青春18きっぷとフェリーの旅(後) | ライター海江田の 『 シラフでは書けません。 』

青春18きっぷとフェリーの旅(後)

次から次へと列車を乗り継ぎ、大阪から夜行フェリーを使って海路を進む。

海の揺りかごに身を委ね、朝、目が覚めたら遠くに陸が見えるというのは、なかなか面白い経験だった。


夕方の試合までたっぷり時間があり、門司港近くのスーパー銭湯へ。

海を望む露天風呂につかりながら、ヤンキー先生が言う。


「勝ちますよね」

「うん」

「万が一、違うことが起こったら、監督会見で川勝さんに言ってください」

「なんて?」

「フェリーまで使って来たのに、どういうことですか、と」

「それは俺らの勝手だけども」

「そうですが。みんなけっこう苦労して来てるでしょ」

「周りの人、びっくりするやろうなァ。いきなり交通手段のこと言われたら」

「北九州は上がったばかりだから、これがJリーグ仕様の質問の仕方と思われるかも」

「ないない。でも、監督、けっこうシャレがわかるから、うまいこと切り返してきたりして。ギリ、いけるかな」


実際、いけるはずもないのだが、湯にのぼせて勝ち点3を疑っていなかった。


ギラヴァンツ北九州戦、あれっと思ったのはゲームの入り方。

慎重さの表れか、それとも相手に合わせてしまったか、パス回しのギアがふたつくらい遅い。

前半10分、セットプレーから失点。

同39分、北九州に退場者が出た。

以降、ゴリ押しするヴェルディ、耐える北九州という構図は揺るぎないものとなる。

終盤、平本一樹や土屋征夫が前に張るが、これも実らず0-1のまま終了。


後半、亀になった相手を崩せなかったのはいいとして(よかないけども、珍しいケースではない)、前半の戦いぶりが解せない。

どうしてこれほど出来が悪かったのか川勝監督に問うと、逆サイドを使う大きな展開がなかったこと、ボールスピードが遅かったことなどを要因に挙げた。

さすがにショックだったのか、表情にいつもの余裕がなかった。


北九州はホーム開催2試合目とあって、運営面のチェックにJリーグの職員が入っていた。

その方は、苦境という点では共通する大分トリニータとの違いについて、こんな話を聞かせてくれた。

昨秋から、Jリーグの事務局には大分のサポーターから多数の問い合わせが入り、試合会場では胸にIDカードを下げていると誰かれ構わず必死の形相で頼んでくる人に会う。

また今年に入って、大分銀行ドームには「使わせていただき、ありがとうございます」と感謝の電話が何本も入ったそうだ。


つまり、大分は人の思いがダイレクトに伝わってくる。

ところが、ヴェルディの場合は一切聞かない。

以前、署名を受け取ったことはあるが、一部の人による一過性の熱ではないか、と。

「そんなことはないのだけど・・・」とゴニョゴニョ言うが、事実起こった現象をはっきり示され言葉が続かなかった。

まさか、「あたし、もしものことがあったら、汐留で切腹しますッ」と言い放ったご近所の奥さんの話を持ち出すわけにもいかないし。

こういったことはJリーグの中でけっこう話題になるそうだ。


大分とは事情が違うため動きが取りずらく、誰もが答えを探している。

ただ、どうやら、そういうふうに映っているらしい。

この現実は知っておいたほうがいい。




●朝日、瀬戸内の海

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