Man From Wareika/Rico | WONDERFUL ROCK

Man From Wareika/Rico

text by Kaorak

■めかくしジュークボックス〈21〉答えあわせ

近所にジャマイカ人のおじさんが住んでいる。スーパーマーケットで買い物をしていたりすするのをよく見かけるのだが、それはもう立派なドレッドロックスで、知らない人が見たら怖いんじゃないかと、よけいな心配をしてしまうほどである。

先日、家族と信号待ちをしているときに、おじさんと話す機会があった。目が合ったので会釈したら、おじさんはニカッと笑って「よく会いますね。どこの出身なんですか?」とカミさんに目をやった。彼女は外見だけではどこの国の人間かわからないので、向こうも興味を持っていたのだろう。

カミさんが「タイ人です」と答えると、おじさんは「タイには二十回以上行ってるんですよ。海がきれいですよね」とうれしそうに言う。それだけで愛国心の強いカミさんやムスメはすっかりご機嫌である(笑)。

英語と日本語のチャンポンで、わずか数分の立ち話。ぼくもどうにかジャマイカに行ったことがあるとは伝えたが、残念ながらレゲエが好きだという話まではできなかった。次におじさんと話す機会があったら、この伝説のトロンボーン・マンをどう思うか、ぜひ聞いてみたいものである。

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ご存じない方は写真を見せられても、まったくわからないだろうが、この人はリコ・ロドリケスといって、ジャマイカ音楽界の人間国宝とでもいうべき御方である。彼のことは以前にも書いたので、覚えておられる方もいらっしゃるかもしれない。

出題の〈Take Five〉は、彼が70年代の後半に録音したもの。少量の12インチ・シングルしか出回らなかったために、長らく「幻の名演」とされてきた貴重な音源である。

ぼくは1995年にリリースされた《Roots To The Born》という編集盤で、この演奏を初めて聞いたが、いまならこのアルバムが断然おすすめだ。リコの代表作《Man From Wareika》にボーナストラックが9曲追加されていて、《Roots To ~》の収録曲はすべて入っている。

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マン・フロム・ワレイカ+9
リコ


タイトルにある「ワレイカ」とはジャマイカの地名で、ラスタファリのコミューンがあったところ。50年代末、若き日のリコはキングストンからここに移り住んで、のちにスカタライツを結成することになる面々と音楽修行の日々を送ったという。

ぼくはラスタファリについて語れるほど多くを知らないが、それは信仰であり、運動であり、生活様式でもあるのだろう。リコの音楽は誰でも楽しめる普遍性を持っているけれど、同時にこうしたスビリチュアルな要素も兼ね備えている。だから、ただ楽しいだけでなく、とても美しいのではないか。近所のラスタのおじさんと、そんな話をしてみたいような気もするのである。ちょっと怖いけど(笑)。

例によって、ルームの♪Media Master Player♪で何曲か聞けるようにしてあるので、お時間のあるときにどうぞ。相方Kazgaddのように「レゲエはようわからん」という方のために、おまけで〈Wonderful World〉も入れておきました。ゆったりしますよ、これ。