「金型作成用レジン原型」製作に伴う多大な苦労 | ワンダちゃんNEXT DOORプロジェクト 開発スタッフブログ

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海洋堂社内の量産工房にて複製された原型のレジンキャストパーツは、歪まずにキレイに成型されたものを選りすぐり、その数セット分を東京のグッスマさんに発送します。
それを使って“金型製作用レジン原型”を作成するためです。

この金型製作用レジン原型というのは読んでそのままの内容物なのですが、金型を作成するために新たにパーツ分割し直したり(シリコーンゴム型ならば原型に逆テーパーが存在しても型が柔らかいゴムなのでレジンキャスト成型品を無理矢理引き抜くことができますが、カッチカチの金属製である金型ではそれが無理なため、逆テーパーが存在するパーツは金型成型用に新たに分割し直してやらないといけないわけです)、さらに、パーツ同士のフィッティング(合い)の精度を高めたり、この作業がじつは非常に重要、かつ難しいのです。
何せ中国工場の工員による“手作業”に基づくわけですから、たとえばレザーソーでパーツを切断したら、そのレザーソーの刃の厚み分だけボリュームが減ったレジンパーツにポリエステルパテ等を盛って元の原型の形状に近付けないといけない。そうした作業を何カ所も積み重ねていくといつのまにか元の原型とは形状が微妙に異なっていってしまい、極論すると「元の原型とは別モノと化してしまう」ことすらあるのです(プロ原型師の中にはこの問題で泣かされている人がじつは相当数いる旨をぜひとも覚えておいてください)。

それゆえに、当ブログの「……そ、それはハードルが高すぎる〜!」の回で書いたように海洋堂は金型製作用レジン原型の製作を辞退し、「餅は餅屋」たるグッスマさんにお任せすることになったのですが、「餅は餅屋」でもやはり、完璧な金型製作用レジン原型を作成するのは相当な困難を要します

とくに海洋堂とグッスマさんの初のコラボレーションとなったFILE:01 国道12号Ver.のときには「どうしてこんな事態が生じてしまうの!?」的なトラブルが連発し、両社のあいだでちょっとした大騒ぎになったこともありました。

▲FILE:01 国道12号Ver.の際には、原型製作を担当した榎木ともひで氏(eyewater)自らが金型製作用レジン原型の監修を担当。さすがに自分が手がけた原型だけあって、金型製作用レジン原型に置換されたパーツの(第三者ではなかなか気付けないようなレベルでの)微妙な形状変化に伴う指摘が続々と入りました。ちなみにこの画像内で“組見本”と書かれているのは榎木氏が自らレジンパーツを組み立てた「この形状どおりに組み上がっているのが正解」という指針用の組み立て見本のこと。そして“分割レジン”と書かれているのが金型製作用レジン原型のことです

▲榎木氏による手厳しい監修作業は何度にもわたり繰り広げられました。このような微々たる指摘の連続に最後まで根気強く付き合ってくださったグッスマさんには大感謝です

さて、そこで今回のFILE:03 賀茂川Ver.での金型製作用レジン原型がどうなったかと言うと……。
やはり、少なからず石長櫻子さん(植物少女園)の手による組み立て見本とは異なる箇所が存在しました

ただし、そこはさすがに海洋堂×グッスマさんのコレボレーションも今回で3回目。初回のときのような「どうしてこんな事態が生じてしまうの!?」的なことにはならず(当然そこにはお互いが蓄積したノウハウが存在するがゆえの結果なのですが、そこは「企業秘密」とまでは言わないものの、一応シークレットにさせてください)、何度かの微調整を繰り返すことで比較的簡単に解決を見ることになります

▲向かって左側が金型製作用レジン原型、向かって右側が石長さんの手による組み立て見本。微妙な差違ではありますが、よ〜く観察していくといろいろと異なる箇所が存在することに気付きます

▲先の指摘から12日後、グッスマさんから修正版の金型製作用レジン原型が到着。先に指摘した修正必要と思われた箇所がことごとく正されていることがわかるはずです

こうして無事に金型製作用レジン原型は完成。こののち、このレジン原型を使って金型製作作業に突入していきます。

ちなみにこの画像のみで見ていると「なんだよ、そんなに大変な作業ではないじゃない、金型製作用レジン原型の作成って」と思われるかもしれませんが、実際には(向かって左側の金型製作用レジン原型は)この状態ですでに対金型製作用として各所が何カ所も工員の手作業にて分割され、それを組み上げたものとなっています(とくにヘアバンドより後方の後ろ髪は相当にバラバラに分割されています。分割した具体的な箇所は「……そ、それはハードルが高すぎる〜!」の回を参照してください)。

つまり「そんなに大変な作業ではない」なんていうことはまったくなく、「こんなに大変な作業をこの精度で難なくこなしてしまうなんて……グッスマさん、恐ろしい子!」というのが海洋堂サイドとしての偽らざる感想なのでした。