キリスト、仏陀、牧師、住職、お笑い芸人、政治家……伝えることが上手な人は、「例え話」の名手でもあります。

たとえば、「新たな考えを取り入れるときは、いったん自分の考えを捨ててからにしなさい」という話をするときには、「まず、自分の器の中の水を捨てなさい。でないと、その器に湯を注いだところで、それはぬるま湯にしかなりません」と「たとえ話」を加えるのです。

冒頭の話だけでは、「なぜそうしなければならないのか?」という根拠が具体的にイメージできません。結果、腑に落ちにくくなるのです。

しかし、その後の「たとえ話」を聞くと、思わず「なるほど!」と膝を打ちたくなります。器や水が具体的にイメージできるので、腑に落ちやすくなります。

「たとえ話」を使うときのポイントは、相手がすでに知っている知識や情報に話を落とし込むことです。相手が理屈抜きにピンとくれば成功です。

たとえば、「時間効率」ばかりを重視する部下がいたなら、こんな「たとえ話」をしてみてはどうでしょう。

「<めいっぱいアクセルを踏み込めば、目的地には早く到着できるだろう。しかし、その分、事故を起こす可能性も高くなる。第一、道中の風景を楽しむことはできないよね?>今の君に少し似ていると思わないか?」

「たとえ話」を用いるということは、相手にできるだけ分かりやすく話を伝えたい、という気遣いの表れでもあります。

伝えることが苦手な人は、ふだんから、この話を「たとえ話」で表現するには、どう表現すればいいだろうか、と考えるクセをつけておくといいでしょう。