1970年4月9日ニューヨークのフィルモア・イースト公演を皮切りに5月30日イリノイ州シカゴのアラゴン・ボールルーム公演までの第一次北米ツアーに続き,アルバム「Atom Heart Mother (原子心母)」リリースに伴って9月26日ペンシルバニア州フィラデルフィアのエレクトリック・ファクトリー公演を皮切りに10月25日マサチューセッツ州ボストンのボストン・ティー・パーティー公演まで,約 1ヶ月間実施された第二次北米ツアーから,ツアー終盤の10月23日カリフォルニア州サンタモニカのサンタモニカ・シビック・オーディトリウム公演をオーディエンス収録したものです.
 メーカー情報では最終日とありますが,文献では10月25日マサチューセッツ州ボストンのボストン・ティー・パーティー公演が最終日とされています.しかし演奏したセットリストも不明な為,どちらが最終公演なのかは判断つきません.

 音像は多少遠いですが,比較的バランス良く高音質で収録されています.ただテープ自体の劣化に伴う,音揺れや,ドロップアウト等が全体にわたって発生しているのが残念です.
 
 コンサートは "Astronomy Domine" で開始されます.1分25秒に一瞬レベルが下がりますが,直ぐに戻ります.4分14秒から元マスターの劣化等に起因するであろう音ゆれと,4分19秒にドロップアウトがあります.このような音揺れとドロップ・アウトが Disc 1と 2の全体にわたって存在します.ギルモアのギターとボーカルの "Green Is The Coulour" ~ "Careful With That Axe, Eugene" 間では酔っ払った一部の観客が喚き続けます.8分04秒からフェイド・アウト状態,8分13秒からフェイド・イン状態でカット部分を少しでもごまかしたような感じでしょうか.
 ロジャー・ウォーターズが,次の曲は牧歌的なデイブ・ギルモアの曲で "Fat Old Sun" です.と紹介し,演奏が開始されます.オフィシャル「Atom Heart Mother (原子心母)」収録のものとは時間的にも大幅に異なり,牧歌的なメインテーマとは想像もしない 7分過ぎからの中間部を要した "Fat Old Sun" の演奏を初めて聴く観衆は驚いたのではないでしょうか.そしてこのコンサートのハイライトとも言うべき後半部になります.この日の "A Saucerful Of Secrets" は12分台後半からの音は,単にギターとスライドバー,ビンソンのエコーユニット(:エコー・チェンバー)の他に明らかにモーグというか,その初期のモーグ・モジュラーシステム等,あるいはVCS,EMSが使用されているような音です.確かに狂気では "On The Run"等でシンセサイザーを使用しているので,この段階で使用していても不思議ではないですが,非常に興味深いです.続く最新アルバムのタイトル曲 "Atom heart Mother" では,ピーター・フィリップス指揮によるロジェー・ワーグナー合唱団とブラス・セクションとの競演で,演奏するのに先立って,ロジャー・ウォーターズが観客に紹介します.この "Atom Heart Mother" の17分24秒付近にカットがあり,フェイド・アウト,フェイド・イン処理が行われ,18分32秒にもスライド・バーを使用したギター・ソロ部分でカット,21分45秒でのカット等,通しで聴くにはストレスを感じる人もいると思いますが,オーケストラと合唱隊と競演の "Atom Heart Mother" は公演数も少ないのと,高音質なので聴いて欲しいところです.この "Atom Herat Mother" で終演を迎えますが,観客の大きな声援・拍手に応えるべく,アンコールとして "Interstellar Overdrive" を演奏しますが,この曲の導入部も興味深いです.

 Disc 3 の方はメーカー情報内の「beatlegのレビュー要約」にあるように,多分 Dittolino Discレーベルの有名なアナログブート「Live」から落としたものと思われます.こちらも充分な高音質で 22分30秒でカットはあるものの,"Atom Heart Mother" をストレス無く聴くことができます.このカットもアナログ落としであるが故の盤面切り替えのカットでしょう.後は Disc 3 の元ネタとなっているオーディエンス・テープが発掘されることを願うばかりです.

 メーカー情報では
 『「ATOM HEART MOTHER」のリリースに合わせたかたちで約一ヶ月間行われた1970年USツアーの最終日、10月23日サンタモニカ公演の、現存する2種のオーディ エンス録音を3枚組に収録。
 ディスク1&2では、極上レベルの超高音質オーディエンス録音で、ショウのほぼ全貌を収録。
 既発同様に一部カットや部分的なテープ劣化が散見できる箇所もありますが、マスター・クオリティを確信させる鮮度の良い音質は実に素晴らしく、この時代としては別格のスーパーサウンド で、2時間に渡ってショウの全貌を堪能することができます。音質ばかりではなく、この日の演奏は冴え渡っており、全編を通して、聴き応えのある緊張感の持続した見事な演奏が聴けます。
 ショウ中盤で披露される、23分近い A Saucerful Of Secrets の緊張感に満ちた演奏は特に素晴らしく、前半でピアノを乱打するリック、ギルモアの狂乱のギターエフェクト、そしてオルガンのコーダと、絶品のパフォーマンスを聴くことができ、この時期のフロイドのライブの凄さが100%伝わる最強のテイクになっています。USツアーでは3箇所で行われた、 Atom Heart Mother のオーケストラとの共演を最高音質で聴くことができます。スタート前にロジャーが指揮者のピーター・フィリップスを紹介し、ロジャー・ワグナー・コーラス&ブラスとともに、重厚なムードでドラマチックにスタートする Atom Heart Mother は全体の中でも特に素晴らしく、圧巻の音のドラマを楽しむことができます。ただし、これまでの既発同様に楽曲後半で目まぐるしく音像が変化するというカット&インサートの処理はそのままで、これ以上に良いヴァージョンは存在しないことが分かります。ラストの18分に及ぶ Interstellar Overdrive はまさに圧巻。スポンテニアスなムードから3分目で一転、爆裂モードで突進するヘヴィ極まりない演奏は凄まじく、予想不可能の展開に、この時期のフロイド の真にサイケデリックな魅力を十分に体感することができます。とにかく音質が信じらない位良いので、圧巻のサウンド・ドラマを最後までじっくり堪能するこ とができる最高のテイクです。
 ディスク3には同日のディフ・マスター音源を収録。
 Fat Old Sun から Atom Heart Mother まで、ショウ中盤からメインセットのエンディングまでを72分に渡って、こちらも十分な高音質で収録しています。ギルモアのギターエフェクトが凄まじいサウンドで響き渡る A Saucerful Of Secrets も迫力ある音像で収録されています。Atom Heart Mother 13分台で若干ボリュームが小さめになりますが直ぐに復旧します。以降も27分に渡って殆どノンカットで収録されており、この日の Atom Heart Mother を最長・高音質で収録したファン必携のテイクを楽しむことができます。アナログ時代からお馴染みの、1970年USツアーを代表するサンタモ ニカ公演の決定版が遂に登場です!

★beatleg誌 vol.108(2009年7月号)のレビュー要約です。ご参考まで。
 アルバム『Atom Heart Mother』リリースに伴う1970年の第二次北米ツアーから、最終公演地の Santa Monica 公演を収録。当公演を収録した音源は2種類存在しているが、今回はそれをコンプリート収録している。まずDisc 1とDisc 2に収録された音源は、マスターテープのコピーと思われる高音質のオーディエンス音源で、当日の公演をほぼ完全に収録している。この音源は1990年代に「Scorpio Gold Standard」レーベルからリリースされた、『Sing to Me Cymbaline』がこれまで決定版とされてきたが、今回のリリースはそれを凌駕する内容となっている。そして問題はDisc 3だ。米国で1970年代初頭に、「dittolino disc」というTMOQ系列のレーベルからリリースされた、2枚組海賊盤『Live』と同内容の音源が収録されている。Pink Floydの海賊盤の中で最初期にリリースされた一つで、現在では入手は極めて困難なため、今回のリリースに含まれたことは、ファンにとっては朗報だろう。このDisc 3に関するクレジットは一切ないが、おそらく前述のLPをリマスタリングしたものだと思われる。Santa Monica公演の決定版と呼ぶに相応しい内容だ。』
との事.

Creatures Of The Deep (Sigma 39)
 $cinnamon の裏音楽、そしてときどき競馬予想-Pink Floyd - Creature Of The Deep (Sigma 39)
 Live At Civic Center,Santa Monica,CA,USA 23rd October 1970

 [Recorder 2]
 Disc 1
  1. Astronomy Domine
  2. Green Is The Colour
  3. Careful With That Axe, Eugene
  4. Fat Old Sun
  5. Cymbaline

 Disc 2
  1. A Saucerful Of Secrets
  2. Atom Heart Mother
  3. Interstellar Overdrive

 [Recorder 1]
 Disc 3
  1. Fat Old Sun
  2. Cymbaline
  3. A Saucerful Of Secrets
  4. Atom Heart Mother

 Green Is The Colour
 
 Careful With That Axe, Eugene
 
 Fat Old Sun
 
 A Saucerful Of Secrets (Part 1)
 
 A Saucerful Of Secrets (Part 2)
 
 Atom Heart Mother
 
 Interstellar Overdrive
 

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[参考]
 Live (Dittolino Disc 2LP)
 $cinnamon の裏音楽、そしてときどき競馬予想-Pink Floyd Live

 1970 2nd North American Tour
  September
  26 The Electric Factory,Philadelphia,PA,USA
  27 Fillmore East,Manhattan,New York City,NY,USA
   [Two Shows]

 October
  01 Memorial Coliseum,Portland,OR,USA
  02 The Gymnasium,Gonzaga University,Spokane,WA,USA
   [Rescheduled To 4 October]
  02 Moore Theater,Seattle,WA,USA
  03 Moore Theater,Seattle,WA,USA
  04 Open House, Seattle,WA,USA
   [Rescheduled To 2 & 3 October]
  04 The Gymnasium,Gonzaga University,Spokane,WA,USA
  06 Central Washington University,Ellensburg,WA,USA
  07 Gardens Arena,Vancouver,B.C.,CANADA
  08 Jubilee Auditorium,Calgary,Alberta,Canada
  09 Sales Pavilion Annex,Edmonton,Alberta, Canada
  10 The Gardens,Edmonton,Alberta,Canada
   [Rescheduled To 9 October]
  10 Centennial Auditorium,Saskatoon,Saskatchewan,Canada
  11 Centre of the Arts,Regina,Saskatchewan,Canada
  13 Centennial Concert Hall, Winnipeg,Manitoba,Canada
  15 Terrace Ballroom,Salt Lake City,UT,USA
  16 Pepperland Auditorium,San Rafael,CA,USA
  17 Pepperland Auditorium,San Rafael,CA,USA
  18 Intercollegiate Baseball Facility,University of California,San Diego,CA,USA
  21 Fillmore West,San Francisco,CA,USA
  23 Civic Auditorium,Santa Monica,CA,USA
  25 Boston Tea Party,Boston,MA,USA
  31 Black Magic & Rock & Roll,Cincinnati Gardens,Cincinnati,OH,USA
   [Cancelled]