体験価値時代の店舗マーケティングとは? | 街マーケティング

街マーケティング

「住まい探しや出店は、まず街を選べ。」と言われます。エリアマーケティングの専門家が
街選びに役立つ、「元気な街、話題の施設」を紹介します。

-魅力を際立たせる目的地化マーケティング-

 

朝日新書「東京どこに住む?」(速水健朗著)の中で、このブログの過去記事「この先、自分の街は人が増えていくのだろうか? 」のベースとなった当社ニュースリリースが紹介されました。ありがとうございます。このリリースを読みたい方は、こちらからどうぞ。

 

 

モノを売らない小売業が増えている

 

毎日、渋谷公園通りの緩やかな坂を上って仕事場へ通っています。ここ数年で、街や店舗の急激な変化を感じています。店舗は、商品そのものではなく、目に見えない体験とか価値を売るように変わってきているようです。
 


MODI外観(出典:マルイ/ニュースリリース)

 

例えば、東口のビッグカメラ。イヤフォン、ヘッドフォン売場の品揃えは壮観です。beats、BOSE、JBL、SONYなどブランド音質はもとより、形状、ワイヤレス機能など様々なバリエーションで試聴できます。また、公園通りの入口にあるMODIも都心型業態にリニューアルしました。キーテナントのHMV&BOOKS TOKYOは、索引的に本を探して購入する普通の書店ではなく、雑貨店、イベントなどとのミックスでカルチャーを売る書店になっています。

 

このように、都心小売業は、超専門店的なマニア、選択的な消費が主となってきているようです。このブログでも取り上げた丸の内kitteや渋谷ヒカリエ、また浅草まるごとにっぽんのように、モノを売ることが主ではなく、観光コンセプト的に体験を売る小売業が増えています。

 

 

需要規模を考えても仕方ない?

 

逆に、郊外型小売業の典型であるスーパーは、基本的には、どこにもある商品を決まった業態で販売するというビジネスモデルです。近くにあり何でも揃っている利便性の高い大型店が競争力を持つ業態です。出店、店舗開発に関わるマーケティング手法も、郊外型は商圏需要調査が基本です。コンセプトは、スーパーという業態そのものです。

 

 この方法を、都心の店舗に持ち込んだらどうでしょうか。ほとんど役に立たないはずです。街そのものが既に大きな集客力を持っていますから、今さら需要を調査しても仕方がない訳です。

 

 

郊外・都心の典型的店舗(ワンウェイコントロールとギャレリア形式)

 

 

目的地化マーケティングがキーポイントに

 

では、都心型小売業の効果的なマーケティングとは何なのでしょうか。これは、店舗に出向く目的となる独自のコンセプトづくりです。

 

そこで注目されるのが、店舗の目的地化を図るデスティネーション・マーケティングです。デスティネーション(destination)とは、そもそも主に観光目的地としての需要創造活動のことです。小売業も、より個別嗜好になる消費や、気づかないウォンツの発見とか、そこでしか得られない体験などが求められる中、この発想が注目されます。

 

これに対応するマーケティング手法として、好み、体験といった数値化し難い要素を、1,0(イチゼロ)のダミー変数として扱えるデータサイエンス手法が効果的です。

 

例えば、コンセプト表現は、歴史・文化も含めた立地・商圏の文脈の中で、さらに効果を発揮します。そのため、競合する街や店舗と異なる独自性や強みを活かし、ポジショニング策定が効果的です。主に街や店舗内外部要因を変数として、2軸上でプロットマップを作成します。
 

 

主成分分析による街と属性プロット例()ワンズ

 

街や店舗のポジションが明確になると、来店目的をつくるコンセプトが自ずと想定出来ます。可能性の高いターゲット層を決め、自店の強みと独自性を活かした提供価値を決め込んでいく訳です。

 

また、売上・集客予測はどうしたらよいのでしょうか。単なる需要ではなく様々なニーズ・ウォンツ対応やブランド、体験性などが来店目的となるため、これに対応できる売上予測方法が求められます。つまり、自店や類似事例をサンプルとした重回帰分析や数量化理論1類を使った要因分析などを使うことになります。

 

 

出店マーケティング手法も変化していく

 

必需、コモデティ商品が主の郊外型と異なり、都心型では、このような経験価値までも扱う手法や多様性に対応する戦略性が必要となります。この意味で、今後、データサイエンス手法による目的来店を促すデスティネーション・マーケティングが小売やサービス業でもますます注目されていきそうです。

 

「体験価値の時代には、魅力を引き出すマーケティング手法」が効果的ということです。

 

このように、都心では、ますます、多様(ロングテール)で個性的な店舗が増え、街の魅力が高まり、集客の好循環が進んで行くことが推測されます。都心の一極集中は、まだまだ続きそうです。

 

 

 

データサイエンスによる出店マーケティングに関心がある方は、当社ホームページ店舗ポジショニング・コンセプト売上予測のページへどうぞ。