NPOと協働で生ごみ堆肥化事業 ─ 茨城県取手市
取手市の生ごみ堆肥化事業は、モデル地区の約1000世帯で実施されている。事業を受託したNPOは、シルバー人材センターや福祉作業所とも連携して回収作業やEMボカシの製造を行い、誰もが参加できる資源循環型社会を念頭に、最終的には市内全世帯の生ごみリサイクルをめざしている。こうした活動が評価されたNPOは、平成15年度地域づくり総務大臣賞を受賞した。
●草の根活動からスタート
首都圏のベッドタウンとして発展する取手市の人口は、約11万2000人(43,000世帯)。
生ごみの堆肥化事業に取り組むNPO法人「NPO緑の会」(恒川敏江理事長)は、平成6年に誕生した主婦たちの生ごみリサイクルグループ「EM緑の会」が前身。
理事長の恒川敏江さんは造園業を営むご主人芳克さんの協力を得て、自家処理できない家庭の生ごみをボランティアで回収した。
同会は、平成12年4月に法人格を取得。この時点で240世帯が回収に参加していた。
●協働で経済の分配
平成13年度、NPO緑の会は市から堆肥化モデル事業を委託された。期間は5年間で、自治会長の同意を得た4地区でスタート。事業費は年間1360万円で、モニター家庭へは生ごみ処理容器1個と生分解性プラスチック袋1枚/週、EMボカシ1kg入り個/月が無償配布された。回収と堆肥化作業をシルバー人材センターに委託し、EMボカシは市立知的障害者デイサービスセンター「つつじ園」で製造してもらっている。EMボカシづくりは、つつじ園の作業収入のトップを占め、利用者や利用者の親たちからも喜ばれている。
●モデル事業から堆肥化事業へ
平成17年度でモデル事業は終了し、18年度からは市は、同NPOに継続事業として委託した。
NPOでは、市内全域4万世帯へ拡大した場合を考えた新たな試みとして、EMボカシを使わないで生ごみがストックできる台所抗酸化容器(EM技術を活用した容器、11リットル、コック付き)を採用した。EMボカシとコスト高の生分解性プラスチック袋が不要になることで、経費削減を見込んでいる。つつじ園のEMボカシは戻し堆肥に活用されるので、これまで通り製造される。
事業内容は、生ごみの回収から堆肥化までで、
モニター家庭へ無償配布:生ごみ処理容器1個
生ごみは週1回、決められた日に集積所の指定容器(角型プラスチックペール・65リットル)に入れる
4モデル地区を2回に分け(水曜、土曜)、1tトラック2台にシルバー人材2人ずつ乗り込み、前日午後配置したペールごと回収
堆肥場に搬入し粉砕
水分調整用戻し堆肥と混合して撹拌後、メッシュパレットに詰めて1か月静置
3か月後、堆肥が完成。協力家庭への無料配布や試験農場で使用
パレット(1×0.8×0.7m)は、ワイヤーをメッシュ状に編み込んだもの。空気に触れる部分が多いことから水分調整が順調で、1か月後の水分は約35%になっている。
水分過多による腐敗やニオイはなくなり、これを再び水分調整剤として混入(重量比で生ごみ1:戻し堆肥1)、3回繰り返し3か月で良質の堆肥が完成する。
また、ハエとニオイ対策で天井部分にEM活性液の自動噴霧装置を設置している。
恒川さんは、「生ごみ堆肥化は、資源循環型社会の仕組みづくりの入り口。有機農業推進法が成立、施行され、農業生産者と消費生活者を結ぶ循環づくりに大きな後押しになります」と抱負を語る。