学校の国語のテストでは、指示語が何を指しているかを問う設問が少なくありません。
 
指示語とは「それ」「あれ」「これ」「どれ」などの、いわゆる「こそあど言葉」です。
 
テストでは、以下のような設問をよく見かけます。
 
「そのような立場の太郎が不憫でならなかった」の「そのような」とは何を指しているでしょうか?
 
皆さんもご存知の通り、この手の設問が、なかなか難しい。
 
いやー、私もホント苦手でした。
 
もちろん、テストですから、正しく答えられなければ、不正解となります。
  
しかし、どうでしょう。
  
「そのような」が何を指しているか。
 
それが瞬時に理解できないような文章が、本当にいい文章なのでしょうか?
 
私に言わせれば、何を指しているかが瞬時に理解できない指示語など文章で使うべきではありません。
 
百歩譲って、この手の設問が、読解力を高める一訓練として有効であることは認めます。
 
しかし、それと同時に「皆さんが文章を書くときには、その指示語が何を指しているのか、読者に考えさせる文章を書いてはいけませんよ」と生徒に釘を刺さなければいけないはずです。
 
つまり、本来であれば、生徒の正解率が低い問題ほど、読み手に伝わらない「悪文」として紹介しなければいけないのです。
 
しかし、多くの場合、テストで取り上げられる文章は「名文」として讃えられ、指示語が何をさしているのかが分からずに頭を抱えている読者(生徒)の側がバカ扱いされるのです。
 
さらに恐ろしいのは、「伝える」ことだけを目的としない文章(たとえば情緒を重視する小説など)だけでなく、実務的な文章、論文、評論などにも、何を指しているかが分からない指示語を連発した文章が多い点です(テストには論文や評論もよく登場します)。
 
指示語の設問を撤廃しろとはいいませんが、子供たちの「書く力」を本気で鍛えたいのであれば、「見本となる文章」と「悪文」の違いは、しっかりと示してあげるべきでしょう。
 
もしも、私が国語の教師なら、間違いなく「君たちが文章を書くときには、何を指しているかが瞬時に特定できない指示語は使わないように!」と指導します。
 
そういう重要な指導をしないから、何を指しているかがさっぱり分からない指示語を書く子供(のちの大人)が増えるのです。



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