets も、サウンドボード録音と聴き間違える程の驚愕の最高音質で楽しめます。』
との事.

Echoes In Montreux (Sigma 53)
 cinnamon の裏音楽、そしてときどき競馬予想-PF - Echoes In Montoreux (Sigma 53)
 Live At Pavillion de Montreux,Montreux,SWITZERLAND 18th September 1971

 Disc 1
  1. Echoes
  2. Careful With That Axe, Eugene
  3. Set The Controls For The Heart Of The Sun
  4. Cymbaline

 Disc 2
  1. Atom Heart Mother
  2. A Saucerful Of Secrets

 Echoes
 
 Cymbaline
 
 Atom Heart Mother
 
 A Saucerful Of Secrets
 


ブログ・ランキング参加中です!
宜しければ,クリックお願いします.
にほんブログ村 音楽ブログ 1970年代洋楽へ
  にほんブログ村


[参考]
 Live In Montreux 1971 (TSP-CD-071-2)
 cinnamon の裏音楽、そしてときどき競馬予想-PF - Live In Montreux 1971 (TSP-CD-071-2)
 Plays Montreux (Highland HL476/477)
 cinnamon の裏音楽、そしてときどき競馬予想-PF - Plays Montreux (Highland HL476/477)
 Labyrinths Of Coral Caves (Sigma 18)
 cinnamon の裏音楽、そしてときどき競馬予想-PF - Labyrinths Of Coral Caves (Sigma 18)

 1971
      
      
 August
  06 Hakone Aphrodite '71,Seikei Gakuen Jofundai,Hakone,JAPAN
  07 Hakone Aphrodite '71,Seikei Gakuen Jofundai,Hakone,JAPAN
  09 Festival Hall,Osaka,JAPAN
  13 Festival Hall,Melbourne,AUSTRALIA
  15 St Leger Stand,Randwick Racecourse,Sydney,Australia
      [Get To Know, Broadcast 15 August]
  21 Dallas Brooks Hall,Melbourne,Australia
      [Rescheduled To 13 August]
  22 Dallas Brooks Hall,Melbourne,Australia
      [Rescheduled To 13 August]

 September
  18 Festival de Musique Classique,Pavillion de Montreux,Montreux,SWITZERLAND
  19 Festival de Musique Classique,Pavillion de Montreux,Montreux,SWITZERLAND
  22 Kungliga Tennishallen,Stockholm,SWEDEN
  23 KB Hallen,Copenhagen,DENMARK
  30 BBC Paris Cinema,Lower Regent Street,London,England
      [Sounds Of The 70s,BBC Radio 1,Broadcast 12 October]

 October
  04 Roman Ampitheater,Pompeii,ITALY [Live in Pompeii Recording]
  05 Roman Ampitheater,Pompeii,ITALY [Live in Pompeii Recording]
  06 Roman Ampitheater,Pompeii,ITALY [Live in Pompeii Recording]
  07 Roman Ampitheater,Pompeii,ITALY [Live in Pompeii Recording]
      
      


[関連記事]
 「Memories Of The East (Sigma 24)
  cinnamon の裏音楽、そしてときどき競馬予想
 「Osaka 1971 (Sigma 67)
  $cinnamon の裏音楽、そしてときどき競馬予想-Pink Floyd - Osaka 1971 (Sigma 67)
 「First Australian Show (G.R. 321)
  cinnamon の裏音楽、そしてときどき競馬予想-Pink Floyd First Australian Show (G.R. 321)
 「GTK 1971 (Bonus DVDR)
  cinnamon の裏音楽、そしてときどき競馬予想-PF - GTK 1971 (Bonus DVDR)
 「BBC Archives (Siréne-026)
  cinnamon の裏音楽、そしてときどき競馬予想-PF - BBC Archives (Sirene 026)
 「Danish Blues (Sirene-199)
  cinnamon の裏音楽、そしてときどき競馬予想-Pink Floyd - Danish Blues (Sirene-199)
 「Live At Pompeii:Collector's Edition
  $cinnamon の裏音楽、そしてときどき競馬予想-Pink Floyd - Live At Pompeii