「和•棉•更紗 〜 中野史朗 × 白井仁 二人展 〜」へ ( 〜9月22日まで)

古更紗などでみられる、絣織と更紗を併用した染織。しかも素材は和棉。

 

江戸時代以降、最も馴染みが深い繊維となっている<木綿>ですが、今私たちの周りにある綿といわれる素材はほとんどが米綿といわれる長毛の繊維です。産業革命以降、量産化と効率化が求められ機械紡績が主流となったゆえに、それまで日本で栽培されていた短毛繊維である和棉(アジア棉)はつくられなくなってしまいました。

 

アジアでつくられる和棉は中に空洞があって空気を含むことから保温性があり、吸湿性と速乾性に優れた繊維。まさに高温多湿の日本の風土に適している素材。

 

しかし和棉は機械紡績がしにくいため、手で紡いで糸にするという工程が必要となります。ちなみに今、試験的に極わずかですが和棉の機械紡績糸もつくられています。

 

白井仁さんは、自分で和棉を育て糸を紡ぎ染め織りまでされている染織作家。そして機械紡績の和棉糸に撚りをかけて布にするという試みもされています。

 

和棉は素材としての絶滅危惧種ですが、更紗という技法もまさに絶滅危惧種。図案に対して何枚もの型紙を彫り色を重ねていきます。型紙に紗張りをしないので、さらに文様が抜けてしまわないようにつなげるところと消すところもあり、多色ではなくても十数枚の型紙をつかうことになります。

 

左が和棉染織家の白井仁さん、右が和更紗染めの中野史朗さん

白井仁さんとは「ぬぬぬパナパナのぬぬ」で知り合い、中野史朗さんとは中野さんが東麻布に工房を構えられたときにお伺いしました。

 

こちらは、装丁家の熊谷博人さんのコレクションの古渡りのシャム更紗裂地を復刻したもの。シャム更紗には、絣に更紗という技がつかわれていますが、二人の出会いによって、この復元が可能になりました。

元となった古渡り更紗は、インド綿でつくられていますが、これをみたその時代の日本人が復元したらどうなるかということも考えて、白井さんが自分で育てた和棉(在来大島種)を手紡ぎしインド茜で絣糸を染め織った生地に中野さんが11枚に彫り分けた型紙と5色の弁柄顔料をつかって染めたもの。

白井さんは元となった古渡り更紗の糸のヨミ数まで数えて精密に復刻。微妙な間違い!? までもそのままに復元したのだそう。いつもながら…「誰もわからないよ!」とツッコミをいれたくなる拘りなのですが、私はそういった拘りがあるつくり手が大好きです。

 

装丁家の熊谷博人さんとカメラ

古渡り更紗のコレクターでもいらっしゃいます。後ろの雨龍(角のない龍)文様の更紗地の裃もコレクションのひとつ。それを元に中野さんが伊勢型紙師の内田勲さんに型紙製作を依頼し染めて男性用の胴裏と八掛を染められました。中の文様がでるように3枚の型紙を彫り分けた地白だしです。

 

「クマさんに聞く和更紗」第4回

そもそも更紗の定義は曖昧であるというお話から、現代の和更紗について。

中野さんが新しい更紗をつくりたいと悩んでいたときに熊谷さんの本と出会い、そのコレクションにあった古渡り更紗を復元したいと思い、伊勢型紙師の内田勲さんに型紙を依頼して復刻したのだそう。

その詳細が載ったHPを熊谷さんが目にし、熊谷さんとしては「復刻するならいってくれよ〜」と思った(そしたら現物と同じこともできたのに写真からだと同じ柄でも大きさが変わってしまうから)とのことで、連絡をとったのだそうです。型紙を数十枚も彫って染めて…、こんなメンドクサイものを復元する人がいるとは思わなかったとのことで、そこからお二人の交流がはじまったとのこと。

「貴重な和更紗のコレクションをみると、どう彫られているのか、染められているのか、つい技術的なことをみてしまう」という、中野さんのお話も印象的でした。

弁柄顔料をつかって鹿の毛の丸刷毛で染められています。弁柄顔料からこんなに美しい色がでるのか〜と驚きました(ノ゚ο゚)ノ

 

眼がハートドキドキだったのが、こちらの帯

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白井仁さんの経糸和棉×緯糸大麻の白生地に、和棉の意匠の更紗染の帯。和棉の図案は後藤衣里さん、染めは中野史朗さん。
葛布に葛の花とか、しな布にシナノキとか、自然布の素材そのものを描いた帯が欲しいと前々から思っていたので、(芙蓉布に芙蓉の花は依頼中)、これはドストライクです(〃∇〃)
糸目摺りがある更紗というのも魅力。
 
会場は横浜山手にあるレストランナイフとフォーク
元町から港の見える丘公園をさらに住宅街へはいったところにひっそりとあります。
1日1組だけの完全予約制の贅沢な隠れ家です。
 
展示会ハシゴだったので素通りしてしまいましたが、途中は情緒ある異人館や横浜港がみえるスポットもあります。坂道はキビシイですが、横浜山手散策も楽しそうです♪

 

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