忙しさにかまけて、ASBJとか金融庁のページをチェックしていなかったら、いつの間にか「内部統制報告制度に関するQ&A」が追加されていたそうな。(4月2日に追加)

http://www.fsa.go.jp/common/law/kaiji/13a.pdf


さすがこの時期にリリースするだけあって、今回の追加では、最終的な意見形成に関することなどが中心。

しかし、今回追加されたものを読むと、前回のQ&Aのときも感じたが、結局はソフトランディングさせたいという金融庁の意思がとって見れる。


例えば、下記である。(本文から抜粋)

(問68)【重要な欠陥の判断(財務諸表監査による指摘)】
期末日後の財務諸表監査の過程において、財務諸表に記載する予定の数値等に誤りが発見された場合には、決算・財務報告プロセスに係る内部統制に重要な欠陥があると判断されることになるのか。
(答)
1.「重要な欠陥」とは、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性の高い内部統制の不備をいうこととされている。したがって、財務諸表監査によって財務諸表に記載する予定の数値等の誤りを指摘されたことが直ちに重要な欠陥に該当するものではなく、誤り(虚偽記載)を生じさせた内部統制上の不備の金額的・質的重要性を勘案して重要な欠陥に該当するかどうかを判断することとなる。
2.なお、その際には、監査人から指摘された誤りが会社の内部統制によって防止・発見できなかったのかどうかという観点から検討する必要があるものと考えられる。

(問69)【重要な欠陥の判断(財務諸表等のドラフト)】
有価証券報告書に含まれる財務諸表等のドラフトを監査人に提出したところ、監査人から個々にはそれほど重要ではないが、多数の誤り(虚偽記載)等の指摘を受け、指摘された数が多いことなどから重要な欠陥に該当するのではないかと言われた。会社としては、できるだけ早く決算書や財務諸表のドラフトを監査人に提出してチェックを受けようと考えているのに、ドラフト段階での誤りをもって財務報告に係る内部統制に重要な欠陥があると指摘されると、会社は、監査人への決算書や財務諸表のドラフトの提出を遅らせ、ひいては決算発表も遅れるということになりかねない。財務諸表等のドラフトをどう考えたらよいのか。
(答)
1.財務諸表等のドラフトに限らず、指摘された誤りが多いことをもって重要な欠陥に該当するものではなく、誤り(虚偽記載)を生じさせた内部統制上の不備の金額的・質的重要性を勘案して重要な欠陥に該当するかどうかを判断することとなる(問68参照)。
2.したがって、財務諸表等のドラフトについても、監査人から指摘された誤り等が、会社の内部統制によって防止・発見できなかったのかどうかという観点から検討する必要があるものと考えられる。
3.なお、財務諸表等のドラフトについては、会社がどのような位置づけで監査人に提出したかによっても重要な欠陥の判断は異なるものと考えられる。すなわち、監査を受ける前提としてのドラフトなのか、監査人との協議を目的とするドラフトなのかによって異なることが考えられる。開示において高度な専門的判断を伴う場合に、後者のような協議を行うことは、従来の財務諸表監査の過程でも行われている実務であると考えられ、この場合、協議の過程で、重要な虚偽記載が発見されることがあっても、内部統制の重要な欠陥と判断する必要はないものと考えられる。


なんか、内部統制導入決定当初は、「監査人からの財務諸表における記載誤りの指摘」=「内部統制上の欠陥」となってしまい、あたふたする会社が散見された。我々もそうなるスタンスなんだろうなと思っていた。(そんな人が多いと思う)


それが今回のQ&Aをみると、結局決算・財務報告プロセスにおいても内部統制上の不備の金額的・質的重要性を勘案するということとなり、内部統制上の欠陥が存在してもその金額的重要性等を考慮しろっていうスタンスに変化している。しかしながら、内部統制上の不備に関して、その不備の金額を具体的にどう算定すればいいのだろうか。そもそも不備を金額としてあらわすのは、性質上かなり難しいと思うが、記載誤り金額をもって金額的影響とするのか。


またその不備とするべき金額的重要性はどう決定するのだろう。これは監査上の重要性の金額と同じということになるのだろう。(そうでないと、金額上の重要性が乱立し、ジャッジメントできなくなる)


まあl、ここらへんに関しては、企業側の負担を軽くすることが第一義的な目的として作成された感が否めない。最終的には監査人が企業の状況等を踏まえた上で、ジャッジメントして決定しろっていうことなのだろうが、何を重要とするかというところから始まるだけに、なかなか厳しいものである。


また同問の2番に、監査人から指摘された誤りが会社の内部統制によって防止・発見できなかったのかどうかという観点から検討する必要があるという一文があるが、これは俺の読み方・理解が足りないのかわからないが、俺は会社の内部統制で防止・発見できていないから監査人が指摘するのに至っているんじゃないの?って思ってしまう。その前段階で防止・発見されるようなものなら、そもそも監査人が指摘してないでしょと。

もし俺の読み方が謝っているならば、教えてほしい。


さらに69問はすごい。

監査を受ける前提としてのドラフトなのか、監査人との協議を目的とするドラフトなのかによって異なることが考えられる

結局、財務諸表に誤りがいっぱいあろうが、会社がいうところの財務諸表のドラフトの位置づけ次第でなんとでもなるってことか??


「うちは、いつでも監査人の指導のもと、すべてに関して修正を行いますから、この財務諸表は協議を目的とするドラフトです。」といい続ける企業が出てきてもおかしくない。そうなったら、いくら提出された財務諸表に記載誤りがぼんぼん出てこようが、協議前提の叩き台なので、結果そこでの記載誤りは、誤りではないということになる。



まぁ、こんな尻すぼみで、ぐだぐだ感も否めなくなったJ-SOXだが、個人的にはこのQ&Aが指し示す方向でまったく問題ないとは思っている。


当初のイメージのような、「財務諸表の記載誤り」=「即、内部統制上の不備」となるようなスタンスであったとしたら、相当な企業数が内部統制上、重要な不備ありになってしまったであろう。でも、今回のQ&Aに基づくにおいては、相当何もやってませんって企業以外は内部統制監査上、問題とされないであろう。いろいろな逃げ道?(ジャッジメントの方法とかでね。)の結果、そうなることは容易に予想される。


しかし、結果としてはそうなったとしてもまったくJ-SOXが意味のないものであったかというと、そんなことはない。


今までは上場企業だとしても一部の部門を除いては、内部統制って言葉さえ知らず、全社的な意識など持てていなかった企業においても、相当数な人たちに「内部統制」っていう意識を芽生えさせたきっかけにはなったからだ。このことだけでも、今回のJ-SOXの導入にはとっても意味があったことといえる。


しかし、金融庁の「会計士とかが勝手に厳しくする方向にもっていったんですけど、それは間違いですよ」的なQ&Aのリリースコメントとかは、正直いかがなものかと思う。


いろいろな方面を煽るだけ煽っておいて、いざ直前にやりすぎでしょって他を落として自分を上げる的な態度はないと思う。もちろん、企業サイドからの苦情等もあいまっての結果であることはわかるが、自分らの舵取り間違いの責任を押し付けるのはいかがなものか。いったい誰が主導してこの制度導入したのか。



微妙にニュアンスは異なるかもしれないが、マッチポンプ的な金融庁の態度である。