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学生を戦地へ送るには 田辺元「悪魔の京大講義」を読む [ 佐藤 優 ]
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題名だけ見たら、うっかり勘違いしてしまいそうな本ですが、

「学生を戦地へ送るには」と考えた、哲学教授 田辺元によって、

戦前、京都大学で開かれた講義を書き起こした「歴史的現實」のロジックを、

佐藤氏が2015年箱根で2泊3日の合宿をして検証していった本です。

 

不勉強な私は、先の大戦で、高学歴の学生を中心に、この田辺元の講義を

まとめた本「歴史的現實」に心を揺さぶられ、自らすすんで戦地へゆき、

この本を胸に抱き、特攻に散った学生が相当数いたという事実を知りませんでした。

 

私の友人がお勧めしていたので読んでみましたが、田辺元のロジックは、

私にはメチャ難解でした。弁証法で書かれてる文は難しい。。。

佐藤氏の解説がなければ、確実に途中で挫折してました(笑)。

 

佐藤氏の解説を読んで理解できたことは、この田辺にとって、

1.「歴史的現實」を通読すらできない学生 ⇒ 論外(赤紙招集へ)

2.「歴史的現實」に感化される学生 ⇒ その程度の学生(志願兵へ)

3.「歴史的現實」の矛盾や論理の飛躍に気付く学生 ⇒ 本物のエリート

という階層分けだったんだなということでした。

佐藤氏は、2の学生を増やす講義をした田辺を愉快犯だったのではと指摘しています。

 

なので、「家族、友人のために死ねば、結果、国のためになる」なんて、エラソーに

学生に説いた本人は、外交官らのいる軽井沢で空爆を避けて当然のように生き残り、

戦後になっても、自分の本に感化された2の学生たちが戦地で散ったことに対する

反省はまったく見られなかったと知ると、一人の母親として、悔しくなりました。

 

では、何故、そういう難解な本の解説を読んでみたのか?

それは、いずれ、現代の田辺元があらわれて、学生や世論を誘導していく時期が

きてしまいそうな、どうしても戦争に持ち込みたい人たちがいるんだなという気配を

感じる機会が増えてきたからです。

 

佐藤さんの合宿中、東京大空襲の1年少し前にヒットした「敵機空襲」という映画を

とおして、当時の庶民の様子を検証されているのですが、まだまだ、当時の庶民に

悲壮感はあまりなかったのだというのも知りました。

 

そういう部分も含めて、「きな臭さ」に関する感度は、高い人と、低い人がいるという

事実も勉強になりました。

 

ふりかえって、9.11後のアメリカと、パリのテロ後のフランス、

報復への世論の動きは大きく違うのだなと、見ていて思いました。

今後、日本でテロが起こった後、日本の世論がどちらに近い動きをするのか想像した時、

かつて通った「お国のために」的発言がでてこないとも限らないなと不安になったのです。

 

そんな時、子どもをもつ親として、世論を煙に巻くロジックに対し、1はもちろん、

2でもなく、3のような見抜ける眼を持ってないととても怖いなと思い、手に取りました。

 

もちろん、戦争の可能性を感じるからには、投資家として、どういう行動が適切なのか

研究しなければというのも、別の友達とチャットしていて気付かされました。

 

興味が出た方は是非ご一読ください。