Wonderful World/Rico Rodriguez
Picture by Antonio Iribarne, Argentina, ca. 2002
笑顔が素敵な爺さんになりたいと思う。
若いときは「老賢人」というイメージに憧れたが、いまや時すでに遅し(笑)。しかし、笑顔がいい爺さんになら、ぼくにもなれるのではないかと、ひそかに狙っている。狙うもんでもないけど。
さて、写真のご老人はリコ・ロドリゲスというトローンボン奏者で、ジャマイカ音楽界の至宝である。1934年生まれというから、御年73歳。スカ~ロックステディ~レゲエの歴史とともに生きてきた伝説的な人物だと知らなければ、ただのやさしそうな爺さんにしか見えないが、この穏やかな笑顔が嫌いだという人はいないだろう。
この人が歌う〈Wonderful World〉が、とてもよい。ルイ・アームストロングのあの名曲をレゲエで、ゆったりと歌う。人生には辛いことも悲しいこともたくさんあるけれど、だからこそ喜びも大きくなるのだよと、穏やかな笑顔を浮かべながら教えてくれるような、そんな歌声。聞いているこちらまで、やさしい気持ちになる。
この曲は1995年にリリースされた同名タイトルのアルバムに収録されていて、ほかにも〈Over The Rainbow〉や〈Work Song〉〈Stardust〉といったジャズ・スタンダードを演っている。ボーカルものが〈Wonderful World〉だけというのは少し残念な気もするが、名人が吹くトロンボーンの音色に聞きほれているうちに、そんなことは忘れてしまうだろう。リコのオリジナル曲も、もちろん文句なしにすばらしい。このアルバムはずっと廃盤になっていたが、今月末に紙ジャケット仕様で再発されるそうで、まことにめでたい。
ワンダフル・ワールド
リコ・ロドリゲス
ちなみにiTunes Storeでも、アルバム名や曲順がちがうが、ほぼ全曲が聴ける。それにしても、アルバムがDon Drummond名義になっているのは、どういうわけなんだろう(苦笑)。
Wonderful World/Rico Rodrigues
Over The Rainbow/Rico Rodrigues
Stardust/Rico Rodrigues
text by Kaorak