「霙姉さん、珍しい曲聞いてますね」
「そんなに意外か?」
「だって、いつも聞いてるのって『これ、どこで売ってるんだ』っていうようなのか、クラシックか、そんなのですよね?」
オーディオから聞こえてくるのは、おおよそ彼女に似つかわしくない明るくポップな曲。
「いつも私が民族音楽ばかり聞くとでも思っていたのか?」
「いや・・・さ、霙姉さんの部屋の前を通ったら奇怪な声だとか怪しげな呪文だとか叫び声が聞こえる、って・・・真璃や観月やさくらが言ってたもんだからさ・・・」
怖いのを必死に表に出さないようにしている真璃、 面妖なまじないが、と訴える観月、今にも泣き出しそうだったさくら。姉の部屋はそうそう覗くこともできないので、恐怖半分好奇心半分、といったところか。
「それは通った時間が悪かったんだな。
ああ、でも・・・今聞いているのも『世界の終わり』だぞ?」
「その割には随分ふわふわしているというか・・・のんきに聞こえますね」
「いや、しかし世界の終わりなんて案外そんなものかもしれんぞ?」
「え?」
「必ずしも前兆があるとは限らない、ということだ。
表面上何も変化が無いように見えても、滅びの時は静かに近づいていて・・・ある日突然、平穏が崩れる。
そういう可能性が無い訳ではあるまい」
「そうですね・・・」
「だから私はいつも全力なのだ。いつ滅びの時を迎えてもいいように」
「全力でだらけてますよね」
「言葉に随分と棘があるな」
「事実を述べたまでです」
「この曲を聞きながらまどろむと心地がいいのだよ」
「また寝るんですか!?」
「せっかくの休日だ、有意義に使わねばなるまい?」
「ふーん、有意義に、か。
それじゃあ、ぜひともこの結果を挽回してもらうくらい有意義に過ごしてもらわなくっちゃ、ねえ・・・?」
まるで、終焉を告げるラッパのように。
「あ、待て、待ってくれ海晴姉!
たまには一緒に休まないか、なあ! なんなら秘蔵のお茶請けをひっぱり出してきても構わない!」
「言い訳はゆーっくり部屋で聞こうかしら?
それとも、離れでもいいわよ?」
「アッーー!!」
あっという間に消えていく2人。
霙姉さんがもの凄く恨めしそうな目で僕を見ていた気がするが、自業自得というものだ。関わるまい。
「ああ、こりゃあ長い夜になりそうだ・・・」
眠り姫の安息の刻は、いつになるのやら。
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どうもうぃぶれです。
みぞ姉を書いているとどうしてもみは姉を出したくなる病。そしておしおきオチ。はるひめさんのせいです
それはともかく、某バンドが嫌いな訳でも別になんでもありません。
てっきりバンド名だけでデスメタルバンドかスクリーモかだとばかり・・・! イメージがPay money To my PainのGreedだったんですが、ラジオで曲を聞いたら「あれ?」という感じだったもので。
べびプリ久々で短いんですが、まあぼちぼち何か書いていけたらな、と。